0003 九鬼ゑ女
http://home.h03.itscom.net/gure/eme/虚空
秋の雨に
とうに 色を失くした 蕣花が /あさがお
寄る術もなくて
やせ細った蔓の その指で宙を指す
雨は
さらに勢いを増して
季節を地面に 叩きつけにかかる
居座る気配は
右往左往を繰り返しながら
逝きそびれたモノたちを 巻き込んで
どの子から・・などと
おかしな順番を付けはじめる
どうしたものか？
虚空を見上げて 首を傾げてはみるものの
視線が探るてっぺんには
やはり 雨しかなくて
ざーざーと その足音を忍ばせては
背負い込んだ荷物分
秋霖に 姿を変えて /しゅうりん
時を誑し込む /たらしこむ
0023 ナツノ
http://www5.plala.or.jp/natuno/brunette/brunette_top.htm秋雨
うすむらさきの花びらが
サンダルに貼りついて
かがんだ指先に ぽとり
それは秋のはじまりの雨粒か
ふいにこぼれた私のなみだ粒
木立の影から しとりと吹いた風に
背中から包み込まれ 私は夢心地
すぅと 意識をどこかへ運ばれて
しばらくは 風になされるがまま
薄い木綿を羽織ったように
こころに 秋がしのびよる
はらはら散る花びらのむこうで
誰か私を呼んでいる
向こう岸に 渡れないのを知っているのに
季節の隙間から まだこちらを覗いているのね
サンダルは 急ぎ足
もうこれ以上は想いの中へ進むまい
引き返す灰色の空 ぽとり涙雨
散らかったまま 上手く整理が出来ないから
まなざしから淡く 頼りげなく
うすむらさきの夕暮れ
000c 芳賀 梨花子
http://rikako.vivian.jp/hej+truelove/夜長
夜半、屋根を叩く雨音で目が覚める
虫の音は葉陰に
砂嵐の音は消し忘れたテレビに
隠れてしまったようだった
足元に眠っていた犬が
わたしの気配に気がついて
めんどくさそうに
もう起きるの、と尋ねるから
わたしは時計を探す
まだ、三時半だね
朝まではまだまだ時間がある
犬は、だからまだ眠るよ、と
あくび
わたしは犬を抱き寄せて
毛布を被る
部屋はじんわり蒸し暑く
すぐに犬は毛布から出て
もぞもぞと
足元で
犬は寝場所を探す
ぐるぐると円を書くように
犬は寝場所を探す
そして、しばらくすると
結局、毛布を掘って
わたしの足元に擦り寄ってくるので
まくらもとのエアコンのスイッチ
手探りで探す
そして
犬のために
スイッチを入れる
それなのに犬はベッドからとびおりて
こんどは、一番涼しい場所を探す
わたしと眠らず
犬は涼しい場所を探す
チャンネルを変える
台風情報は音もなく
はるか南の島を映し
テレビショッピングの
むなしい
セールストーク
またそれも雨音にかき消される
朝に向かって
夏の日を過去にする
朝に向かって
雨音は続く
犬は涼しい場所を探り当て
眠る
でも、そこは
いつも犬が眠る場所で
わたしは一人で毛布を被る
朝までじっと
雨音と眠る
わたしと犬と
それぞれの場所で
0115 伊藤 透雪
http://tohsetsu-web.cocolog-nifty.com/shine_and_shadow/初秋の雨
夏の名残を
洗い流す雨が
木の葉を濡らしながら
大地に沁みていく
熱を濯ぐ雨は
こころの中にも落ちてくる
夏の日の 激しい思いが
雨に濡れて
穏やかになってく
雨の日もまた
落ち着いていいものだ
そう教えてくれた人の
穏やかな笑顔を思い出すと
樹々の影が
柔らかく見えてくる
こころに降る雨は
穏やかに熱を濯ぎ
静かに思い耽ると
何かがまた一つ
結晶していく音が聞こえた
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（編集 遠野青嵐・佐々宝砂）
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