蘭の会11月詩集「誕生」 Copylight(c)蘭の会













「鳥の飛ぶ空に花は咲かない」  記憶  桃色雲の上で
生まれない   リバース  いのち  誕生  誕生日
生まれ変わる  さかなのはなし  現 象  なゆた
うぶごえ  神田駿河台  















0007 愛萌

「鳥の飛ぶ空に花は咲かない」
 





アスファルトの上
小さな亀裂の隙間から
体を引っ張り出すようにして
芽を出した花を見つけたら
あなたはそっと
それを掘り返して
柔らかい土のある場所へ
束縛も苦痛もない場所へ
運んでやるのでしょう


その花がどれほどの力で
そこまで大きくなって
どんな気持ちで
今もそこにいるのか
あなたは考えもせず
そうしてやることが
当たり前のように
毎日水と光を与え
それまでその花が
受けたことが無いほどの
愛情を降り注ぐのでしょう


いつまでも美しくあるように
いつまでもここに在れるように
弱らないように
支えてやりながら
その優しい腕の中で
花を永遠に守り続けるあなた


あなたの手の中で
花はきっと
すぐに枯れてしまうのに


それでもあなたは
花を愛して
自分のしたことが
正しいことだと
少しも疑わないのでしょう



あなたは自由で
愛に溢れ
真っ白な翼を持った人


人が苦しみで
強くなることを
痛みを受けて
伸びていくことを
知らないあなた


あなたのそばでは
どんな花も
本来の姿で
咲くことはないことを



あなたは知ることはないのでしょう

 

 






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0023 ナツノ
http://www5.plala.or.jp/natuno/brunette/brunette_top.htm

記憶
 

ほんのわずかの時間旅行なのかもしれない。
神がいるとすれば その瞬きの間
流れ星が 右から左へ旅をする間

それは命が生まれ 消えるまで。

水中遊泳の後 裸でこの世に放り出される赤子
現世を行く切符を手にした事に
赤子の笑みは輝くのか
地球の空気を吸った その時すでに 
光と闇を心に取り込んだ 赤子

おぎゃあと一声
それは母の胎内という宇宙への決別の言葉か

地球の生命体として
やがて這い 立ち上がり 草と同じ
生きて 枯れ この世を去る運命

なぜ生まれたの? 魂が
この世に仮の宿を取ったという事?
なんのために? 魂のスキルを上げる為?

私には
オーロラの空を ずっと昔に見上げた記憶があるのだ
虹色の光が 夜空に舞い踊るのを見た記憶があるのだ
私の知らない空で

つまり
私の脳の記憶の 
全てが容易によみがえる訳ではないらしい

流れる涙は 確かにほほを伝う が
記憶のひだの何処かに
自分の知らない自分が隠れている

ここにいるのは
一部の記憶により存在する私だけ
私はどこから来て どこに行く?

デジャヴ
長い旅の後 ふたたび魂はめぐるのか。 

眠る赤子はどこを旅して
この揺りかごに辿り着いたのだろう
疲れ果て 隣でうたた寝する 若い母にもわかるまい
あなたのおなかの宇宙に宿を借りた命を
こんなにも あなたが愛するのはなぜ?

なぜ母性など あるのだろう

長く短い旅が終わり
いつか私も涼やかに旅立つ

脱ぎ捨てられた仮の姿は 
どうぞ 焼いて捨ててしまって。
存在さえも時間さえも
そこには なかったように 
忘れてくださいね

            (過去の詩「旅路」に手を入れました)

 

 






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0036 野中ひまり
http://hccweb1.bai.ne.jp/natural/

桃色雲の上で
 

解き放たれた
ひとつ だけの場所で
私は未完成だ と
気付いた者だけが
もう一度生きる為に
生まれる

ぼんやりと
祖父の遺影をみながら
思った

こちらでは相変わらず
生活が走り回っています
もちろん
私たちは未完成
息子なんて まだ4つです

死ぬまで 人生は勉強です
私は大人だけど まだまだ

おじいちゃんは
完成していたのですか
それとももう
どこかで生まれていますか

 

 






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0038 純理愛。
http://koukotu.tripod.co.jp/

生まれない
 

あたしはきっと生まれていない
この鏡には何も映っていない
あなたがくれたこの手鏡には
呪術がかけられている
この鏡にはあたしは映らない

あたしはきっと生まれていない
あたしはきっと存在しない
消えてしまいたい
消えてしまいたい
そう思えば思うほどに
冴えてゆく意識

何が好きで
何が嫌いで

あたしが月に願うのは
あたしの生まれてくる日

あたしが太陽に願うのは
あたしが死ぬ日

あたしがあたしになれるまで
あたしは手鏡を割れないの

あなたがここで
一言
戻ってきて
たった
一言

「愛してる」

それだけ言ってくれれば
月と太陽の神は
あたしを生む

あたしは月と太陽の神が創った

ねぇ、もう一度生まれたいよ

ねぇ、もう一度死んでしまいたい

どこにいったの
あたしの姿

鏡よ

鏡さん

あたしの姿はどこにあるの

探してよ
ねぇ、あたしをみつけてよ

生まれてゆく
生まれてゆく
体の底から
その感覚を
もう一度ください

ねぇ、呪いを解いて
ねぇ、あたしを生んで
ねぇ、あたしは死んだの
ねぇ、あたしは殺されたの

あなたが手鏡にかけた呪いって
何?

 

 






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0059 汐見ハル
http://www3.to/moonshine-world

リバース
 

人生はいくらでもやりなおしがきく、
と、いうけれど
巻き戻すことはできない
くらがりのなかでわたしは
あなたに借りたビデオテープを
くりかえし 
見続けている
あなたの気に入るコメントを
さがしながら
てのひらが
あたたかくなるまで

あなたのことばやふるまいが
わたしの心に拡げる波紋
ささやかな嵐
一片の詩が
こころのやわらかいぶぶんに
熱をはらんだとげとなって
のこる
有精卵のようなしずかな熱
それゆえ永遠に
失ってしまったこたえが
ある

わたしをまもってくれない
すべてのものにたいして
いつか返さなければいけない
それは報復のようにただにがいものではなく
よい香りのするものでなければならない
挽きたてのコーヒーのように
さよなら、という言葉のように
少しさみしくてもいいかもしれない
その向こうに
訪れる朝が透けて見えるなら何でも

 

 






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0064 紺

いのち
 

渦巻くトンネルで
ひかりを求めた
生まれ落ちたこの世界に
激しく泣いて
出会ったものにその手をのばした

ゆびでくちであしのうらで
こわれつぶれて
ねじれはじけて
そして息絶えたものたち

そんなつもりはなかった
ただ幼くて
抱きしめることは
奪うことだった

月満ちる夜に
葉裏の蛹がかすかに光り
組み替えられてゆく細胞
そして羽化
舞いあがる蝶の
羽根にきらめく鱗粉は
百億の星
そして
私のなかにも千億の
星や花や人や虫や石や泥が
うごめいている

(それは私のひとカケラだった
 そして私も
 それのひとカケラだったのだ)

 それらは太陽のフレアのように
のびあがり 呼びあう
殺しあって抱きあう
キスだってする

そうしながら
だんだん だんだん 
拡がってゆく


密林の羊歯の繁みに
サバンナのヌーの群れのうえに
氷河の青い裂け目に
大瀑布の飛沫に
月の光に輝く波頭に

痕跡を残し

ああ
私は
地球で 
できている

ほら いま
私の羽根が ふるえて
ほんの
わずかな鱗粉が
あなたに 
こぼれ落ちてしまった
闇の中でもひかりを放つ
「出会った」という しるし

それは
偶然でも必然でもなく ただ
はるかな 空 からやってくる
あの風のせいなのだ

すれ違うだけの
出会いのためにさえ
風は吹く

そんなふうにいのちは

つながっているのだ と

 

 






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0077 ちほ

誕生
 




終わりのつづきを
その脱却を
うつくしいことばで
飾りました

 

 






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0079 鈴木倫子
http://www.geocities.co.jp/Bookend/1714

誕生日
 

誕生日は年に一度
巡ってくる
一年間かけて巡礼し
サンクチュアリに辿り着くように
巡ってくる

聖地の寺院は
世の中の荒波
政変
民族対立
果ては天変地異さえをも
憚ることなく
そっと建っている

不可侵の領域

皆それぞれが
皆それぞれの
サンクチュアリを持っている
それは己でさえも
不可侵のもの
Rebirth Rebirth
巡って 巡って
人は生まれ落ちる

 

 






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0082 英水

生まれ変わる
 

夜の海 深く沈んだ泳げない魚
月明かりだけの砂浜に打ち上げて
もうすぐ さざ波が迎えに来るから
もう少し 待ってて

次の満月に きっと生まれ変わる
白い風がそっと吹き抜けるとき
選ばれたものだけが 命を授かるの
あと少し 待ってて

 

 






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0083 栗田小雪

さかなのはなし
 

パパが投げたおほしさまをその子供がひろって
砂浜になげたらさかなが食べた
おほしさまを食べたさかなは眠り
はるかみらいのゆめを見た
みらいも過去も
ぼくは永遠に
永遠にさかな
たっぷりの水をのみ
水の中のプランクトンをたべ
何をしなくても生きられる。
目にうつるものはすべて青色
うろこはつるつるらしいけど
自分では、見えないさわれない。
ほかにもさかなはいっぱいいるけど
どれがさかなか
どれがぼくと一緒なのか
ましてやぼくはさかななのか
ぜんぜんわからない。
そんなさかながひとめぼれ
ひとめぼれをした。
水のかべを通して見るその子はとても綺麗で
一生あえなくてもいいやと思った。
みゃーみゃーと声がしてふりかえると
うみねこがくるくる回りながら鳴いている。
もしぼくがさかななら
きっとたべられる。
それでもぼくは
永遠にさかな
アーメン。

 

 






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0085 朱雀
http://homepage3.nifty.com/complass/index.htm

現 象
 

払暁 脳裡にする声は

間違いもなく わたしの呱々

薄い意識の奥底で

その超然たる出来事は

仏舎利咥えた野良犬 いっぴき

足元に絡み付いて 離れません


堕ちてゆくのは魂で

放り出された先は 伏魔殿

目の前にのび広がる海宝石には

触れることも許されず

嘲る 嘲る 指の間で・・・


払暁 脳裡で繰り返す呱々

忘れることも許されず

ただただ 無常に木霊する

 

 






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000a 宮前のん
http://plaza5.mbn.or.jp/~mae_nobuko/

なゆた
 


その娘の名はなゆたと言った

山奥の小さな農村の一際大きな地主の
屋敷の奥座敷に少女は住んでいた
目は見えるが耳も口も不自由だった
だがもの言わぬその瞳は大きく黒目がちで
日に当たらぬ肌は抜けるように青白く
見た者を魅了してやまない長い黒髪の美しい少女だった

なゆたの母親はなゆたを産んで死んだ
いや正確には母親が死んでからなゆたは生まれた
村一番の地主に嫁いだ村一番の美しい娘は
彼女は神主の娘であったのだが
なゆたを孕んでから日増しに気がふれてゆき
ついに臨月となったある日川に身を投げて自殺した
村の者が飛び込んで助けた時にはもう息がなかった
だがその時モゾリと腹がうねったのだ
村の年老いた医者が駆けつけその場で腹を割き
なゆたはそこで産声をあげたのだった

あらゆる音から閉ざされた彼女は
だがそれとひきかえに不思議な力を持っていた
予知夢というのがそれだった
夢で見た光景を切り絵という形で表現するのだ
それはほぼ完璧と言っていいほど現実のものとなった
やがて巫女の噂を聞き付けた街の人々が
山ほどの金を持ってなゆたの屋敷を訪れるようになった
大抵は大きな悩みを持った事業家や政治家の類いで
なゆたは夢を切り絵にして相手に手渡すのだ
丁度その頃国はきな臭い戦争に突入していて
軍の関係者がひっきりなしに訪れ
おかげで村は素晴らしく豊かになっていった

なゆたは益々美しくなり15になった
ある軍人の誘いで地主が多くの使用人と共に街へ出て
女中頭と二人っきりになったある月のない夜
なゆたは襲われた
その男はかつての使用人で
廊下をゆっくりと渡って奥座敷に近付いた
のしかかられて彼女はすぐに目を醒ましたが
声の無い彼女の叫びに気付いてくれる者はなかった
物音に気付いた女中頭が駆け付けた時
事は既に終った後だった
程なくしてなゆたが妊娠したという噂が流れた
そして彼女の母親がそうであったのと同じように
なゆたも月を追うごとに狂気を帯びてくるようだった
だが予知夢はそれに反比例してより鮮明になっていき
驚愕するほど細かい切り絵を作っていた

やがて世界中を巻き込んだ戦争は大詰めを迎え
村は疎開してきた子供や食料を求める人々の群れであふれた
その中に軍服をきた目の鋭い男たちが何人か混じっていて
イライラとなゆたの切り絵を待っているのだった
なゆたはすでに臨月を迎えていて
大きな瞳は焦点の定まるところを知らず
華を散らした振り袖を引きずり歩き
紅い口からたえず垂涎し奇声をあげていた
ある日とうとう最後の切り絵が完成した
額を付き合わせてその絵を見た軍服たちは血相を変え
一斉に車に乗り込んで散りじりになり
二度とこの村に来ることはなかった


そしてなゆたは
どうやってか歩けないはずの脚で
屋敷を抜け出し野を駆け抜け
やはり母親と同じ川面に身を投げたのだった
引き上げられたなゆたはすでに事切れていたが
臨月の腹がモゾリとうねるのを皆が目撃した
代替わりした医者がすぐに呼ばれて駆けつけ
自分の父親と同じようにその場で彼女の腹を割き


やがて新しい産声が
高らかと村中に響き渡った









 

 

 






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000b 佐々宝砂
http://www2u.biglobe.ne.jp/~sasah/

うぶごえ
 

今回わたくし佐々宝砂は全く詩が書けないのである。だのに、締め切りはとっくに過ぎている、どーしろってのだあ。こまった。まことに困った。ああ。と嘆きながらも実のところこれは計算づくで書いているレトリックなのであって、もうここまで書けばこの詩は完成したよーなもんなのだ、と威張って言えたらいいのだが、もちろん嘘である。こんなこと書いてて詩になるんか。おーい。誰か詩になってると言ってくれ。ところでこの詩のタイトルが「うぶごえ」なのは、その昔SFマガジンで読んだ今日泊亜蘭の『うぶごえ』っていうSF短編が記憶に残ってて、ああいうの書けたらいいなあと思ってつけたからなんだよね。この調子じゃどう足掻いても「うぶごえ」のタイトルにふさわしい詩になりそうにないのは承知だがそれはそれでおいといて、はや九十の齢を越えてなお意気盛んなドラキュラ的作家である今日泊氏の『うぶごえ』は、宇宙船内の無重力を利用した無痛分娩で一儲けしようとたくらんだチンピラを描いて、思いがけず感動的な結末に至る、ほかに類をみない傑作SFだった。遠い未来、地球から遠く離れた宇宙のどこかで、でもやっぱりそこに人間がいるかぎり、出産があり誕生があり、ドラマがあり、ついでに言えばチンピラやくざも存在しているだろう。でもそれは、人間ってな未来永劫かわらないものだということじゃない。人間は変わる。人類は変わる。きっと変わる。宇宙船のなかで響く赤ん坊のうぶごえと、きょう地球で響き渡った赤ん坊のうぶごえが、全く同じに響くわけがないじゃないか。違うんだ。昨日と今日とじゃ違うんだ。とは思うものの実感がわかない。というのも、私はうぶごえなるものをいちども耳にしたことがないのだ。私は助産婦ではないし、他人の出産に立ち会わせてもらえる機会もないし、うぶごえなんて特殊なもの、いったいどこでどうやって聞きゃいいのだ。いったいうぶごえとはどんなものなのだ。そこらへんで赤ん坊が泣いている、あの泣き声と、どこがどう違うのだろうか、わからない、いくら考えてもわからない。ひとつだったものがふたつになったから、それで泣くのか。それともふたりでいたのがひとりになってしまったから泣くのか。そうではなくてただ単純にはじめての呼吸が苦しいのか。なぜだ。なぜ泣くんだよ赤ん坊よ。なぜだよ。わからないよ。教えてくれよ。疑問符の大群が浮かぶ私の脳裏に、遠い遠い声が聞こえる。それはほんとうに遠い遠い声だ。遠い遠いうぶごえだ。耳を澄ましても、聞こえるはずのない声だ、しかし私はそれを確かに聞いたはずだ。だってそれは私の声なのだから。この私が発した、この私自身のうぶごえなのだから。私は私に尋ねなくてはならない。おまえはなぜ泣くのだ。苦しいのか。さびしいのか。嬉しいのか。なぜだ。なぜ泣くのだ。わからない。わからない。遠い遠い声が、遠くで泣いている。まるで自分自身よりも大きな声で。身も世もないみたいに、この世の中で、この身体で。








 

 

 






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000c 芳賀 梨花子
http://rikako.vivian.jp/hej+truelove/

神田駿河台
 

大きなお腹を抱えて

神田駿河台の坂を上る

もうひといき

もうひといきだからねと

お腹をさすりながら

君と話をしながら

わたしは学生街の坂を上る

あのコーヒースタンドの角を曲がると

産院があって

わたしのママもそこでわたしを産んだ

小さな産院があって

そういえば

君の生まれ年は香港の返還で

友人は忙しそうに

大陸と香港と日本をいったりきたり

わたしといえば

腹をさすり

息を切らし

坂を上り

それまでのわたしだって

仕事をして

恋をして

贅沢をして

競争ばっかりしてきて

でも、わたしが欲しかったものって

なんだろう、と

立ち止まってしまった

そしてわたしは

この坂を上っている

それまでのことって意味があったのかしら

わたしは何を求めて

生まれてきたんだろう

なんで

競争ばっかりしてきたんだろう

よーいどんって

毎朝ママが号令をかけるから

しかたがなかったのよ

ママ

あの日

山の上ホテルで

ふたりは待ち合わせして

フランス料理をいただきましたね

フォアグラのソテーより

焼きたてのパンのほうが美味しかったです

ママ

あなたは

知っていたのですか

そういうことを

ほんとうは知っていたのですか

わたしはその時初めて

少しばっかり後悔をして

ときどき涙を流しています

だって、あの時

母娘して

その年のワインのできばえを気にしていました

今年の夏は熱くなるらしいから

このこの生まれ年のワインは

きっといいできになるわよね、と

ソムリエに

しつこく聞いたから

そのソムリエは

わたしのお腹に

こう言ってくれました

今年のワインのできは

きっと素晴らしいものになりますよって

君はむっつになって

ママは歳をとることをやめて

思い出になってしまいました

わたしは坂のしたの下倉楽器で

君のバイオリンの弦を張り替えるたびに

あの日のパンを噛み締めています

君のバイオリンの弦はこれから先

なんど切れるのか

君の生まれ年のワインをあける日まで

わたしはこの坂を

息を切らしながら

上る

神田駿河台の

あの坂を

 

 






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2003/11/15発行

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(編集 遠野青嵐/佐々宝砂)
(ページデザイン/CG加工 芳賀梨花子)