ナイアドプレス社刊行書籍紹介
 
LESBIAN NUNS
「LESBIAN NUNS」
ROSEMARY CURB & NANCY MANAHAN 著
Niad Press
レズビアンと修道女との関わりについて、それぞれレズビアンであったために修道院に入った女性、修道女になってからレズビアンになった女性、修道院に残った女性、修道院を去った女性、そして、新しい信仰を求める女性など、それぞれのライフ・ヒストリーを集めた本。
神への愛と、聖書に禁じられた愛との相克に悩む姿。
このライフ・ヒストリーを読んで行くと、当然の事ながら、修道女としても、レズビアンとしても色々な生き方があることが分かる。修道院に入ってから同性への愛に気付いたという人もいれば、同性愛者だったが故に修道女になることを選んだのではないかと語る人もいる。
カソリシズムと同性愛という、ある種のタブーであった事柄についての調査は、困難であったに違いない。その困難さを越えて、自らの人生を明らかにした女性たちのそれぞれの文章が読んでいて心を打たれる。



BENEDICTION
「BENEDICTION」
DIANE SALVATORE 著
Niad Press
修道院付属の学校に通う少女グレイスを主人公に、少女の憧れと成長を描く物語。
グレイスは同じ学校に通うメグと恋に落ちる。それはグレイスにとって初めての恋であり、他の何ものにも代え難いものであった。だが、その恋は隠さなければならないものだった。
親友のアンとも疎遠になり、ボーイフレンドとの別れを決意しても、その理由を告げることは出来ない。
メグとの恋の行方はどうなってゆくのか? 飽くまで自分自身の感情に正直に生きようとするグレイスがつかむものとは何か?

修道女への憧れ、友情、初めての恋、家族との葛藤、裏切り。真っ直ぐに生きる少女が乗り越えようとする青春の試練に、心が揺さぶられる、素晴らしい作品。
著者は他にPaxton Cortなどの非常に感動的な小説を現しているダイアン・サルヴァトーレ。この小説では少女の感性の瑞々しさが余すことなく描かれている。



PAXTON COURT
「PAXTON COURT」
DIANE SALVATORE 著
Niad Press
同じくダイアン(ディアーヌ?)・サルヴァトーレの小説。
ニューヨークで働いていた、友人同士である四人の男女が、ある中西部の田舎町へ、家を買い、仕事を引退してやって来る。
町からは少し離れたところに二軒の家を構えた彼らは、女性男性二人づつであったために、町の人々からはそれぞれ男性と女性のカップル二人組みと思われている。
しかし、実際は彼らは、それぞれ同性愛者のカップルだったのだ。
初めはそれでも受け入れられていた四人だが、同性愛者であることが明らかになると、旧弊な田舎町の人々から背を向けられるようになっていくのである。

人は如何にして他者を受け入れることができるのか、をテーマにしたこの小説の結末は非常に重い。



CHAIN LETTER
「CHAIN LETTER」
CLAIRE McNAB 著
Naiad Press
キャロル・アシュトン警部は足元に横たわる被害者を見下ろしていた。それは友人であり同僚であった、スティーブ・ヨークであった。
前回読んだBODY GUARDが第七作、この作品はそれよりも後のシリーズ第九作である。
同僚を失った悲しみの中、キャロル達は、事件の捜査を行う。スティーブ・ヨークは死の前に、一つのチェーンレター(不幸の手紙)を受け取っていた。そして、新たな殺人事件が起き、その被害者も同じ様に不幸の手紙を受け取っていた…。

作中では、BODY GUARDの時に別れていた恋人シビルがオーストラリアに戻ってくることになり、キャロルの葛藤と捜査とが絡められながらストーリーが構成される。キャロルは未だにシビルに未練があるが、シビルは「もう終わったのよ」と言い、キャロルが関係を持っていたニュース・キャスターのマデリーン・シップリーもシビルは戻らないと言う。それでも諦めきれないキャロルはせめて友人に…と願うのである。
推理小説として見ると、犯人当てのような楽しみはないが、最後まで読ませる構成ではある。恋愛に関して言えば、やはりシリーズ物であるが故、起伏に富んだストーリーとは言いがたいのだが、キャロルとシビルの長い間続いていた関係の存在感が感じられる。
オーストラリアの雰囲気もところどころ感じられ、楽しめるシリーズの一冊である。



CURIOUS WINE
「CURIOUS WINE」
KATHERINE V. FORREST 著
Silver Moon Books
冬、山のコテージでの休暇にダイアナは出掛ける。女性ばかりで過ごすそのコテージでダイアナは弁護士で美しいブロンドの女性レーヌ・クリスティアンソンと出遭う。
コテージの屋根裏で同室となる二人はエミリー・ディキンソンの詩を愛することから打ち解け、惹かれ合うようになって行く。

1983年にナイアドプレス社で発刊された小説で、表紙には「A bestselling lesbian love story」とある。K.V.Forrestの初めての作品ということで、かなり人気がある作品のようである。(K.V.Forrestはこの本が翻訳されていました。実は。持っていました。「愛を知るとき」樋口あやこ訳 大栄出版。訳は英語で読んでいた時より幾等か砕けた感じになっている。)

確かに全般にほのぼのとした雰囲気があり、裏表紙にも書いてあるがエロティックなシーンも割とあるので肩のこらない読み物ではある。しかし、ストーリーがその分単線的なのが残念である。段階を踏んで二人が親しくなり、また離れ離れになり…という展開は最早お約束。また、あまりに二人の間に違いがあるように見えるので、これで本当に運命の出遭いと信じて良いのかという思いがついて回るのである。
また、ベッドシーンが少々長すぎるという気もしないでもない。それもまた楽しくないこともないが…。できればもう少し、二人のメンタルな面でストーリーを詰めて欲しいという気がした。
タイトルはエミリー・ディキンソンの詩の一節。小説中エミリー・ディキンソンは何度も引用されるのだが、もっとディキンソンと深く絡めたストーリーでもよかったと思う。




 
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