アラブ・マグレブ・中東付近をテーマとした小説の紹介
 
生埋め
「生埋め」
サーデグ・ヘダーヤト 著 
石井啓一郎 訳
国書刊行会
ペルシア文学短編集。副題は「ある狂人の手記より」となっている。
作品は人生への倦怠感、生きることへの疑念などをテーマとしており、発表されてから半世紀はたっているが現代日本とも変わらぬ苦悩が描かれている。特に表題作「生埋め」は死への執拗な憧れとそれに叶えられない若者の不安と狂気に満ちている。
ペルシア=イランの地域性を求めると期待外れに終わるだろうが、この無常感には共感するものも多いのではないだろうか。
この中では「捨てられた妻」のガラージュで乗合タクシーに乗り込む描写などが中近東の風景を思わせて懐かしい。乾いた道路、詰め込まれた乗客、どこかで見たような気にさせられる。



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