「アフリカの夏」
ムハンマド・ディブ 著
篠田浩一郎・中島弘二 訳
河出書房新社 |
100年以上続いたフランス植民下のアルジェリア。その閉塞した日常生活と、抵抗運動、革命前の不穏な空気が飽くまで淡々と描かれる。 ある裕福な一家とその叔父の決まったように繰り返される訪問の描写。変わらないように見える日常が少しずつ変わっていく様子。 農民であったり、また息子が抵抗運動に加わってしまった年老いた父親であったり、色々な登場人物の物語が少しづつ描かれ、それが全体としてアルジェリアの閉塞感、不穏な革命の雰囲気を伝える。 アラブ人の名前が例によって同じ様なのが多い上に、登場人物が入れ替わり立ち代りのため、読んでいるうちに多少混乱することもあるが、それにしてもこの描き方は素晴らしいと思った。印象的な作家。現在のアルジェリアの混迷し続ける状況の一端をまた思わせる。 |