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しあわせ  
くじ  
この私を籤にたずねるなど  
初詣  
実のなるほうへ  






















しあわせ

http://home.h03.itscom.net/gure/eme/
九鬼ゑ女
 

しあわせにするよ
そう言われたけど
しあわせはやってこなかったし
しあわせはどこにもみあたらなかった

おうい…

探してもみたけど
おくちの中も
おしりの穴も
見えたのはウツロばかりだった

しあわせにしてよ
そう言ったけど
しあわせはしっちらんかおだったし
しあわせはとおのいてしまったみたいだった

やっぱり…

ため息をついたけど
うら山の柿も
ため池の鴨も
ざわざわぐわぐわ騒ぐばかりだった

あるのかな
あたりはずれって… あるのかな

神社の氏子がしあわせそうに笑ってた
買ったおみくじは百円です

困っちゃうな
凶が出たらば… 困っちゃうな

ダイジョウブ
もともとが凶なのだから
これ以上の不しあわせはないよ

天の声がそう告げたので
ああ、しあわせだな
そう思い返してパンパンと
二度手をはたいて
アノヒトと二人 無事初詣

大吉というしあわせにであえました

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くじ

http://numatani-kasumi.blogspot.com/
沼谷香澄
 

「人間」を引いてしまったので
人間に生まれて
人間を生きている
しかし
話が違う
自分の引いたくじの結果に文句は言わないが
子供は関係ない
何になりたいかと尋ねると
娘は「猫」と答える
そのほうがよかった
運が強くて
見た目がよくて
みんなに可愛がられるのに
掴んだ命の種類だけは悪かった

私も
不公平だ
と思いながら毎日
エサの調合を間違えて
娘はやせ衰えて行く
私は人間の育てかたを知らない

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この私を籤にたずねるなど

ふをひなせ
 

かわいたほおは涙がしみる
ぬぐえばその手がピリピリ痛む
がさついて
ひびわれて
笑いかれがれ
血がよどんでも
夕陽はやたらにうつくしく
時はさらうようにうるおしく
この私を籤にたずねるなど
きょうもあしたも自分で決める

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初詣

宮前のん
 

ガンガンと鈴を鳴らして神起こす

手を打って願う時間の長いこと

六角の籤箱振って願う吉

末吉を神樹の枝に結びかね

初詣 神より飴の子供たち

立ち枯れの木に群れを成すスズメの子

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実のなるほうへ

赤月るい
 

たまたま
引っかかっていた
おみくじなあなたとつきあって
愛し合って
そら、みたことか

肉体を交わらせながらも
顔も見ないで
そう、ただ
びやっとくもの巣みたいに
ひろげたエネルギーで
策略の数々が
台無しに、今では
木の枝に垂れ下がり
情けなく死んだ中で
ひとつだけ
その糸が
あなたを捕らえたから

それをたぐりよせて
近寄り
私は蜘蛛の根性の悪さで
じっとおまえを見守り
引き寄せ
とらえ

ずっと
そう、お前のあの
奥の奥を触っても
ぶらさがる
やわらかい玉を
ふにゃふにゃ
まだ、つぶさずに触っても

そのむこう
そのもっと、向こうの可能性
そう
それはまた
明日を予感させるけれども

付随する名を奪っても
骨抜きに
お前の心すら奪っても
私はただ
永遠なる白く
透明な糸を見ている ずっと先の

お前を
知れば知るほど
奥を
さわればさわるほど
すべては遠くなる

突入し
のめりこむ分だけ
お前に私の身は
さわられたり抱かれたり
心は
はだけて壊されたり
するけれど
私はもっと、お前の向こうの
形ない何かと
戯れ
近づきたがってる

性交のあとの
ぼんやり
罪のないため息のような
白い空気につつまれるとき
思い出す

あるとき、
宇宙を感じていたことが
あったっけ
ありえない調和を
はみ出したって
捉えられなくなっても
浮かんでいると信じられていた
ふたりを

くじ、は続いている
日々は後ろに綾を成して
目的からは美しく外れる
過去として

今を殺しながら
伸びる線
私は
もっともっと意義深い
神の
神の芯まで行きたがってる
近頃

お前は手元で
髪を 唇を 指を
陰毛を 何度もなぶり
重ねて奪うけれど

太陽がのぼれば
また
乾いていくだけの唾液
吐息
そんなものは、
そんなものには価値がない
価値などなくて

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2010.1.15発行
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CGI編集/遠野青嵐・佐々宝砂
ページデザイン・グラフィック/佐々宝砂