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直線の道  
水無月−戯  
ふたり  
背筋  
もっとも速くあれ  
伸びる  































直線の道

yoyo
 

いくつかの分岐点はあるかもしれない

それでも、人生という道しるべに

崖や渓流があったとしても

それは迂回するしかない

私は歩きながら、余所見をしない

直線の道を歩いていく

だからこそ、人や物にぶつかり

挫折という人間の感情を経験する

それでも、直線の道を歩いていく

めでる息吹も黄昏も

過ぎてからの暗夜行路を突き進む



















水無月−戯

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九鬼ゑ女
 

たはむれに
線を引く
捩れた心を宥めすかして    /よじれた/なだめ
交じわらない、線を引く

たはむれに
髪を切る
躊躇うわたしにウインクをして /ためらう
現実の前で、髪を切る   

たはむれに
背筋を伸ばす
縮小まる今日を翻して      /ちぢこまる/ひるがえし
明日へと、背筋を伸ばす     /あした



















ふたり

ナツノ
 

タチアオイの伸びた 夏の校庭
風が サクラの緑の枝を 揺らしてる
花壇のフチに 腰かける姿が
記憶の油絵のなかで ヒトツになる

そうだね まっすぐにひいた線は
交わることは なかった

まっすぐという 言葉が好きだったわけではなく
誰のためでもなく 
まっすぐに生きるのが やっぱり
正しいことだと 思ってた

彼女はとつぜん立ち上がり
校庭に どこまでもつま先で 線を引く

目を閉じて まっすぐ歩いてみて
頭の中で まっすぐ歩いたつもりでも
こんなに道から それている

まっすぐなのは 
ヒマワリと タチアオイ 夏の草花 そして
砂ぼこりのむこうの 小花模様の服の人

本当は 言い訳しながら 歩いてきたから
ちっとも まっすぐではなくて
振り返ると
ずいぶん あちこち 折れ曲がっていて

でも
たぶんそんな ゆるい曲線の そのどこかで
出会うことができたんだ と 
言いたかったけれど やめた

風が止まると セミの声が呼んでいる
彼女のほうを 見ないように
手の中で
死んだ時間のネジを 巻きなおす
けれど
ボロボロ 指先からこぼれてゆく



















背筋

宮前のん
 

たとえば、

青空に向かって手を伸ばした子供のように
ただ一目散に走ってくる子犬の瞳のように
背中に波打つ彼女の腰までの黒髪のように
教室の後ろまで届く教師の熱い声のように

とても真っ直ぐで、
とても美しいものに触れるたび、

ちょっと曲がってしまった私の背骨は
軋んだ音を立てる


痛いよ


 



















もっとも速くあれ

佐々宝砂
 

ヴィレブロルト・スネルは己の運命も未来も悟りはしなかった。
しかし光は己の運命を知っていた。

もっとも速くあれ

それが光の命題であり運命であり
屈折しても反射しても散乱しても構わなかったが
もっとも速くなかったものは
干渉によってかき消されることになっていた。
もっとも速くないものは
もはや光ではないからである。

光は人間よりも不自由だったので
遮断物を避けることができず
吸収されたりどこかに飛ばされたり曲げられたりしたが
命題を忘れることはなかった。

いかなる場所においても
光は光である。
もっとも速く。
もっとも速いものこそが光であり
そうでないものは光でなくなるのだ。



















伸びる

http://tohsetsu-web.cocolog-nifty.com/
伊藤透雪
 

新芽が伸びる
空へ 空へ
降り注ぐ日の光へ向かい

悩む事なき若い芽の
足下まで注がれる光は今
まっすぐ届いているか

根腐れも捻れもなく
ゆるやかに爽やかに吹く
風の先に時の流れを感じ取り
慈しむ心は育っているか

逞しく立つまでの時間
絶えることなく
朝に夕に 日と月の光を
受けて若芽よ 伸びよ
竹林の風の音 清かに
耳に届くが如くに


















2009.6.15 発行/蘭の会

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(CGI 遠野青嵐  編集 佐々宝砂)