蘭の会2004年12月詩集 「Friends」(c)蘭の会




フレンズ
朝を待つ星座
時の栞
何が、違うの
フレンズ
耳をすませば
セフレは募集していません。
I was TITO with the chain.
友の手
フレンズ  







0023 ナツノ
http://www5.plala.or.jp/natuno/brunette/brunette_top.htm

フレンズ
 


トイレの横の湿った鏡に微笑んだ
お下げを結びなおし
自分なりに ほんの少し前髪も直したつもり

先生 絵を見てください
自分なりに 描いてみました
先生 この木炭 運びましょうか
はい 失礼します

振り向くと
階段の隅っこに座っていたはずの影達は
きしりきしりと小さな音を立て 消えていた

いいの グリム童話を読み直すから 
格子窓の隙間から そっとのぞく
初冬の校庭

紺色のひだスカートが
くるくるひるがえる 午後4時の校庭 
光をうけた長い影達は
人形劇のように動いている

階段を風とささやきが
すり抜けてゆくけれど
宝物は ここにある 手のひらの中に
そうつぶやいて ズックを履く

私は殻をかぶった殉教者の役まわり
昇降口という高い障壁から今日も逃れる

帰ったら 甘いパンと紅茶を飲もう
ジョンとポールの歌を 聞こう

私は 誰もいない部屋で
西の窓から大声で歌う そして
私のひだスカートを 
誰より 円くまあるくひるがえす

 

 


うえへ





0043 鈴川夕伽莉
http://yaplog.jp/yukarisz

朝を待つ星座
 

バラックのような古い病棟の隙間
この潮騒はどこから聞こえるのだろうかと耳を疑った。
探しても探しても、崩れかけた白壁の向こうは
晴れた夜空だった。

正体は、一斉に回り続けるファンの音だった。
日曜日24時30分なんて中途半端な時間に
自転車置き場に向かうのは私くらいのもので
だからこそこの不思議な現象に気が付けたのだった。

職場の裏口を抜けて丸太町通りを東に15分
自宅に向かうということはそれだけ
月曜の朝に近くなるという意味なのだろうか。
地球の自転を少し追い抜けば
夜の加茂川パノラマ
右手にオリオンのベルトが輝いた。

まだ、その先に待ち受ける朝の
けだるさに惑うこともない。

ふらりと古い友達の顔が浮かんで消えるのは
どうしたことだろう。
日本の、世界のあらゆるポイントに
朝を捕まえる装置が設置されていて
その傍らに喜んで立つ人も居れば
しぶしぶ寄り添うだけ寄り添う人も居る。

何もかもから手を放したくって
ひたすらに装置から逃げたつもりでも
最終的には自分が朝を迎えたいことに気がついて
何度でも何度でも涙を流しながら
戻ってくる人も。

朝陽がのぼるとき
それは電波よりも速く
祈りよりも深い赦しを携えて
私やあなたを優しく包み込む
なんて、都合の良い話はこの世に存在しない。

だから私は、あなたを思い出す。
だからあなたは、私を思い出す。
それらは地上に浮かぶ微かな星の光。
知らない間に何度も描かれる星座が
ひとつの星も残らず、朝に向かって引き摺り連れてゆく。

 

 


うえへ





0059 汐見ハル
http://www3.to/moonshine-world

時の栞
 

栞をはさんでゆく行為そのものが
思い出というものなんだとおもっていた
あるいは、栞そのものが
思い出というものなんだと
信じることの一歩手前で
わけもなく確信だったそれは

アルバム、ひらくとそこに現前する笑顔が
すべてこちらを向いているように
思い出すための思い出
いつか読まれるための日記
みたいに
喪失の痛みを
ふだんは忘れているための命日
みたいに
いまいまを生きてゆくために

風船に託した手紙や種の
ゆくえがわからなくなっても
わたしたちはやがて忘れてしまう
それに何を託したのか
いつ忘れてしまったのかということさえ
薄らいで

なにげない
記憶ともよべないような記憶を
とどめておくことができないけど
もう君の名前を
思い出すことができないけど
最後の一ヶ月隣の席で
君は中三にしては小柄な男の子で
なんでだかはわからないけど
わたしは君をさんじゅうさんさいって呼んでいた
三十三歳の君を見分けられないとおもうし
あれからいっぺんも思い出さなかったけれど
でも楽しかったんだとおもう
楽しいということさえ
あのときはわからなかったし
わたしたちは友達というものでさえ
なかったかもしれないのだけれど
なぜいまそのことを思い出しているのか
そのことに意味さえ見つけられないのだけれど

 

 


うえへ





0071 阿岐 久

何が、違うの
 

高校時代の友達の言葉が忘れられない
「何が、違うの」
つまらなそうに 怒ったように 呆れたように
・・・分からない それらのどれかだ
とにかく 不愉快そうに
言い放った
「私は 他の人とどこか違うみたい」
という 青臭い私の告白に対し

自分で言うのは 大好きであるが
ネットで 他の人のカキコを見てしまうと
笑ってしまう
「私はちょっと変なんです」
「みんなとは違うんです」
「みんなから 外れているんです」
理解されない孤独を懸命にアピールしようとするが
本当にそうなのか?
君達に 人気の無い体育館の裏で 一人で昼飯を食べ続けた経験はある?

「私は特殊で 皆とは違うの!」
特殊という言葉は 自嘲であって どこか 自惚れも伴う

普通の人にはなりたくない
一般人という枠で くくられたくはない
ましてや 凡人だなんて!
君がバカにしてる 隣の子だって 詩なんて書いてるかもよ

果たして 私もその愚かな人間どもの一人であり
友達は 私の愚かさを見抜いていた

・・・のかもしれない
十年以上 彼女とは会っていない そして このまま
永久に 友の真意は分からない

 

  阿岐 久 さんの詩はこちらのHTML版でもお楽しみいただけます。


うえへ





0093 ふをひなせ

フレンズ
 

しゅくだい
おかあさんのおこごと
あの子のいじわる

恋の戸惑い
受験
自分の性格
就職

キャリア
結婚
子育て
介護
人生

立ち向かうものが
変わっても
瞳があうと
やっぱり

くしゃくしゃくしゃってなる
 顔の筋肉はそんなにやっこくないけれど
尻尾ぶんぶん振る
 きっと、犬だったらちぎれんばかりに

 

 


うえへ





0097 陶坂藍
http://www.keoyon-44.fha.jp/

耳をすませば
 

遠く離れ住んでも
環境が違っても
何年も会えなくても
横一列に真っ直ぐ前見て
並んで歩く二人
互いの顔があやふやにしか
思い出せなくなっていても

聞こえる

目を閉じ耳をすませば
きみの
力強い鼓動が
「まだいける」って叫ぶから私も
「あたしだって」と答えてみせる

いつか種明かしするその日まで
強がり上手な私達でいよう

 

 


うえへ





000b 佐々宝砂
http://www2u.biglobe.ne.jp/~sasah/

セフレは募集していません。
 

居酒屋で三人
呑んでいると
あんたらどういう関係なのと
どこかのおっさんが訊ねてくる
いつものことで

どういう関係なのか
説明するのが面倒くさいので
愛人関係なのよーと言っておく

あたらずといえど
たぶん遠くない
遠からずといえど
あたってもいない

日曜の夜だってのに
今から呑みに来いよーと彼女が言って
もう夜二時だよ何言ってんの電話かわってと私が言って
電話かわって
今おちんちんいじってると彼が言って
なに莫迦いってんの電話かわんなさいと私が言って
電話かわって
このひとほんとに莫迦でごめんね何言ってるのかしらねと
彼女が言って
そんなこんなで三人で酒を呑んでるのだが
酒呑んだあとやることは
決まっている

キングサイズのベッドに枕がふたつ
私のための枕はなくて
まあ枕なんて要らないけど
一応だだをこねてみせる
私はどうせ余分な闖入者よと私が言う
おめーは便利な小道具だろと彼が言う
クッションあるよと彼女が言う
会話が会話になってないなあと私が言う
ベッドとTVしかないような部屋なので
みんなベッドの上にいる

三人でキスする
ややこしい話だけれどキスする
彼女は彼に恋していない
彼は私に恋していない
私は彼にも彼女にも恋していない
でもキスする
恋はなくともやるこたぁやれる と
いやそんなに無粋な話じゃない
私は二人のことが好きさ
友だちだからね

 

 


うえへ





000c 芳賀 梨花子
http://rikako.vivian.jp/hej+truelove/

I was TITO with the chain.
 

 クリスマス・イブにひとりでバーにいる。声をかけられることもなく、ひっそりと飲むことができる夜。いつから、こういうことになったのだろう。私にとって夜はデザート、決して甘くない、むしろ過酷な。煙草はマルボロ、オイルライター、グラスにはワイルド・ターキー。友達になれなかった人の忘れ物。でも、私はバーボンをソーダで割らない。氷は時間をかけて結晶化したやつに限る。パーティーメイカーの憂鬱は地下鉄で脱ぎ捨てた。私は野に放たれたのだ。ティトーのように、すべてを学んできたわけではないが、私はデザートで生きていく。君達は流星群だ。彷徨うこともなく、幾筋もの光の束になる。君達はあの星空に住んでいる。私はデザートを、君達が見下ろす大地を彷徨う。方角を知るために君達を見上げるが、決して君達を呼ぶことはしない。かといって、他のコヨーテも探さない。私は遠吠えもしない。グレイハウンドを出し抜いて、銃砲を欺いて、子羊を狩る。コヨーテは歌う。デザートで歌い続ける。コヨーテは自分の歌う歌を。私は野に放たれたのだ。

 

 


うえへ





0115 伊藤 透雪
http://tohsetsu.exblog.jp/

友の手
 

小さな燭台に灯りを灯し
先の見えぬ暗がりを歩いていくと
小さな か細い 消え入りそうな声で
誰何する声が聞こえる

  誰か いますか?
  私は一人ですか?
  この先に何があるのですか?

足下はおぼつかないが
少しずつ声をたどって
顔を照らすと
灯火に 仄かな安堵の顔が映る

  一人だと思っていました
  いてくれて良かった
  私は一人ではないのですね

火の消えたその人の燭台に
私の火が移って
灯りは少し大きくなる

  ええ そうです
  私も同じトンネルを通っていますよ
  他にも誰かいそうな気配はしませんか?
  前方がまだ見えないなら
  仲間は多い方がいい

そうして 消えそうな誰何の声を拾っていき
少しずつトンネルの中で灯りが増えていく



私達は前方を見る
出口はまだ見えないけれど
足下くらいは 見えてきた
携える灯りと 心強さと
互いの信頼を杖に 前へと進む

手と手は長く繋がっていき
遙か後方から前の方へと
引っぱり背を押し 進んでいく

もう一人じゃないというのは
心が温かい
この手のぬくもりは 既に
道連れというより 友の心となって
互いを支え合う 仲間

 

 


うえへ





0118 紫桜

フレンズ
 


挫けそうなとき
逃げ出したいとき
思い出す言葉がある
「あなたは大丈夫」
しっかりとした確信なんて
世の中にはないのだろうと思う
それでも
あなたの言葉に随分と助けられたよ
ありがとう

ありったけの言葉を尽くして
あなたなりの価値観で
一生懸命繰り返し考えて
心底心配してくれていることが判った
渦中の当事者にしか
解らない思いはあるのかもしれない
それでも
その時のあなたを思い出す度に泣けてくるよ
ありがとう

大切な私の宝物
あなたたちのおかげで
生きて行けるのだと思う
ありがとう
万歳!My Friends!!

 

 


うえへ







2004/12/15発行

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(編集 遠野青嵐・佐々宝砂)
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