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2007年3月例詩集「ふくらむ」
ふくらみ  
「紙ふうせん」  
ネット乙女の恋心?  
満月  
疑心暗鬼  
春の命令  
小さな手のための14行 小品集「雨」  
輪のなか  




















ふくらみ

http://hippy2007.blog61.fc2.com/
yoyo
 

ずっと遠い昔からあたしの運命は決まっていて、

キャサリンやジュリエットと出会うことになってたんだと思うと

日本人なのになんで?て思ったりする

近い未来からの便りがあって、仕事は大変になるという暗示。

林檎を2つ食べた祖先はもしクリスチャンなら

胸ができて当然だと胸をおさえつける。

考えがふくらんできて寄り道していると

白昼夢をみたりする。

解析不能なあたしの企みをわかる人は今はいない。

キャサリンでさえも。


















「紙ふうせん」

九鬼ゑ女
 




ゆめ膨らまして 紙ふうせん

ひしゃげたえくぼが ひとつふたつ

笑って笑って くふくふ ふわり



幸すり抜けた少女の手のひら

拭っても拭いきれない今日ですが

つめを噛むのは…一休み



いまは うす紅のちよ紙に

そっとたたんで 

もいちどたたんで

フシアワセを仕舞いこむ



かしげた小首の前髪あたり

茜色の夕焼けが

ちらと春を覗かせてるから



だからもいちど

ゆめを吹き込み その手にくるみ

飛ばして飛ばして くふくふ ふわり



遊んで遊んで  くふくふ ふわり



  


















ネット乙女の恋心?

雪柳
 

貴方ともっと お話したい
貴方の冗談で 笑っていたい
貴方の囁きに 酔いしれたい
 
貴方の声を  聴いていたい
   日毎に膨らむ  想い
 
 
毎晩貴方を
   貴方の声を待つ私
 
貴方がチャットに来ない日は
膨らんだ 想いの分だけ隙間ができて
みんなとの会話も上の空
眠れなくなるほどじゃぁ 無いけどね
  
貴方が話しかけてくれるかも
淡い期待に 昼もログインする私
たまぁに二人でお話できても
ろくに言葉も出てこない
   ただ 笑っているだけの私
 
 
我ながら 今更何を  と思いつつ
乙女心だけは 日々 膨らんでいく
 


















満月

http://www.keroyon-44.fha.jp/
陶坂藍
 

きれいな月ですね

職場の親睦会の帰り道
夜空に浮かぶ丸い光を
派遣の女の子が指差し言った

私は黙って上を見上げる

あれは月じゃないよ
少なくとも私には

毎晩そっと降り立って
ひどい匂いの水が滴り
熱を持つ私の傷を
冷たい光で覚まし頬ずりしてくれたのは
確かに月だった

指先で傷にそっと触れると
僅かに膨らんできているのがわかる
たぶんここからは
こうやって癒えていくのだろう
ひとりでに

あれは月じゃない
少なくとも私には

今頃きっと私の月は
ひとりで自分を冷ましている


















疑心暗鬼

宮前のん
 



今夜は遅くなるよ
と、あなたが言ったので
頭の頂部の真ん中で
ポコッと小山が膨らみました
それからは携帯を持ち歩くので
いつでもロックがかかっているので
またちょっとだけ膨らみました
休日出勤が多くなったので
出張回数が多くなったので
今日また少しだけ膨らみました
家庭に関心がなくなったので
カードの支払いが増えたので
もっともっと膨らみました

夕べ風呂場で鏡を見たら
一本角の鬼になっていました


















春の命令

佐々宝砂
 

知らぬまに歩き始めた恋心
   おんもに出してとみいちゃんが言う



開花予想なんか気にせず咲きなさい染井吉野も河津桜も

駿府城見上げる街に銀座の柳、本家の柳も青く色づけ

おっぱいにベーキングパウダー塗ったんだでっかいだろうあんたも塗りな

お話に土星みたいな輪をかけろ青色巨星赤色巨星

もっこもこふわあふわふわぷくぷくんぽこんぽこぽこ bomb bomb da bomb!

昨日からおでこが痒いと思ったら角がいっぽん角姫とお呼び

黄金の玉子溶かして泡立てて粘るどろりよスフレに変われ

景気よくどかんと爆発ねえおじさんぽんせいべいをひとつちょうだい



   みいちゃんよ赤いジョジョ履いて出ておいで
おんもはすっかり春がにおうよ


















小さな手のための14行 小品集「雨」

http://rikako.vivian.jp/hej+truelove/
芳賀 梨花子
 

前奏曲 -Prelude-


あのこが
ぽつんと
そこにいた
たしか

午後の街が
ぽつんと
そこにあった
たしかに

曇り空の公園で
誰もいないぶらんこ
補助輪かたっぽ
知らない人は怖い人

雨が
ぽつん
何か
話しだす

ぽつぽつと朴訥に
話しだす


宮廷舞曲 -Menuett-


のはらの
れんげの
たんぽぽわたげの
ぶとうかい

てふてふまう
おいかける
てをつないで

てくてくあるく
ばけねこいない
かえりみち

ゆうぐれの
かえるの
なきごえ
あめをよぶ


練習曲 -Etude-


朝食は食べない
黙ってドアを閉める
どうせ、っていう

なんで、そんなに干渉するの
と、つぶやいた鍵盤
ミの音が出ないピアノ

みうしなった五線紙
手探りの家族みたい
調子の外れたハ長調って
なんかやるせない

オクターブいったりきたり
あまだれは弾けない
夕方には雨が降り出すから
今夜はおうちにいよう


諧謔曲 -Scherzo-


雨が降ると
19歳のわたしは
しかたなく
本を読んでいた

けれど
読んだ本には何も
書かかれていなかった
ように思う

知りたいことが
なんだったのか
忘れてしまった

思い出せないものを
身につけて
おどけていたのかも


譚詩曲 -Ballade-


大粒の雨と
一人の男が
交差点に降ってきた
唐突なんだよ

純愛
そんなのわかんないよ
だって東急本店の地下には売ってないもん

歩こう
傘の花からみあう運命みたいだね
それでもって渋谷のハチ公も運命で
スクランブル交差点は悲運の象徴

ジーザスクライスト!
ザーザーと降りだした雨を
呪ってもいいですか


夜想曲 -Nocturne-


あかりをつけずにバスタブにつかる
雨に濡れて冷え切ったからだ
一時間前の記憶があたたまっていく
さよならを言うまえのこと

バスソルトを舐めた
しょっぱくて苦いから
おいしい味を忘れられるかも

舌を引っこ抜いてやりたいと思うほど
おとこを憎んでいるはずの乳房が
膝を抱えてあたたまっていく
あったまってしまうどうしようもなく

だから髪の毛を解いて
シャンプーの泡で洗い流す
こんばんは、あしたのあたし


輪舞曲 - Rondeau-


踊る!踊ってる!
跳ねてる!跳ねてるよー!
心臓はこれです
こんなちいさいんですよ

ぐるぐるふくらんでは踊る!
蹴られたちくしょー
しあわせは蹴りつける
超音波より正確に

わたししあわせになってしまう
わらってしまうふくむらから
ふくらむふくらむしあわせが

ふくらむふくらむふくらむ
しあわせふくんだ湿気も
四月の雨も跳ねてる!


行進曲 -March-


息子さんが立ち上がる息子さんが歩く
息子さんは手をつながずに歩きだす
産毛はみっしりと夢を見る
わたしは目をふせて産毛をなぜる

息子さんの背が伸びていく
雲をつかむ勢いで伸びていく
雨が降り出すのはいつだろう

息子さんが歩いてく
黄色い傘さした後姿遠のいてく
長靴が連れてくみずたまり

とったんとったんとったんたん
ととたんととたんあめがふる
たんたんたんたんあるいてく
息子さんが歩いてく


小夜曲 -Serenade-


しとしととしとねいる
あらそわずあらがわず
そとはあめふりやまず
ふたりあめしたたれる

あめのよにうたうたう
あいのうたこぼれゆく
はしたないあまいいき
ひとすくいしずくおち

あまいあめよるのあめ
あなたなめわたしなめ
しとしととししどけなく

あめのよるあけぬよる
あまおとはなきやまず
よるはなおあまだれる


鎮魂曲 -Requiem-


安息を求めたとりさん
雨の夜、お空から落っこちる
翼、もげることもなく

安息を求めたおさかなさん
新月の晩、水面に浮かぶ
ひれ、千切れることもなく

だから神さんそのたんび
生まれかわらせてやるんだと
おさかなさんもとりさんも
知ってか知らぬか知らんぷり

知らぬ存ぜぬあたくしは
三月の大風に吹かれてさ
四月の大雨に流されてさ
遙か彼方の地獄行き


















輪のなか

赤月るい
 

レンゲ草は
桜の木になろうとして 
細い茎を憎んだ 

たんぽぽは
甘い、ツツジの蜜をほしがる

夕焼け空は
そんな
何もかもを包んで

太陽
明日を約束するわけでもなく
西の空へ

沈む
今夜は
月もつれず
に 去ってゆく

少女の
淡い期待はふくらむ

どうしようもなく
ふくらみ
ふくらんで

それでも
眠りがすべてさらって
空がぜんぶのみこんで
朝には
忘れさせてくれる

忘れたころに
きっとまた…

よわい
よわい
かなしみの、くりかえし































2007.3.15 発行/蘭の会

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(編集 遠野青嵐・佐々宝砂)
(ページデザイン/CG加工 芳賀梨花子)