(c)蘭の会 詩集「なゆた」第二集
嘉村奈緒 [MC]

窓枠の





押し黙る土くれの匂いもあった
窓枠に頭を小突く子供がいたとして
わけのわからない呪文を唱えていたら
これが窓枠のつもりでも
見ている目玉が
わたしのものでなくてもいい


それは窓枠
奥行がなく
じゃりじゃりとした砂を吐く竜巻は
ずっと隣にいたのだが
大層静かなので
子供の呪文が大きくなるだけのこと













『打ちつけられて』





  緑のべ
  胸の静かな鳥、飛んでる  嘴鳴子 (呼びやる、手がさざなみだ)
  ぜんぶがぜんぶ静止画のようにただの一片を切り取った
  狭いから 気をつける  体を食べる線に 付き合う
  (もっとも、狭いからどこに行きようもないのだけど)
  気取った白いやつらにはしっぺ するんだ

  撒き方を教えてもらった覚えがない何かの種  断面図の恥ずかしい雲
   雨が降るよう「雨が降るよう(雨が降るよう
  子供の頭はマツボックリを蹴り上げたみたいな動きをする
  だから増えていって何枚もの静止画が
  ない  泣き虫だァと林立する子供がそろう  穴が開くかもしれない 胸が 静かになるのかも
         「一片、だけの静かな(遠い音 また旋風 ・もうひとつ


  待つことにする



  雨
  (終わるまで増えつづけて、グショグショと泣き出す静止画・・)
  マツボックリと子供の違いが 茎に巻かれてただの一片を切り取ったさざなみになる
  気をつけていたのに  旋風・は、折り重なって敷き詰められる
   鳴子と空車と「鳴子と空車と(線よりも図太い地平線
  林立したかさぶた共がいなくなる  狭いところから泣き虫だァ、の、声 「さざなみ(白 またひとり








  『帆をはろう
         次の風が来たら のべの地平線まで競争もしよう
         雨がたくさん集まると嵐っていうんだ





                       地を走る それに  憧れていた












青の脱皮





あなたの言葉を聞いて
脱皮をイメージした、わたし、
柔らかい、空を孕んだの、よね
空があるからには、地があってなんて、
ないんだけど、ね、空だけで、
一組の足(跡)は、あなたとわたし
みたいで、
先が乱れているから、これは鳥だね、と屈託もなく、笑う、
あなたの、その足の先は、まるで、  のようね、と、わたし、
嗚呼、わたし、笑うの、
放出されて、なったの、
青い


「それは晴れやかな着地だったよね」

エコーに凝縮された、機嫌のマーク、今朝見忘れたの
嵐だね、と悪びれもなく、笑う、あなた
の、眼に映る空は綺麗よね、と、笑う、わたし、するの、
よね、鳥じゃないから
するのよ、
あなたは、生まれたら、きっと
笑うの、ね
「生まれる音はきっと脱皮のようだね」
嗚呼、わたし、あなたの瞳が、好きなの
ねえ、足跡が消えたの、見たわ
管が一本、宙吊りに、垂れ流れる、先がない
様は、水が足りなくて、枯れる、音を響かせてる

形が、ないから、ね
管、宙吊りながら、空が流れていく、早く、早く、
早く、って焦ったのね、ね



ねえ、空は、ないのよ、ね
あなたの眼が笑う、青が、笑う、
わたし、脱皮の音、聞きたかった





「空がなくなることなんて 無いよ」















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