蘭の会2004.10月詩集「空」 (c)蘭の会





















満天 -- The Stars in Heaven --  日々西の空を  
焚火と空のつなぎ目を見たあなたの目  
そら   2m×1.5m  核心  Colony  夜の祭  
わたしがシャンブロウだったとき   a skywatcher.     
どこまでつづくこの空よ
  空のお墓  時空と虚空  

























0001 はやかわあやね
http://homepage2.nifty.com/sub_express/

満天 -- The Stars in Heaven --
 

空よ空
私はあなたと自由になりたい
抱(いだ)くことも
抱(いだ)かれることもなく
見守り
導かれる存在であり続けたい

空よ空
私はあなたとひとつになりたい
何ひとつ司るもののない風景の中で
思いのたけ自分自身を分かちあい
目にするもの総てに思惟をのばし
慕情をつくし
ただひとつの存在として認め合いたい

私はこの満天の星に誓う
あなたと歩む行く末に
例え何があろうとも
決して後悔はしない
それは求め求め合うものにくだされる
永遠の試練だと信じたい
この手をのばしのばされる先には
いつもお互いの御手を感じていたい

この夜に続く満天の星よ
どうか私たちを見守っておくれ
何も語らず
何も許せない風景の中に存在する慟哭など
対したことではないと笑っておくれ

空よ空
私はあなたと歩み続ける
この行く末に例え何があろうとも
満天の星に包まれて
あなたの御手を求め続ける

 

 






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0023 ナツノ

日々西の空を
 

突然、さよならを言われ戸惑う私に
ご多幸を! と笑って背中を向けた人。
さよなら、でもずっと、まだ知り合いだよ。
少なくとも、私はそう、思っているよ。
一通のメールで去っていく友(と呼ばせて)。

人の別れは突然のものもあり、準備されたものもある。
あの時、ベッドで意識もうろうとした姿に
ドクターに詰め寄ってナゼ?と言えなかった。
それは
黄泉への扉が開きかけていると 私が感じたから。

私の判断などあてになるまいに。
横たわる姿に恐れをなした私は、きっと早々に
自分で別れを決めてしまったのだ。

言い訳のようだけど
私には、もう助ける術などなかった。

本当に、その姿は苦しんでいるように見えたから
救いたかった。それが現世との別れという形でも。

見送るのは夕方の西の空の雲ばかりだ。

月が昇れば、今日のページにしおりを挟み、眠る。
そう、今日の日付のところに。
そこまで、私の人生は進んだんだ。

目は宙をさまよっているように見えた。
本当はどうだったのだろう、
旅支度はできていたのか?
うつろな目は
深く白い沼のように黙ったままだった。

私はどうすればよかったのか。
何も出来ない私は
ただ 「物分りの良い善人」になっていた。

ねえ
ベッドの上で心は、どこまで旅していたの。
フルサトの山へ向かって、
軽々と アカネに染まる空を 飛んでいったろうか。

あの山を背に 歩いてきた日があったんだね
そして今また あの山へ向かって戻っていくんだね

見送る私は 行く道が安らかであるよう手を握った。
そして祈るしかなかった。

メールくれたの、本当に嬉しかったよ。
でもあなたの事、心配しています。
一人で悩んでいないのか、相談する人はいるのか。
電脳箱の向こう側は コードいっぽんだけで繋がっている。

心拍数が下がった。
数字とグラフを描く機械には、
場違いなハートのマークが可愛いらしく点滅している。

「もうご本人の意識はありませんので」

ありがとうございます。
最後まで、こんなに人として、
人として、扱っていただいて、ありがとうございます。
動転した私は
ドクターに、そう言うのを忘れていた。
あなたに見送っていただいて、本当に感謝しています。
アリガトウ。

私の道は、毎日は、相変わらず続いているよ。
また、メールちょうだい。
淋しくなったらメールちょうだい。
同じ空の下、息をしているじゃないの。

 

 






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0083 栗田小雪

焚火と空のつなぎ目を見たあなたの目
 

あなたの目はみどりいろ
しょくぶつが風にゆれる、すてきな色。

あなたの目はみどりいろ
それは空とおくはなれたわたしにも見えるいろ。

あなたの目はみどりいろ
とてもたくさんの綺麗なものをみてきた、すてきな色

あなたの目はみどりいろ
たきびのなかで燃える色。

 

 






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0096 土屋 怜
http://www11.ocn.ne.jp/~nekowalk

そら
 

空をみあげることが
多くなった

あたたかな 光のなか
ぼーっと 
見ていると

からだの中まで 
空になる

そらって
まぁるい
この星もまるい と 
感じる

まぁるい
まるい
こころになれる
 
そら

 

 






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0097 陶坂藍
http://www.keoyon-44.fha.jp/

2m×1.5m
 

朝出勤して最初の仕事は
住宅街にぽつんと立った
バーガーショップの大きな窓を
一枚一枚磨く事
中でも正面入り口の
風除けガラスは
2m×1.5mもあって
身長150センチ足らずの私が
これを磨きあげるのは
容易ではないけど

窓の内側には
ちっちゃな手形の横に並んだ
おっきな手形
誰かぶつかったのかしら
くっきりとおでこの跡(この高さはきっと男の人だ)
そこに昨日のしくじりを
こっそり窓に塗りつけて
クリーナーをシュッと一吹き
そ知らぬ顔でふき取れば
うろこ雲にまぎれて消えた

ここだけ新品の空
2m×1.5mの空

 

 






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0099 叶
http://www.geocities.jp/sirotanhouse/page049.html

核心
 

何も言わないで

君の眼は
僕の全てを見抜いてみせる

けして触れないで

僕の眼は
君のすべてを映している

ただそこにある大空は
ちっぽけな僕の核心をついた

 

 






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0110 佳代子

Colony
 

ずいぶんと空が高くなった
ここにはカンパニュラやスイートピーが
今を盛りと咲き誇っている
夏の尾が空き地を巻き込んでいるのだ
抱きしめれば跳ね返す程
弾力のついた低木の下から
干からびた記憶が
莢を漬けたまま這い出してきた
もう白くなって透けることもしないから
障りない笑顔だけ被せて
抜け穴から逃がしてやった
そうだ 気づかう事はない
私は凛としている
樹木達も凛としている
そして朽葉は美しい
母の形をしているからだろう
残照に包まれて夜を向かえるたび
私の空き地はスフレのように柔らかくなる
眠気は溶解度を高くする
草木も花もゴムのように折りたたみ
私はそれを朝まで土の中に沈めるのだ
越冬はしない
地が昂揚しているから冬にならないのだ
ここには怯えた目の者はひとりもいない
空に向かって「ありがとう!」と言った日から
私の空き地が賑やかになった

 

 






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000a 宮前のん

夜の祭
 


火祭りの夜が、最後だった

いつの間にか海を見下ろしていて
足もとには、空っぽの闇が広がっていた

途切れ途切れに聞こえる笛の音
規則正しい鼓動のような太鼓


鎖はね、1本だけじゃないんだよ

昔そう言って
思い出したように
背中の傷に薬草を擦り込んでいた
ねえ、ばあちゃん


灯は向こう岸できれいに瞬いて
そこまでは、
気の遠くなるような空っぽの闇


あの夜ずっと、鈴の音が
遠くまで空を振るわせていた



 

 

 






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000b 佐々宝砂
http://www2u.biglobe.ne.jp/~sasah/

わたしがシャンブロウだったとき
 

そら、なのか
から、なのか
どっちでもいいけど
「宙」と書いて「そら」と読ませるよりも
「空」と書いてなんと読むのかわからない
そんな曖昧さがわたしはすき

そら、だったのか
から、だったのか
どっちでもいいけど
あのときわたしはシャンブロウで
わたしの食べ物が何かくらいちゃんと知ってた
あなたの言葉がわたしに通じないってことも知ってた

からかいからまりからくれない
わたしは髪を赤く染めていたことがあって
わたしの髪は蛇みたいにいつもくねくねで
わたしの瞳は草の緑ではないけれど
わたしの目を覗きこんではだめ
わたしは吸血鬼ではないけれど
わたしのキスを待っていてはだめ
そらごとそらみみそらなみだ

そら、かもしれない
から、かもしれない
夕暮れのそらには今も火星
その赤い光に背を向けてわたしはねむる
わたしはもうシャンブロウでない
わたしの食べ物が何かなんてわからない
わたしの言葉があなたに通じないこともわからない

そら、と唱えて髪を結い
から、と唱えて眼鏡をかけて
わたしは北西のそらに幻の惑星をみる
ごめんね
わたしはもう
シャンブロウじゃないの
あなたがまだ
あなたのまま逃げ遅れているとしても


 

 






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000c 芳賀 梨花子
http://rikako.vivian.jp/hej+truelove/

a skywatcher.
 

わたしの見る空は

窓から見る空で

たいがい曇り空

昼と夜の境目もないのに

犬と一緒にソファーに座り

この時間が行過ぎるのを待っている

ただ待っているだけなのに

それでも犬は

わん

と吠える

今日一日を届けるには

ちょっと早い

夕刊を配るバイクに

わん

と吠える

彼のおかげで

世界を知ったような気になる

今日が終わっていくことを知る

花びら占いのような毎日はもうやめなさいと

誰も言ってくれないので

いちまい

いちまい

花びらをむしり

あしたを知ろうとする

秋の日のブルグミューラー

さようならという言葉の語源を探る

さようなら

と声に出してみる

さよなら

としか聞こえない

わたしは舌足らずで

そのうえホットチョコレートも飲めない

大好き

なのに味わえない

いくら音をたどっても

答えを導き出せない

夕焼け向きの窓とわたし

 

 






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0112 なちゅ

どこまでつづくこの空よ
 


新しい発見がありました
浮かぶ雲達は楽しそうで
思わず笑顔こぼれました
いったいどこまで雲達は
ふわりふわりと浮かぶの
いったいどこまで私達は
空に浮かぶ雲を眺めるの

 

 






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0113 チアーヌ
http://plaza.rakuten.co.jp/chiamia/

空のお墓
 

こどもがえへへと笑う
かわいいね ぎゅー
なんてするけど

パパの好きな塩辛
手作りして
「お帰りなさい」とか
言うけど

ほんとは

わたしが
誰のものでもないように

誰も
わたしのものじゃない

空のお墓は

ひとつづつ

 

 






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0115 伊藤 透雪
http://tohsetsu.exblog.jp/

時空と虚空
 

雨上がり 見上げた空
雲が白さを増していく
今日のこの空は 昨日のそれとは違う
明日も同じとは言えない

空は時を越えて繋がっている

人も日々生まれ変わる
昨日の自分と今日の自分は違う
時空の流れの中で
刻々と色を変える
感じることさえも

木々の葉が赤くなり 土を覆う
風が時折巻いていき
カーペットの柄がわずかに変わる
枝ぶりがよく見え
空へ向かうさまが見えている

流れの中で人が感じるのは 空(くう)
虚空の感慨は 諦めとは違う
ただ 人を優しくする
今という時間が愛おしくなる



このまま晴れたら清々しいだろうなぁ。

 

 






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2004/10/15発行

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