「月」
アマール・アブダルハミード 著
日向 るみ子 訳
アーティストハウス |
あまりに嗅覚が敏感で、経血の匂いに特に悩まされ、またとりつかれてもいるハッサン青年、夫とはうまく行かず、友達の女性との性関係に歓びを見出すウィサームなどの姿を織り混ぜながら描いた小説。 これが、西洋や日本ならどうってことない話なのだが、シリアというまだまだイスラムの教えに従っている人々が多い国が舞台なので驚きを感じるのであろう。 1970年代のアメリカのヒッピーなどが実践したフリーセックス運動などを思わせる。性描写は多いが、特にポルノ的ではなく、どちらかというと、実験のような感じがある。 これが現実にあることかどうかはともかく、宗教に束縛されない性を求める人々を描いたことは、宗教の民主化と変革を求める一つの現れとみることができると思う。 しかし、かつてのフリーセックスも結局は、男性による女性の性を搾取するものとなった。自由は差別を温存したままの上に求めても、それだけでは真の意味の改革にはならないと思う。 |