(c)蘭の会 詩集「なゆた」第二集

    

■ ゆき  ■ 空の小さな傷 ■  
URL http://www3.to/moonshine-world
























 ゆき

 

クリスマスツリーに 

ちぎったわたをのせてゆく君

肌触りよく ふんわりあったかい

あこがれの意味をつきつけられた

 

ホワイトクリスマスをねがう君は

雪が好きだとわらう

  冷たくないのに雪みたいなえがお

ちょうど コットンツリーに咲く花のような

真っ白なんだ そういうこと

溶けない雪 まっさらな

 

吹雪に立ち向かうのは

じつは勇気からじゃないんだってこと

まだ 知らないんだね

だから君が少しうらやましい

雪のない国に僕も生まれてみたかったなんて

君に出会うまでは思いもよらなかった

夢を見せることもあるんだなんて

美しい考えを

ほんとうに 全く知らなかったんだ

 

 

ぼくの根雪

溶かすんじゃなしに

真綿でくるんで締められて

いつのまにか 

春の日差しよりもおだやかに

息たえてゆけるだなんて 

ほんとうに思ってもみなかったこと

 













 



























空の小さな傷

 

暮れてゆく空に
ひこうき雲 さっとひと刷毛
彗星のようにみじかい尾を引いて
懐かしく狂おしい夕焼けの空に
小さなひっかき傷ができたみたいで
 
そうしてそれはずっとそこにあって
 
濃い闇に覆われるまで
否 
覆われたあとは見えなかっただけで
 































    雲

 

とおいような

ちかいような

風に

およいでいく




 


この両の腕

すくうこと

もしも

かなうなら

 

 

 

 

水の匂いが

したらいいのに

 

くるまれていたころの

肌ざわりの良い記憶に

もうずっと 囚われてしまいたい

 

 









著作権は作者に帰属する、無断転載禁止

使用した画像の著作権はNebularteに帰属する