info@orchidclub.net
http://www.orchidclub.net/






道化師  
run a circus  
サーカス  
夢幻サーカス  
ピエロの微笑み  



























道化師

yoyo
 

ジャンキーの放送作家と

旅路で出会う

歯がないし 体も痩せて

女買う

マルクス主義の家系には

狂う子供が多いとか



十数年後の今ならば

子供は皆

気狂いピエロとなりはてる

親になる気はなくなって

窮屈な世界の真ん中で

歯車乗って

舌だした

up ↑


















run a circus

http://home.h03.itscom.net/gure/eme/
九鬼ゑ女
 

ユレルユレルキミガユレル

時の繋ぎ目は
そう簡単には見つからないけど
キミの瞳がボクを見つめてるのが痛いから
ボクは無言で叫ぶ

イルヨイルヨボクハココダヨ

分割されたボクとキミの世界を
空っぽのブランコは往復する
地球が一回自転する間に
ボクとキミはブランコの上で
優雅なワルツを何度も繰り返す
ボクとキミの真下では

ワラウワラウピエロガワラウ

…心隠して
ひたすら観客をいざなう
笑いの壺はお手の物
彼流の哲学でほら見てごらんと
いとも簡単に虚しさをころがす


クルヨクルヨアイツモクルヨ

奴だけじゃない
ゾウもライオンも時にはクマだって
猛獣使いは彼らを自由自在に操る
長い長い鞭がヒューとなるたび
一枚ずつ孤独が剥がれ落とされる

破滅していく今日を月夜に押しやって
自虐的にこの瞬間を楽しませる
それが醍醐味ってもの…そう

ソウサソウダヨコレコソガサーカスサ

up ↑


















サーカス

みまにや
 

サーカスへ往くのよ
そう、サーカスへ



あなたとわたしでサーカスへ往くのよ



紅いテントのなか
其れは、サーカスの紅いテントのなか
あなたは、まだ白い
わたしは、まだ白い




ねえ、耳打ちしたいことがあるのよ
浮かんでは揺れては消えるをするのよ
あなたと消える
あなたと揺れる
あなたと浮かぶ




この3つばかしが至極大切みたいよ
この地球っていう惑星の上では
ねえ、あなた知っていたかしら




ピエロが笑っているわね
白塗りの笑顔は何に見える





喜びを湛えているの
悲しみを湛えているの
不思議な顔をしているの
だけれども、あなた
私にはその不思議な笑顔の意味を知る術もないのよ





ねえ、あなた至極簡単なことなのよ
ただ消えては揺れては浮かぶをするだけのことよ
地球という惑星の上では
至極大切なことみたい
わたしたち、その辺りよく分かった方がいいようなのよ
紅いテントの中で
あなたはきっと赤いのよ
わたしはきっと赤いのよ




紅いテントの中で
紅いテントの中で
あなたはずっと紅い
わたしもずっと紅い
ねえ、二人はずっと紅いのよ




あなた、知っていてほしいの
誰にも見つからないように
誰かに見つからないうちに
ねえ、あなた早く
二人きりで消えては揺れては浮かぶをするのよ

up ↑


















夢幻サーカス

宮前のん
 

今日は妻の今年3度めの誕生日だったので
前から彼女が欲しがっていた
「耳の底を暖める風変わりな音色」を探しに
僕はサーカスへと出かけていった                     

サーカス広場には色んなテントの出店があって
例えば ありふれているところでは
「雑踏の中の鼻歌屋」とか
「食えるスリッパとつながらない電話の店」とか
そして沢山の人々があふれていて
巨大なシルクハットの泣きねずみや
耳をちょん切られたウサギの娼婦
首の短いキリンの大道芸人たちが
ふあふあとシャボン玉のように行き来していた             

僕は
「かなわなかった夢 または 言いそびれた言葉屋」を
右手に見ながら
「お母様の中に散りばめられた小さな音色の店」に
入っていった                            

天井や壁から
様々な忘れられた音色たちが
まるでガラス細工の風鈴のように
シャラシャラとぶら下がっていて
そのひとつひとつに
僕はそっと吐息を吹きかけて
丁度いい音色を探していった
すると僕の左耳のうしろにあった音色が
水色の優しい小さな声で歌った


 (おなかがすいたら かえっておいで。。。)


 (うん これにしよう 気にいった)


「これ、おいくらですか」

白いワンピースの象の少女は
レジの中で面倒くさそうに

「コップ1杯の同情と1番悲しかった想い出」

と言ったので
高すぎてとても買えないと思った                       

しばらくその可愛い水色の音色を撫でていて
やがて あきらめてテントの外へ出ると
天秤棒を担いだ
あれは「時間の切り売り屋」が
夕陽に向かってラッパを高らかに鳴らしながら
過ぎ去った未来へと
駆け抜けていった



 

up ↑


















ピエロの微笑み

伊藤透雪
 

夕日が落ちて空に深い青がかかる頃
ふいに彼からメールが一通
「彼女ができた」

私は思いがけず、かすかな悲しみを覚えたけれど
すぐにメールの返信をした
「良かったね!頑張って」

何を頑張るのか送ってから苦笑いする
たぶん彼との夜を思い出したからね、
と天井を仰いで自分に言う

そして思い出すのは
あの一夜のひとつひとつ
鮮やかによみがえって見えるのは
あのとき確かに好きだったから
感情までも巻き戻って湧いてくる

急に夜呼び出されて
慌てて化粧をして(そのわりにフルメイク)
めかして行ったあの日の夜
さんざんおしゃべりをしたあと
終電はとっくに過ぎて
初めて手をつないだ
そして何もかも同時に繋がったのだから
朝まで眠れなかった
彼の寝顔を眺めながら
頬を人差し指でそっとなぞって
起こさないように軽く口づけしたことまで
なぜ私はこんなにも覚えているんだろう

あの夜
彼は一言も
好きだと言わなかった
ただ、「俺も人を好きになりたいんだよ」と
何度もつぶやくだけ
私は化粧も落とさずにいて
微笑みながら黙って
頭を胸に押しつけていた

悲しみを含んだ笑みを
あのとき覚えてしまった
明るく振る舞いながら
傷口のかさぶたを
にじにじと剥いでいる
誰も好きになれずに

日々忘れているように過ぎていたのに
今こうして全てをなぞっている
悦びと切なさと愛しさがぐるぐる回って
不安定な気分をかろうじて支えている

あの夜は何だったの、とは思わないけれど
朝、駅のホームで
振り向いてキスした
彼の気持ちは永遠にわからない
表情をつくるのがへたくそな二人が
感じたことは別な何かだったのだと
今更気づくだけ

up ↑



















2011.10.15発行
(C)蘭の会
CGI編集/遠野青嵐・佐々宝砂