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蘭の会 三周年記念 連載コラム

新 サルでもわかるレトリカル 会員番号000b 佐々宝砂



■ 第23回 比喩を使うな!
再録の方では「比喩を使おう」と書いてあるくせに、本編ではコレw 全く昨日と今日で言うことが違うとゆー、それでヒトサマになんか教えてるつもりになっているとゆー、どーしよーもない私がいつもの佐々宝砂でございます。はい。こんなもんにおつきあい下さりありがとうございまする。

前回(21回)では、堤喩について書きました。ちょいとおさらいします。堤喩は、表現したいものを、カテゴリーまたはカテゴリー内の個で表します。大きくわけて2種類、カテゴリーで個を表現する=類の堤喩と、個でカテゴリーを表現する=種の堤喩があります。まるで逆のことをしてるのですが、どっちも堤喩です。

堤喩は、ナニカにナニカを代表させます。一人の人間で、あるひとつの集団を代表させたりします。たとえば「小町」というと美人のことですが、それは小野小町が美人だった(ということになってる)から。小野小町は、美人という集団の代表だか学級委員だかになったわけですが、誰に選出されたわけでもありません。強いていうなら過去の日本人みんなして、本物の小野小町を知りもしないのに美人の代表として小野小町を選んだわけです。なんでって、小野小町は美人だとゆーことになってるからです。実際の小野小町はこのさいどうでもよいのです。実に不確定で曖昧な表現です。しかも、ある特定の文化圏でしか通用しません。

細かいところをざっくり切り落とす、残虐で乱暴なところが堤喩にはあります。というかあるような気がします。これはあくまでも私の意見です。今回の佐々宝砂はランボーです。ランボーなので、私の言うことをあんまり本気にとらないでください。佐々宝砂だけではなく、詩人は、また、堤喩のみならず、比喩は、すべからくランボーでなくてはなりません。あ、念のため申し上げておきますが、「すべからく」は「すべて」という意味ではありませんよ。え?と思った人は辞書を引くか、http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?stype=0&dtype=0&p=%A4%B9%A4%D9%A4%AB%A4%E9%A4%AFを参照するかして下さいね。

堤喩を含めすべての比喩はナニカをナニカに置き換えます。しかし、どだいナニカをナニカに置き換えてもの申すなんざ、ランボーに決まってるのです。きちんとナニゴトかを表現したいなら、そのものずばり書きゃあわかりよいしマトモではありませんか? なのになんで比喩を使うのでしょ。なんで昔の私は比喩を使えと言ったのでしょ。だなんてここの読者さんに訊ねてはいけません。私は自問自答すべきです。比喩を使おうとアジテーションしたのは私です。人をモノのように扱う擬物法という比喩すら推奨しています。

今回の私はいったい何を言いたいのでしょう。本人も今になってようやくわかってきましたが、つまり私は、比喩は危険なものだから安直な気分で使うな、覚悟して使え、と言いたいのです。必要ないなら使うな、とすら言いたいのです。


比喩は、明確に必要とされる場合があります。

たとえば、俳句のように、非常に短い語句で何かを表現しなくてはならない場合。俳句では一音もおざなりにできません。「桜」と言えば三拍ですが、「花」と言ってすむなら二拍。その一拍の差で何かを余計に表現できる場合があります。だからこそ、俳句の世界では堤喩を含む比喩が多用されます。

あるいは、文化や政治によりますが、危険な内容は、比喩でなきゃ表現できないときがあります。書き手だって人間ですから、あんまりやばいことを直截には書けません。しかたないから比喩で書きます。たとえば厳しいイスラム文化圏での性表現は、比喩に頼らざるを得ません。2006年現在の北朝鮮で某国家主席のことを書きたかったら、たぶん比喩に頼らないと発表できません。もしかしたら比喩に頼ってもダメかもですが。


何度も言いますが、今回、私はひじょーにランボーです。今回だけじゃないや、とにかくランボーです。こんな人間がモノ書いてていいのかしらと思うくらいランボーです。そのことは、海よりふかぁく山よりたかぁく自覚しています。自覚してりゃいいってわけじゃないのも重々承知してます。でもね、私は、今度こそ、自問自答ではなく、あなたに問いかけたいのだけれど、あなたは、ランボーじゃないんでしょうか。あなたの表現は本当に的確ですか。あなたの比喩は本当に必要なものですか。あなたの詩は、あなたに、必要なものですか?

いえ、的確でなくてもいいし、不必要な比喩を使ってもかまわない。あなたの詩が書き捨てでもかまわない。私は自分にできもしないことを人に要求しようとは思いません。比喩はひとをえぐります。それをわかってほしいだけです。比喩は、的確であればもちろん、的確な比喩でなくとも人をえぐります。

そもそも的確な比喩ってなんなんかしら。ああわからなくなった。

謎なまま次回に続く。

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会員随時募集中/著作権は作者に帰属する/最終更新日2006-09-14 (Thu)/サイトデザイン 芳賀梨花子

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