アラブ・マグレブ・中東付近をテーマとした小説の紹介
 
あるフェミニストの告白
「あるフェミニストの告白」
ナワル・エル・サーダウィ 著 
鳥居千代香 訳
未来社
ナワル・エル・サーダウィは、エジプト人の女性医者であり、有名なフェミニストでもある。これは、著者の始めての文学作品である。小説というより、淡々とした日記的な文章。
この小説は、ある若い医者である女性の一人称で語られる物語であるが、1950年代当時、内容が過激であるとされて出版のためには内容を削らざるを得なかったと言う。
現在、翻訳されているのは、この削られた形のものであるが(オリジナルが紛失されてしまったため)、現代の日本人から見ると、勿論、過激なところなど何もない。
どころか、主人公の女性は倫理的ですらある。性的対象は自らで選ぶ、という考えを身につけた彼女は、誰でも恋愛対象に自分で選ぶことが出来るが(家族に強制される結婚の相手ではなく)、また、同時に、性行為しない自由/自律も持っているのである。開かれているからと言って、誰彼構わずではないと言うこと。
自分自身の肉体への嫌悪感、医学と科学への憧れ、冷たい科学文明からの逃避、結婚、離婚、そして、愛と医学の使命を求める彼女の生き方は非常に清々しい。
特に、この本では「イスラムにおけるフェミニズム」という部分は感じられず、この社会から強制された肉体への嫌悪、などという部分などは、日本人としても共感できる過程ではないだろうか。



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