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青い色  好きで 好きで 好きで  2色の声  
野火  水平線と闇夜  爆音ナイフ  青。  
IN THE BLUE  空の色が青いのは  青い金魚  
石となりし人に  シチリアーナ  





































0023 ナツノ
http://www5.plala.or.jp/natuno/brunette/brunette_top.htm

青い色
 

あの日 ベランダで洗濯物を干していたら
お腹の下で プチンとはじけた音がした
あの時 小さな命が消えたと思う
空の色が青かった
忘れるはずがない ずっと一緒だよ  

過去の自分に抱かれて うとうと眠れば
昔暮らした 海の街を思い出す
ベランダから目を凝らすと
今でも 白い砂浜と青い海が見える
不安はいつでもあるけれど 
私を優しく守る 過ぎた記憶
いつも一緒にいてくれる 

夕方
ベランダで風に吹かれていると
ゆうやけ雲が集まって 空いっぱいに 港を作る
私の 小さな命も
きっと船に乗り
ゆっくりあの入り江へたどり着いたろう
淋しいとは思わない
私は みんなと同じ船に乗っているから
淋しいとは思わない

家々に 夕げのあかりが灯るころ
逃げ場が無くなり 
問い詰められて 
黙りこくる 夕顔のように  
私も心を閉ざすけど

空の上から いつも私を見ている人がいるよね
私も いつも空を見ている
絶える事の無い 青い空
私は一人じゃない

私もいつか いきたいな
安堵の地 雲の入り江にみちびかれ
青い空の上に。

 

 











0028 阿麻
http://yumugen.easter.ne.jp/

好きで 好きで 好きで
 

となりのバラが赤いのも
ランドセルの色が赤いのも
トイレのマークが赤いのも
みんな、みんな、
丸みをおびた 
カラダつきのせいね

いくら時代が変わっても
ナプキンのコマーシャルは
女の膣から
青ざめた血をたらしつづけてる

股間のゴワゴワ 気になりながら、
バスを電車を しゃがみ待ち、
転がるように 乗り継いで、
道みち 道みちうずくまるのをこらえて、

声にならぬつぶやき
(ああ生きてる)をなぞる

青ざめた 薬指のダイヤよりも 唯一uniqueな あいつが

好きで 好きで 好きで

どんなに時代が変わっても
男は女を慕い、女は男を慕う
あいつの
冷たい精が わずらわしい血や痛みを
手にとるように操り

しずめる

 

 











0043 鈴川ゆかり

2色の声
 


"icy blue"
氷のような うすいあお色
君が放った 最後の言葉の色

氷の破片が
身体の中に残った
心臓に刺さったまま
日が経つごとに食い込んだ

皮膚にも破片が張り付いて
喉はアカギレがひりひりと
どんなに心の奥で叫んだって
どんなに心の奥で悔いたって
思いは言葉になる前に
君の視線に曝され
砂のように崩れて落ちる
絶対のチカラを持った
君の
「サヨナラ」


"群青"
海の水面を沢山あつめた色
最初 誰なのか分からなかった
久しぶりに聴いた 君の声の色

あれから3年も経っているよ
大人びたね
流れてくる水は 
温度の変わり目で 幾重にも層をなす

あの頃2人きりの部屋で 君の声は青色
でもね
暫く会わないうちに こんなにも響くように
変わっていたんだね

今君の声のふるえが
私の心臓に残っていた 最後の破片を溶かしていく





           (2001年4月の作品)

 

 











0051 Ray

野火
 

それが何時始まったのか、知らない
気づくとそれはもう煙をだして
40マイル先からも見えていた

いや、見えていたのではなく認知できただけ

やがてそれは夕闇のなか、紅色の煙として存在した

2つの昼が過ぎ、3っつ目の夜が遠ざかろうとするとき
それはまだ弱々しく煙を生み出していた

砂漠の上に太陽が直角に位置する頃
煙は白く、白く
煙は儚く、儚く

      青の中に吸い込まれていった

At a summer day, it started.
However, no one knows when it did.
Everyone could see it from a distance.

(Only recognition of it even if someone said "saw it," )

It was still there wearing reddish smoke in the dark.

Two days and three nights passed.
Then it had become weak by weak.

At the right noon,
It did not have enough energy to show its potency,

・・・・・and gone in the sky.

 

 











0059 汐見ハル
http://www3.to/moonshine-world

水平線と闇夜
 

合わせ鏡のようにして
向き合う空と海を
いつまでも見ている

抱えた膝が窮屈
脛にぴったりと添う腕に
にじむ汗 砂のかけら

ずっとずっと遠く
眺めやった青は
私のくるぶしまで
やってきて
ひたすけれど
ねえどうして
染まれないの
ずっと幼いころ
おとこのこのいろ って
拒絶したからなの

けど海は
青くて
母で
"she"で
沈むなきがらは
きっと男ばかり

空は海に
憧れていたかもしれない
隠すように
ひけらかすように
あかく焦がす
いっとき
私すら
染め上げる
 いとしい

私をうらんで
水に還った魚
咆える波
泳ぐ雲が
つれて来た夜

月明かりは
海底ににじむ
星明りは
うつさない

闇だけがきっと
「みずいろ」も
「そらいろ」も
同じに染める
「はだいろ」も
かきけしてしまう

それがいいことなのか
わるいことなのか
わからないけれど

水平線
ねえどうしてあんなにも
截然と分かつ
そうして決してさわれない
抱けない

水平線
ねえそれでも
闇の中でだけ
眠っておいで
私もそうするから
君のためにこぼした
ひとしずくのにがい熱
波に溶けていつか
青に溶けていつか
届く はず

 

 











0069 ひあみ珠子
http://members.jcom.home.ne.jp/pearls/

爆音ナイフ
 

空を引き裂く爆音ナイフ
まるで3倍植毛の剣山が
私の体を固定する
まるで身動き取れないほどに


もしも神様
私の願い事
気まぐれにでも聞いてくれるなら
恋などいらない
魔法の網を下さいな

翼なら
ほらこの肩甲骨のあたりから
もう生えてきそうな感じがしているの
夢で練習たっぷり詰んだし

そしたら私飛んでって
耳障りな爆音ナイフ
魔法の網で
4つまとめてキャッチする

そしてどうする?

里へ降りた獣と同じ
そっと山へ返すように
元来たところへ返してやるの

お家へお帰り
私の空に入っちゃだめだよ
私がのんびり飛ぶ空だから
魔法の網で雲つかまえたいんだ

 

 











0072 諦花
http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/poem/kurara.htm

青。
 

青。ひたすらに空を見ていた。

寝転がっていても、だるさは抜けていかない。
流れていかない。雲も、光も、
車のスピードは私に実感をさせない。
移動。移行。移転、それはただの。
進展、希望、新生。そのためにはあまりに拙い。
別離と言うには軽すぎる別れの中で
それでも二度と会えないかもしれないひとたち、
電話をする、メールを送る、年賀状も出すけれど。
バカ話で背中を叩き合ったり、日陰のベンチでそっと唇合わすことはない。

青。塗り潰せるだろうか、その中に。
過ぎていくと同時に、たしかにそこにあるもの。
私が生まれると同時に、消費されたもの。

生きていく、そんな単純な出来事が。
足を使わずに進んでいく世界では、私に実感をさせない。
スピードも、時間の経過も、
流れて
いくものは。
感じていることは。
頬を濡らし、
ただ。視界を溢れさせる熱さの。
さびしさ。置き去りの。思い出。愛。捨てなくてはいけないと、
知っている大事な抜け殻。

青。

空、ばかり見ていた。

 

 











0084 虚影庵

IN THE BLUE
 

こころも からだも
わたしという いのちのすべてが
とけて きえて

残るのは どこまでも碧い水

 

 











0085 朱雀
http://homepage3.nifty.com/complass/index.htm

空の色が青いのは
 

空の色が 青いのは 一体 如何なる 所以でしょう?

「それはつまり

『レイリー散乱』なる現象が 大気の向うで 忙しくおこり

7つの色の 可視光のうち 最も多く 地上に着くのが

青い光と いう所為なのだよ」


ほつれた糸を ツイとひっぱり

見過ごすには 大きすぎる 穴の空いたポケットに

無理矢理 右手を突っ込んで 物知り博士は 言うのです


だけども 博士

見上げた空が青いというだけで どうして心は晴れるのでしょう?

こごり雲に覆われた 鈍い空が長く続くと

青い空が恋しくなるのは 果たして どういう訳でしょう?

例えば空が黄色でも 同じ思いになるのでしょうか?


「いやはや それは 科学ではなく・・・」

皺くちゃになったハンカチで 萎びた顔を拭きながら 

博士は 扉を閉めました

遠くて見えない光の事は 分るのに?



「それが 浪漫というものなんだよ」

売れない詩人が 歌うように言うのです

青い空を 書けもしないのに


「心を映す鏡ということさ」

似てない似顔絵描きが 絵の具に塗(まみ)れて言うのです

青い空を 描けもしないのに 


空の色が青いのは 

「レイリー散乱」とやらが 浪漫を見せて 心を映してくれるから・・・

ひとまずそれで 良しとしましょう


それなら

空の色が 青いのと 海の色が 青いのは

一体 如何なる 由縁でしょう?

 

 











000a 宮前のん
http://plaza5.mbn.or.jp/~mae_nobuko/

青い金魚
 



クラスの皆がするというので
仕方なく久しぶりに
でもあっという間にぺろん
剥けてしまった針金の丸い紙
アルミのお椀の中は隙間なく赤く
それでも10匹は居るだろうか
皆息も絶えだえだ
弱っているものを狙うと
掬いやすいんだよと昔
叔父さんが教えてくれたっけ

どれか1匹だけ持って帰っていいよ
テキ屋の兄さんにそう言われて
水槽の中を眺めていると
スッと目の前を通り過ぎた
青く見える程透き通った白い金魚
他の子の目を気にしながら
おそるおそる指をさす

あの、これ、下さい。

あいよ、袋代は別だよ


境内の石段を降りながら
ビニールに入った青白い金魚を眺める
あの赤い集団の中で
自分だけが皆と違う風体だと
お前は知っていたんだろうか
それでも運命を受け入れるが如く
ただ俺は俺だと力強く
悠々と泳ぎ回っていたんだろうか
あるいは自分が何者であるかも知らずに
呆然と掬われたのだろうか
いや、それなら救われたのか


どこかで打ち上げ花火の音が
ピュルルルと悲しげに鳴いて落ちた

 

 

 











000b 佐々宝砂
http://www2u.biglobe.ne.jp/~sasah/

石となりし人に
 

其の人は南洋にゐた事があつて
だから私は其の人を思ふ時
まづは珊瑚礁の島々と
南の海とを腦裏に描いてみる

南洋の風物は鮮やかで
翡翠の海に屹度
色とりどりの魚が泳ぐのだと思ふ
小鳥たちも屹度
其れだけで華やかな淺黄淺葱の羽根に
朱の飾羽根を見せびらかすのだと思ふ

其の人は又
流沙河(りゆうさが)の妖怪と化して
西方への旅を語つた事もあつた
首に吊した
九つの頭蓋骨が重くてたまらぬと
歎いた事もあつた

重かつたのは頭蓋骨ではなく
淨を悟らねばならぬといふ
強迫のやうなものであつたらうに

ノワ゛ーリスが仄かに憧れ語つたやうな
求めて得られぬ青い花の淨を
求め續けねばならぬといふ
矛盾の病其のものであつたらうに


其の人は
喘息を病んで
死んだが

彼の魂は
安寧にあるだらうか
其れとも何處かを彷徨してゐるだらうか

否 安寧でも彷徨でもなく
彼の魂は
彼自身が希つたやうに
石となつて空にゐる
何時までもさうしてゐるといふ譯でないが
今のところさうしてゐる

彼は多分
青く光る石―――星となつて空にゐる
青い星は冷たげに見える
しかし本當は
非常な高温で燃えてゐるのだ
赤く情熱的に燃えるかに見えるアンタレスなぞ
本當は低温の星なのだ
青い星こそは熱い星なのだ

彼は青く燃えてゐる
恐らく後百億年は燃えてゐるだらう
石の生活は億年單位で計られるのだから


未だ石とならぬ私は
流沙河の妖怪と同じく
首に重たい頭蓋骨を吊してゐる

師と仰ぐべき人を知る事もないまゝに
身體の色さへ定まらず
彼方(あつち)と此方(こつち)を
同時に見詰める
氣の多い
南洋のかめれおんのやうに
彼方を向き
此方を向き
南洋の島よりも彩り多過ぎる世界で
我を見失い

其れでも何かの拍子に
不圖(ふと)思ひ出すのである
私も青い花を探してゐたのだと

石となりし人よ 私も
姿なき巡禮に加はつてよいだらうか
聲なき聖歌隊に竝んでよいだらうか

石となりし人よ
私は夜空を見上げてゐる
手の屆かぬ青い花を仰ぎ見るやうに
貴方を戀ひ
青い星を見上げてゐる



―――ある時はノワ゛ーリスのごと石に花に奇しき秘文を読まむとぞせし(中島敦)

 

 











000c 芳賀 梨花子
http://rikako.vivian.jp/hej+truelove/

シチリアーナ
 

オールナイトの映画館で
貴方の物語を見たわ
ずっと昔のことよ
ジャック・マイヨール
貴方は海に還っていったんだってね
まったく勝手な話だけど
貴方のことが許せない

ミラノ・マルペンサ空港
所在無げにトランジットの時間をつぶしている
モンテ・ナポレオーネは
今のわたしには必要ではない
わたしに必要なのは過去
それをしっかりと認識すること
機上の人になれば
1時間50分でカターニア

十年前から
くだらないと吐き捨てて
でも それに埋没して
だけど
この十年
くだらないのは自分だってことぐらい
気づいていたんだ
明日を生きようとしてきたから
馬鹿みたいに
今日だけ生きていたっていいじゃない
だから時計を捨てたの
わたしね
溺れたのよ
気持ちよく泳いでいたのに
つまさきが何かにすくわれたの
その次の瞬間
速い流れに身体ごと捕まれて
あっというまに
果てしない底なしの世界に連れて行かれたの
重力が全くわからないまま
死にたくなかったし
人間だからわたし
必死に海面を求めたんだけど
しばらくすると
ああ、だめだなって
わたし諦めて
珊瑚の死骸が積み重なった
永遠への壁を眺めていたわ
意識が薄れていくけれど
不思議と落ち着いて
ほんとうの美しさを知るということは
死と引きかえなんだなって
こういうのが自然の摂理なんだって思えたの
そうなのよ
死んでしまってもいいと思うほど
美しかったわ
この世界は
ずっと
こんなに美しい世界で
そして
わたしは
それに気づいていないだけだった

でもジャック
シチリアーナは
あんまりにも切ないから
また来ちゃった
結局 わたしは
何も悟っちゃいないってこと
だから生きてしまったのかな
カターニアからタオルミーナまで
バスに揺られて
はるかいにしえテアトルグレコ
意識の通り道はガラスのコリドー
激情のエトナ山をのぞむ
そして眼下に広がるのは
あの底なしの色をたたえたイオニア海
わたしの背負ってきた矛盾が
無になってしまう
感傷は
すでに一色となって
そして過去を追う
さあ行け
わたしの過去は
きっとあの身震いするような
底なしの色
深く深く
さらに深いところに
わたしがいる
死を選ぶということが
どういうことなのか知らないし
生きていくことも
深くのめりこむことも
難しいことで
決してイージーではないけれど
もう怖がることなく
向かい合うべきものを探すわ
だから大丈夫
まだまだ死なないわシチリア
バイバイまたねシチリアーナ

 

 



















2002/7/15発行

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(編集 遠野青嵐)
ページデザイン/写真/CG加工 芳賀梨花子)