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2007年11月詩集「浮かぶ」
生中ぶらんこ  
ぬくもり  
ボーダー  
たましィ  
ブランコ  
海は凪いで  
  






























生中ぶらんこ

http://home.h03.itscom.net.gure/eme/
九鬼ゑ女
 

ゆらーりゆらゆら
ヲ夢が揺れて
おいでおいでと
あたしを手招く      /maneku

するーりすらすら
ヲ時が過ぎて
はやくはやくと
あたしを急かす

仕方がないから
「 ヰナイヰナイバア 」
あたしはいつものひとり遊び
むきになって戯れてたら
たらーりたらたら
天から声が垂れてきた

「 ヰルヨ生キテルココニヰル 」

見上げたヲ空にゃ
顎のとんがったお月さま
針のような細い眼で
まっさかさまに宙返り

宙ぶらりんのあたしの上で
くるーりくるくる
どんでん返しの繰り返し

宙ぶらりんに浮いたまま 
あたしも真似して宙返り

どてーんどたどた
どんでん返しに蹴躓く    /ketsumazuku
それでも懲りずに
七転び八起きの展開
あいたたた…の傷、傷、傷
ぺろーりぺろぺろ
ヲ唾で舐めては叫んでみる

「 ヰルヨ生キテルココニヰル 」

宙に浮かぶ現在に漂い    /ima
何百回、いえ、何万回もほざいている


















ぬくもり

http://www5.plala.or.jp/natuno/brunette/brunette_top.htm
ナツノ
 

チイサナびんにたまったのは
透明な 水

本当のコト、 聞きたい?
本当のキモチ 聞いたら怖くなる

暖かなココロ持ちなんて 自己満足だけなの
誰かの痛みなど
どうやって 代われるの?

そんなふうに ムネに刺さることば ばかりだよ

だから 話さない

ジブンの涙に ジブンを浮かべて いる
ひとりで生まれて
ひとりで死ぬんだと
それを
口にすることすら 恥ずかしい

痛い夜は どうして過ごしているの?
ひたすら 秒針の音を数えているの?

私にはなにもできない
なにができるか考える、なんてことすら ウソだから

ジブンで流す 涙の意味が わからなくてまた 泣けてくる
でも ただ
ジブンの涙に 浮かんでる

傍らに映る 黄色い月を ぼんやりとながめている
指の先も 冷たい夜
ジブンで自分を 抱きしめている


















ボーダー

http://www.cmo.jp/users/swampland/poetry/poetry.html
沼谷香澄
 

くうきを
ふくんで
    いるから
沈まない

あなたひとり
      うえにのせて
ただようこと
くつろぐこと
そんなことは
ぞうさもない
 
くうきは
すぐ上の
    せかいに
満ちてる

ほんのすこし
世界のかけら
吸い込んでは
取り込んでは
      見て回ります
世界の水の中

すこし
   わたし
      しずむ

だめ?
そう

このままが
いいんだね
わたしたち
おたがいの
     世界の辺境

あなたがいて
うえの世界の
      風をあやつり
わたしがいて
したの世界の
水を切ってく

わたしにとって
せかいのはては
揺らぐセロハン
みたいにのびて
あなたのみてる
せかいのはてと
       ちがうらしいね

      進もう
   世界は
ひろい


















たましィ

http://yaplog.jp/yukarisz/
鈴川夕伽莉
 

浮かばれないで
この世に浮かんでいる
ともだちのたましいは
時々上目づかいで
私のことを見る

上目づかい
ということは
生きている私の方が
むしろ軽いのか?
なんて悟った瞬間に
投げ飛ばされてしまう

素晴らしい勢いで
ソラまで
ともだちはまだ
私を見上げている
雲を越え
ああ
私が一足お先に
ソラになれるのか?

うぬぼれた矢先に

落ちていく
またもや
素晴らしい速度で

さかさまの私は
浮かばれないで
この世に浮かんでいる
たくさんの
たましいを見つける
ソラになれないのは
重いままだからだ

浮かぶということは
重いままだからだ


気付いた瞬間に
地面に叩きつけられたのが
私の頭だった

割れそうで割れないのが
私の頭だった

ともだちの声が
その程度の痛みじゃ死なんよ



















ブランコ

宮前のん
 



どっちが高くこぐか
競争って言って
雨上がりの
公園のブランコ
白い横板の上に
立ちんぼになって
サビ臭い鎖を
両手で握って
ゆっくりと前後に
揺さぶり
最初は15度
次第に30度
そのうち45度
思いっきりこいで
一番上から地面に向かって
滑るように落ちる
凹みに水が溜まって
青い空と雲を写して
そこを過ぎると
向かいの砂場から
あっという間に天空へ
すぐに重力に負けて
後ろに引き戻される
長男が横のブランコで笑う
次男が砂場で応援してる
ああいつまでも
空の向こう側には
行けない



 


















海は凪いで

http://lyriclilyth.at.webry.info/
佐々宝砂
 

しおからい空気が鼻腔をくすぐるので
目覚める
茶色く変色しているだろうごわごわの髪に
手をやりながら起き上がる
腰が痛い
かつての習慣を再現してもほんとに意味がないなと
ひとりごちてそれでも海水で歯を磨く
のどが渇く
まだいくらか淡水のストックがあるので
まだ生きられるらしいなとぼんやりおもう
今日も無風快晴で
航海日誌に書くべきネタはなし
というかそもそも航海日誌もなし

陸地ってなんだったろう
どんなものだったろう
どうしてここでこうしているんだろう
陸地はどこにあるんだろう

なまぐさい空気が鼻腔をくすぐるので
腹が減っていると気付く
浮かびくる
浮かびくる
昨日も今日も浮かびくる
ぶよぶよに膨らみ生っちろく変色した肉塊
切り取り火であぶり
かつての習慣を思い出しながら
両手をあわせて罪の許しを乞い
明日も彼ら死者の肉体が浮かびくることを
天なる父に祈り
今日の食事をはじめる




















赤月るい
 

空を飛んでみたいな
できるならあなたとふたりで
目的地もなく
いつまでも浮いていたいな
    
わずかにゆるされる
休日の午後みたいな
小さな空間じゃなくって
もっと
海みたいに広い心で
あなたとむきあえたら

そう、いつも願ってる

自由な風が
何も教えず去ってゆくのは
とても美しくて

あなたの胸の鼓動
手のぬくもり
痛みをつつむ
綿みたいなやさしさ

そんなすべてに
ふらふら、する 
恋をする























2007.11.15 発行/蘭の会

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(編集 遠野青嵐・佐々宝砂)
(ページデザイン/CG加工 佐々宝砂)