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サーモンピンク  
ア*カ*ル*イ  
オレンジ・マザーズデイ  
ぬくもり  
  
寝言  
ヴァージンピンク  
わたしのこころはサーモンピンク  
まだ幾許かの熱はあるのに  































サーモンピンク

yoyo
 

歯に詰まった小骨をとろうと指入れる
全くもって取れないで
爪楊枝
歯の隙間増えたなんて思うけど
赤ん坊
吸わない乳首の色合いは
まだまだ女と言わせるようで
しらばっくれて抜け出す路傍の片隅に
幸せ色の花が咲く


まだまだやれると言い聞かせ
夕刻の空から
ずうっとずうっと先にあるゲートの上まで
走って歩いて
転んだ先は自然と人との境目で
言わなくてもわかるでしょって
日本人は言ってたね
そんな色ならいらないと
航空券を握りしめ
世界の果てと初対面


生きるも死ぬも生かされるのも
責任は自分にあるから
迷うので
腹を切って内臓を切り売りしたら
予約自体は完売で
欲望は性欲と食欲だけの動物に
サーモンピンクの傍らので
メスを入れた



















ア*カ*ル*イ

http://home.h03.itscom.net/gure/eme/
九鬼ゑ女
 

あのぉ
そのぉ
あたいのア*ソ*コにぃ
あいつがねぇ 
一滴、サーモンピンクを垂らしてくれたのよぉ

そしたらぁ
思わずぅ
喘ぎが漏れてぇ
それからぁ
丁度ぉ
トツキトウカ目のことぉ

コ*ノ*コが 産声をあげてた…ってわけ!



















オレンジ・マザーズデイ

http://cpm.egoism.jp/
柚木はみか
 

ある日君が買ってきた
初心者向け苗木セット
早速君は放置して
汗だくの躰洗いに行く

仕方がないから腰を上げ
小さなつぼみをベランダへ
土が入ったポットから
大地の香りが部屋中に

 私の声はいつからか
 君の耳には届かない
 私の思いはいつからか
 君と反対の方向へ

面倒くさがりの私
熱しやすく冷めやすい君
このつぼみは何色で
どんな形の花が咲く?

毎日欠かさず水をやる
枯らしたら君が怒るだろう
そんな恐怖だけで育て
果たしてつぼみは開くのか

 初めて出会ったあの頃に
 もはや戻る術はない
 ただ側にいるだけの
 家族でも恋人でもなんでもない

君が先に目覚めた朝
君のはしゃぎ声で目が覚める
ベランダに灯っていた色
サーモンピンクに驚喜する

その時の君の笑顔は
一生忘れることはない
手を繋いではしゃいだ
子供がいない私たちの

初めての子供


名前も知らずに育てていた
「オレンジ・マザーズデイ」
正にこの花が咲いた今日
私はあなたのマザーになった

そして君に誓うの
二人目の子供
次は 血の繋がった
その時はきっと見せてくれる

あの時の笑顔を



















ぬくもり

http://www.enpitu.ne.jp/usr10/106608/diary.html
ナツノ
 

刺繍糸 
たぐる人の指は
細くてキレイだったと思う

幻灯機のスイッチは
いつでも見つからない
色あせたビロードの
アルバムの中で動かない
幼い日々

雨の日のおるすばん
軒のしずくがぽつぽつと
ヤツデのはっぱを
叩く音
畳のへりに おはじきを
ならべて過ごす

ゆるいパーマをかけた人の
口紅の色は
サーモンピンク
ひと色だけのキオク あざやかに

針を持つ手を 覗き込む
優しい声に
胸ときめかせて寄り添うと
お白粉が
ふんふんとにおって
なんだか
とっても眠たくなったのを
覚えています





















鈴川夕伽莉
 

切り開くのではありません
筋に沿ってゆっくり裂いてください
無理に力を入れると破れます

そんな風にして
もぎとられ る答えは
あまい あまい あまい あまい あまい

最後に月を見上げたのはいつですか

真っ逆様に落ちていく詩人を
昇天する魂に変えたのはムハですが
彼自身が、とうの昔に死んでしまいました
従って、あなたが生命を与えるのでなければ
そんなものは紙切れなんですよ

あしたはこわい こわい ものですから
あえて越えたくはないのね?

でも事実は 裂いた のではなく 破いた ということ

オロナインを刷り込むための傷じゃない
たとえ一瞬であっても、曝すという選択ができれば





※ムハ:アルフォンス・マリア・ミュシャ



















寝言

栗田小雪
 

ふたりの指先にカメラをつけて触ればよかった
目にもカメラを埋めればよかった
わたしの唇にカメラをつけていればよかった。
そしたら何回も何回も何回もリピートして見て
あなたのすべてを思い出せたのに。

もう霧がかってぼんやりして見えない。

あの夜の私は
とり憑かれたように
やさしく優しくあなたの体どこかしこへもキスをした。
もうこれで最後だと思ったから
できることはすべてした
だから、





夢のような夜の散歩も一度きり
夢のような夜のギターもこれでおしまい




あの花のにおいを思い出した?



















ヴァージンピンク

宮前のん
 

高校生の頃
欲しくてたまらなかった
「ヴァージンピンク」という名のクリーム
色素沈着の激しい所に塗ると
たちどころに処女のようなピンク色に
というキャッチフレーズで
結構なお値段がついていた
その頃はまだ未経験
でもなぜか、黒っぽいベージュ
付き合ってるボーイフレンドが
処女ってピンクなんだよねえと
雑誌の受け売り文句を言うたびに
(キスすらした事無いのに)
どんなに言い訳しても
信じてもらえないような気がして
着たままじゃダメなのかとか
真っ暗じゃダメなのかとか
イメージトレーニングだけで疲れ果て
だから! ヴァージンピンクだ
そうだ! ヴァージンピンクと
毎日、頭の中はそればかり
追いつめられた死刑囚のように
こっそり風呂場の鏡に向かって
ため息を吐いた


 



















わたしのこころはサーモンピンク

佐々宝砂
 

「わたしのこころはサーモンピンク」

そのフレーズを見出したのは
確か「りぼん」誌上であった
もしかしたら「なかよし」だったかもしれないが
「少女コミック」や「プリンセス」や
「花とゆめ」ましてや「Lala」ではなかった

薔薇の花束を抱いた少女がいう
「わたしのこころはサーモンピンク」
「濁ったピンク」
「だけどピンクなの」

薔薇の花束なら深紅がすきだった
白い薔薇はすぐに傷む
黄色い薔薇は持ちがよいけど品がない
薔薇の花束なら深紅がすきだった
だけどわたしに深紅は似合わないのだった


それから年月経って
わたしもいっちょまえに恋に落ちたが
相手のバカ野郎は
深紅の旗を掲げているようなやつで
おまえの思想は濁っている
と批判しやがるので

わたしはかるくあかるく
心のなかでうそぶくのが常だった
そう
「わたしのこころはサーモンピンク」


という青い(んだか赤いんだかの)時代もすぎて
わたしはひとり
窓から半月をながめる
数十年後にわたしがまだ生きているとして
窓から半月をながめるだけの余裕があるとして

そのときやっぱりわたしは
静かにうそぶいてみよう

「わたしのこころはサーモンピンク」



















まだ幾許かの熱はあるのに

http://tohsetsu-web.cocolog-nifty.com/
伊藤透雪
 

熱く、熱く、
駆け上がって
ただ今だけを──


2人だけの部屋にいて
他の何ものも関せずただ
互いの求めるものを強く
絡みあわせた

好きだ、すきだ。

切なく鳴く君とつながりあい
燃えて立ちのぼる君の
胸元から全身がくれないに染まるとき
弾けていく私のたましい

好きだ、すきだ。

確かに2人はそれを求め
喜びとしてきたはずなのに
でも何かが違うと思った瞬間から
離れて生きることを見つめた

けして嫌いになったわけじゃない
私にもわからないんだよ
今も君の声を聞くたびにホッとしているくらいだ


今も肌が染まる君の姿を瞼の底に見ている
あの時君は無心で一人高く飛んでいく
私はそれを地上から見つめている
愛おしく思いながら
君を抱きしめて離したくないと思いつめた月日

黄昏の日はふいに差し込み
いきなり呼び戻す声に怯えた
夕日を見つめながら
振り返ってしまったんだ
私は本当に愛していないのではないかと
君は今更遅いと怒るだろう
でも
好きだけでは良くないのだと
遅すぎた季節を感じてしまったんだ
体は今も君ばかり思っているのに
くれないに染まる君の反り返る姿を
思い出しているのに

まだ心に熱は残っているのに
私の中に黄昏を感じるんだよ


















2009.7.15 発行/蘭の会

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(CGI 遠野青嵐  編集 佐々宝砂)