(c)蘭の会 2005.新春詩集「ともしび」













ともしび  ともしび    paperback    
消えなひモノ  あけまして  ともしび  (1960―1993)  
Beautiful dreamer.    友へ  

























0002 yoyo
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ango/6455/

ともしび
 

したたかな色合い
今宵もあなたの面影浮かんで
月夜に鏡をうつす
タバコに火をつけて
カチッ 
おぼろげに煙 目にしみた
泣けるんだ今
感情鈍磨の日々の終わり
あなたとの思い出が
うさぎが笑う
灯篭流して 平和へ祈る
そんな中にあたしは恋の成就を

したたかで嫌らしい
あたしは和風なのに
洋楽聞いて 歌を覚える
全てはあなたとのため
CRAZY
笑えるんだ今
口ずさんだ曲 心に沁みる
ともしびは今日
霞んで消えてく
あなたと歩んだ道のりが
太陽の裏側で 地団駄踏む
そんな中でも微かに生きてる

 

 





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0015 丘梨衣菜

ともしび
 

冷気はすぐにわたしたちを襲う
二人のすきまにある体温をうばって
予感に震えさせる

わずかに残された指切りほどの絆

愛しているなんて言葉を送らないでほしい
密閉されたバスの中
「携帯電話の電源をお切りください」
繰り返すアナウンス

外は土砂降り
ジメジメとした空気が頬をつたう

遠くまで連なる車のテールランプは
地底から這って出るへびのように
ずっと赤い目をしている

磨かれないまま鈍い光を放つもの

昨夜のあなたはまたボタンを掛け違え
ほころびを繕おうと
必死に何かを手さぐりしては
つまづき空回りする

まだ失いたくない
胸の奥に残る消えそうな熱

わたしに何かが出来るなら
ただ彼を赦すだけの
小さな奇跡を

温もりを取り戻そうとする
温かな腕に取り縋り
冷えた指をからませ

叫び声をあげれば?

 

 





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0059 汐見ハル
http://www3.to/moonshine-world


 

ふと降り立った駅の
そのあまりの静寂に
自分が誰だったのかも忘れて
あなたに逢いたかったことも忘れたくて

"ほんとうは愛してない訳じゃない"

濃い闇を照らすみたいに
言葉が 
現れた

 

 





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0097 陶坂藍
http://www.keoyon-44.fha.jp/

paperback
 

幸福な眠りの最中
何の前触れもなく全て
取り上げられてどしゃぶりの
雨の中目隠しされ
夜の森に放り出された時

差し伸べられるはずの手が
引き潮みたいに
一斉に引っ込められた時も

朝日が差し込む出口へと
最後の最後まで
私を照らし続けてくれたのは

あなたが書いた一冊の本でした






(この詩を宮迫千鶴氏に捧げます)

 

 





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0099 叶
http://www.geocities.jp/sirotanhouse/page049.html


 

君は灯のような人
笑顔で僕の闇を溶かして
何気なく側にいてくれる人

まっすぐな優しさが
じんわり横で暖かい
凍っていた僕の世界が
雪解けで輝いているよ

素直なままで笑えるように
君の灯火を守っていよう
優しい君の裏側で
僕も暖かく照らしていよう

 

 





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0102 motoi
http://www.eonet.ne.jp/~endlesspiece/

消えなひモノ
 

町に明かりが灯る オレンジ色

ポツポツ

町から明かりが消える 何だか 寂しい

ポツ ポツ

蛍が生命の光をはなつ 命の輝きは 儚い

ポツ ポ ツ

人込みから段々と人が消えてく マジシャンみたい

ポツ ポツ

心の叫びが体に浮かんできた たぶん消えなひ

ポツン ポツン 

 

 





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0104 はづき
http://www013.upp.so-net.ne.jp/dir_p/

あけまして
 

あけまして
おめでとう


繰り返す
2005年の謹賀新年

ポストを開けて
年賀葉書の山に会う
そして
ポストをまた閉めておく

しめまして
さようなら

個人的につまらなかった20世紀を
今更ながら叩き斬る
1999年
ノストラダムスが都合のいい嘘をついたらしいので
とりあえず地球は滅びずに済んだようなのだが
では
1999年に向けて
こっそりと遺言をしたためておいたわたしは
どうしたらいいのか
だいたい
2000年問題のときに準備した
ミネラルウォーターは
まだキャップも開けてないんですけど

あけまして
(賞味期限が切れました)
おめでとう

この町では年賀葉書が1日遅れで届く
まったくとんだ辺境ね

ポストを開けた松の内最終日
10年も行方知れずだった
クラスメイトからの便り
本当にあなたなのか
本当だとしたら奇跡

(ゲームセットまでは逆転可能)

もろもろ
悪いこともろもろ
水に流す
未開封のミネラルウォーターで
あけまして
(しめまして)
さようなら

世紀の終わりの片隅で
かがり火を焚いていた人は
そろそろ自分の役割に気付いただろうか
遠い暗闇の一点の
かすかなともしびを
2005年の今日
やっと見ることができたのだから

しめまして
さようなら
(大きな過去の、細長く延びた時間のために)
さようなら
さようなら

あけまして

 

 





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000a 宮前のん

ともしび
 

いつの頃からか忘れてしまったけれど
岬のはずれに小さな灯台が立っています

昼には太陽の光に隠されて
すっかりひとりぼっちだけれど
日が陰って暗闇の中に一人佇むと
暖かな光は遠くまで届いて
汽笛が薄くこだましています

魚の群れが上目づかいに
水面から顔をのぞかせ
彼女は首をまわしながら
それらを優しく見下ろしています

遠くから来る水夫たちは
凍える息を黒い海に噴きながら
母さんを思い出すのでしょう

汽笛が薄くこだましています


 

 

 





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000b 佐々宝砂

(1960―1993)
 

フランケンシュタインの怪物を俺は覚えている。
俺は子どもの時から頭が冴えていて、
誰よりも記憶力がよかった。
だから俺は超難関の試験をいくつもクリアし、
極秘の指令を受けて宇宙に飛び立つ人間として選ばれたのだ。
そうだ、俺は人間だ、それを忘れてはいけない。
俺は記憶力がいい。
今だっていい。
フランケンシュタインの怪物を俺は覚えている。
あの醜悪な姿。
人工的な怪物。
俺は違う。
俺は人間だ。
おれは人間だ。
おれはにんげんだ。
お・れ・は・に・ん・げ・ん・だ。

俺は忘れない。
俺は記憶力がいい。
俺は身だしなみに気を使うたちだった。
いつだって上着の衿はきちんとしておいた。
だが今や俺は鏡というものの存在を忘れたいと願う。
船内に鏡はない、鏡はない、
しかし俺の宇宙船にも窓はあり、
船内が明るい限り窓は暗く俺の姿を映し出し、

船内の灯りなど消してしまうに限る。

窓のそと幾光年の幾パーセクの闇黒に、
小さな黄色く懐かしい点が浮かぶ。
あれはなんというものだった?
暗い道、
窓からこぼれるともしび、
暖炉の火、暖かく、やさしく、
違う、あれはともしびではない、
やさしくはない、
人が造る暖かみではない、
しかしそれでも、
俺を生かすのは炎、乾燥、極端なまでの高温、俺を変えた熾烈、
俺は黄色い光の中で生きてゆけるだろう、
俺は光の中で安らぐだろう、
しかし俺がめざすのは安らぎではない。

俺の白くひび割れた背を押すのは放射能 炎 望郷 太陽風
ともしびの記憶
俺を突き動かすのは灼熱の

いや。

認めよう。
俺を突き動かすのは絶対零度の憎しみだ。
俺を置き去りにした奴ら、俺を見捨てた奴ら、
俺を苦しめるものでしかない、
しかし俺自身がそこから生まれた、
冷たい水。

俺は頭がよかった。今もいい。
俺が造ったこの宇宙船を見てくれ、見えないだろうがね。
ヒトの視覚は容易く誤魔化される、
俺の目とは違う。

俺はヒトではない、どうやら、すでに、ヒトではない。
俺の愛を受け止める者は存在しない、
俺を葬る者は存在するだろうか?

黄色い熱が強大になってゆく。
その脇に青く光るものを、
冷たく他人行儀な水の星を、
地球を、
俺は故郷と呼ぶべきだろうか?

俺は1960年に人の腹から生まれた。
俺はフランケンシュタインの怪物ではない。
俺は人の腹から生まれた。

書き留めておこう。
俺の名は、

ジャミラ。

 

 





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000c 芳賀 梨花子
http://rikako.vivian.jp/hej+truelove/

Beautiful dreamer.
 

深夜。ミュートした携帯電話のあかりが点る。新年おめでとう。ありきたりに挨拶を交わし、潜めた声でとりとめもないお話。べつに気にしてはいないけれど、クリスマスカードに返事をくれなかったことを責めてみる。それも、ひとつの礼儀として。

例えば夢を見たとしよう。私自身がベッドに横たわり夢を見ている。そして、仮に、仮にでかまわないのだが、私がもう一人いるとしよう。壁際でベッドで眠っている私を見ている私。二人の私にとって、そのベッドのある部屋は、まったく知らない部屋だ。鎌倉の家の二階にある寝室ではない。夫が隣に寝ることなどできないシングルベッドが部屋の真ん中においてある。かといって、医療器具も見当たらない。だから、病室でもないだろう。私は窓を探す。必死に探さなければいけないような気がして、窓を探す。でも、そもそも、その部屋に窓があるかどうか、ということは大きな問題なのか。ただ、ドアがあるのはわかる。なぜなら、その時、ドアが開いたから。軋む音を引きずって一人の男が部屋の中に入ってくる。男はどうやら知らない男のようだ。無精髭を生やし、暗闇でも影をしっかりと持っているような男。息を呑む、壁際の私。ベッドの私は穏やかな表情で眠り続けている。男はベッドの周りを歩き回る。当然、壁際の私の前を何回も通り過ぎるのだが、男は壁際の私に気づかない。その部屋には、男とベッドで眠る私しかいないのだ。

男は立ち止まった。そして、男は、ベッドで眠る私の上に跨った。私の顔の両脇に、決して細くはない両腕をついて、顔をまじまじと眺めている。その様をなにかの動物に喩えるべきか、壁際の私は悩んでいるが、適当な動物が思い当たらない。男は上体をおこし、そして、上着を脱いだ。

男は私の頬に触る。男は私の唇を吸う。男の髭の感触が鼻腔をくすぐる。何故。壁際の私はベッドの私を見ているだけ。男は私の首筋を舐める。壁際の私の背筋が震える。ベッドの私は乳房の丸みを取り戻す。男はそれを待っていたかのように、むしゃぶりつくのだ。身じろぎもせず、ベッドで眠る私の乳房に。壁際の私はとうとう声を上げてしまった。男の髭の感触。男の舌の温かさ。ああ、もう、だめだ。私は叫ぶ。やめて!やめてください!その瞬間、男は私を振り返り、にやりと笑う。男は確信犯だ。男は確信犯なのだ。男はベッドの私の臍の周りを丹念に舐める。壁際の私は、壁に支えられているのにかかわらず、わなわなと崩れ落ちる。その時、男が声を発した。男の声は、なんといったら言いかわからないが、とにかく怖かった。ちゃんと立っていろ!と男は怒鳴る。目を逸らそうとすると、目を逸らすな!と、さらに大きな声で怒鳴る。私は訳がわからない。ただ、ただ、恐怖におののいて、男の言うなりに。ベッドの私は相変わらず、身じろぎもしないというのに!

壁際の私が弱弱しくも立ち上がり、男を見た。男は言うなりの私に満足したのか、再びベッドの私に接吻する。接吻している二人、私は決して目を逸らさないと、その時、壁際の私に激痛が走った。男はベッドの私の舌を噛み切ったのだ。男は血だらけの口を右手でぬぐい、壁際の私を再び見る。血だらけになった男の口、髭、右手。そして、私の口から滴るものを受け止める白いシーツ。貴方は悪魔なの?と聞こうとしたが、私にはもう舌がなかった。男は私の唇をめくる。私は咄嗟に思った。男は私の表皮を剥ごうとしているのだ。男は丁寧に頬や鼻や目の周りの薄い表皮を剥がしていく。男が興奮していく。男は夢中になって私の表皮を剥がす。剥がし続ける。体中の表皮を!こんな表皮のせいで美醜なんていう愚かな価値観が存在するのだと、雄叫び、嬌声をあげる。狂喜。嘔吐。悲鳴。交差する部屋。男はすべての表皮を剥がし終えた。男は私の眼球までも抉り出し、壁際の私に投げつける。これでお前は解放される、すべての柵からと、男は救い主なのか、それとも悪魔なのか。私は舌がなくても、叫ぶ。叫び続け。男はさらに私の髪の毛に手をかけた。髪の毛は毟らないで。でも、男は髪を毟る。毟り続ける。部屋が、男が、真っ赤に燃え上がる。壁際の私は、男の命ずることさえできない。怯え、苦しみ、痛み、狂い、泣き叫び、あたりを転げまわる。やめて!やめてください!

突然、男はその恐ろしい行為をやめた。部屋は静寂を取り戻す。ベッドの私の寝息だけが部屋に響く。お前は、まだ、生きているのか。私は言いようもない絶望感に襲われた。その瞬間、私は今まで体感したことのない重力に見舞われた。落ちていく。果てしもなく深いところへ。そうだ、きっと、これは死。そう確信した瞬間、私はなにかに受け止められた。青白いジェリー。静かな、静かな、温かい、青白いジェリーに。私はしばらく浮遊した。そして、少しずつ青白いジェリーに飲み込まれていく。指先が青白いジェリーに溶け出していく。青白く温かく溶けていく。このまま私は死ぬのだ。死とはなんと温かいものなのだろう。死とはなんと静かなものなのだろう。私はこのまま青白いジェリーになる。私は元来生きたいわけではない。けれども、死にたいわけでもない。ただ、自然の摂理には逆らわない。でも、あの男が青白いジェリーを掻きわけて、私を追ってくる。私にはわかる。これは本能だ。青白いジェリーがにわかに騒がしくなる。やはり男だ。男は追ってきた。死に行こうとしている私の、すでに青白いジェリーとなった腕を掴む男。私は身をよじった。たとえ、この青白いジェリーの中で溺れてもかまわない。私は必死に男の腕を振り払おう、振り払おうとしても、男は私を放さない。男は救世主なのか。けれど男は私にとって恐怖そのものだった。死、そのものだ。私を放して、放してください。そして、私はふと思うのだ。私を死に至らしめたのは、この男がドアを開けて、見知らぬ部屋に入ってきたからだと。

次の瞬間、私はあの見知らぬ部屋に戻った。そして、私はベッドで眠っている。私は表皮を剥がされた私。私は目を覚ましたのだ。男は私に美しいだろうと尋ねる。そして、乳房の下でドクドクと不気味に動いている物体に触れさせる。これは、なに?今度は私が男に尋ねる。これが、お前の海だ。男が答える。心臓でしょ?いや、お前の海だ。お前の、深い、深いところにある海だ。違うわ、海はここよ、と私は子宮を指差す。お前は海を知らないだけさ。お前の海はそんなに穏やかじゃない。そう言って、男は容赦なく私の子宮に指を押し込んできた。快楽を与えるためではなく、子宮を取り出すために。ひどいわ、ひどいわ、私は泣いた。表皮を剥がし、眼球を抉り出し、髪を毟った上に、子宮まで奪った男が憎かった。ところが、男ははじめてやさしい目をした。だいじょうぶだよ。お前が自らの海で溺死するのを救いに来ただけだ。悪魔でも、死神でもない。そう言うと、私の口に子宮を押し込めて、そして、接吻する。表皮のない、眼球もない、子宮も、なにもない私に接吻する。果てしもなく長く深い接吻。私の海。静かな温かい青いジェリー。あれが、私の海。だが、男は否定する。あれはセントエルモスファイヤー。嵐の中に灯る光。私達は沈んだの?恐る恐る男に尋ねても、男はなにも答えてはくれない。ただ、私にわかっていることはひとつ。男はもうなにも奪わない。いや、奪うものがない。私のすべてをこの男が奪いつくしたのだから。


 

 





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0112 深畠みな [旧:なちゅ]


 

泣かないって
哀しくないわけでもなくって
ずっとは無理だから
わかっているから

 

 





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0115 伊藤 透雪
http://tohsetsu.exblog.jp/

友へ
 

なるようになるんだよ

古い友の言葉が
溶けきって消えかけた灯(ひ)に
蝋燭を足してくれた
そして
沈んだこころが少しずつ明けていく

何気ない言葉なのに
深いところまで
手をさしのべられたような心地
愛にも似たこころの喜び
倒れかけた屋台骨が
何とか持ち直してくれた

私は日頃付き合いが悪い
それ故 つき合ってくれる友の数は少ない
何ヶ月も話しをしなくても
声を掛ければ よう と答える
そんな君は私の大切な友だちだ

時々 どうしているかと思い
何でもない話しをし
お互い 頑張ろうで 締めくくる
もしかしたらうざったいのかもしれないが
嫌な顔一つしないで
それじゃ またねと別れられる
互いにつっこまれたくない部分は心得ていて
べたべたくっつくでもない関係は
一番長い交友関係

普通の友という関係はどうなのか
そんなことは知らない

ただ 心の繋がりは 互いに
灯(ひ)を絶やさないように働き
いつまでも 笑顔で
話すことが出来る
性に合っていると感じることは
安らげるということでもあり

口に出して感謝するのは何だか恥ずかしい
でも

いつも ありがとう

 

 





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2005/1/15発行

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(編集・CGI 遠野青嵐 佐々宝砂)
(ページデザイン・写真 芳賀梨花子)