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Wedding gifts from Orchid flowers














0001 はやかわあやね
aya_haya@nifty.com
http://homepage2.nifty.com/sub_express/
とも白髪の初恋
私はあなたを幸せになんか出来ないけれど
ねぇ私を幸せにするって言って欲しいの

私はあなたに美味しいお食事の用意も
心地よい空間の演出も出来ないけれど
ねぇそれでもいいよって言って欲しいの

仕事から疲れて帰る時はいつだって
あなたの手作りの餃子が食べたいって思ってしまう私だけれど
でもあなたがきちんとお料理だけして私を待っててくれるのも
なんだかあまりに平凡でつまらないから

ねぇ例えば仕事帰りに洒落たカフェで待ち合わせをして
家事に費やす時間をおしゃべりのために使いましょうよ
お夕飯を食べながらその日一日会社であったこととか感じたこと
不安なこととか悩みごと
誰にも言えないこと
誰にも気づかれたくないこと
あなたになら何でも言えるから
何も言わずに私のこと抱き締めて
その時私は
あぁ私の欲しかったものはあなたの温もりなんだって気づくから
いつだって一日の終わりは
一番大切なものと一番欲しかったものに包まれて眠りたい



ねぇだけど
たまには肉じゃが作って私の帰りを待ってて欲しいの
炊き立ての真っ白い御飯と
あなたの手作りのお料理食べながら私
あぁ生きてるんだなって実感したいから


ねぇだから
私のことだけ待ってて欲しいの
いつまでも
いつまでも


ともに白髪で朽ちるまで




0013 朋田菜花
http://www.asahi-net.or.jp/~sz4y-ogm/
http://www.asahi-net.or.jp/~sz4y-ogm/shukumei01
詩物語『宿命のカタパルト』
「宿命のカタパルト vol.1」

貴方はその夜悲しげに言いました
「そして僕のことなんか君は忘れてしまう」
「そう思うのなら私のことを殺して」
「愛する男に殺されるなら本望よ」

首に細長い指が絡まるのを感じました
でも、待っていても
指には力は入りませんでした

あの日から私は魂を預けたままです




「宿命のカタパルト vol.2」

旅立ち前夜 永遠の愛の盟約として
互いに口移しでミルクを飲みました
貴方から私へそして再び私から貴方へ

唇をつたい注がれるたび薄まるどころか
濃さを増していくミルクの味が
未来を予言していました

そんな宿命の夜でした
すべてのはじまりの夜でした



「宿命のカタパルト vol.3」

そのとき不意に港に雨が降ってきました
私は初めて会う貴方を待たせていました
埠頭を見下ろすロビーの片隅
あなたはノートを広げていました
静かに珈琲を飲んでいました
貴方の顔さえ知らなかったのに
ずっと知っていた人のようでした
まるで愛し続けた人との再会のようでした



「宿命のカタパルト vol.4」

その夜月が海面を
金色に染めるのを見ていました
灯台は終夜にわたり
光の渦をまき散らし続けました

なぜそれを知っているかというと
私たちは睡らなかったからです
かたく抱き合い
朝まで静かに唇をかさね続けました



「宿命のカタパルト vol.5」

その日、海を見に行く約束でした
引き潮の時には歩いて渡れた
懐かしい思い出の島
幼い日に愛した小さな緑の島

けれども海岸線に立つと
島はそこには在りませんでした
海岸整備の際に粉砕されたのでした
二人それぞれの左胸に傷を残して



「宿命のカタパルト vol.6」

貴方の好きだった海の公園を訪ねました
緑は豊かに茂っていました
遠い場所で雲雀がさえずっていました

違っていたのは
周囲の海浜地帯は埋め立てられて
海岸線が2kmも沖に移動していたこと

砂に埋めたタイムカプセルのように
涙を棄てた貴方の姿この胸に刻みました



「宿命のカタパルト vol.7」


貴方は自分を憎んでいました
自分を棄てた過去の恋人も憎んでいました
棄てさせた自分の過失も憎んでいました
憎み続ける限り前に向かって歩けないから
癒しの包帯さえ足に絡まってがんじがらめ
<BR>
だから私を自分のそばに縛りつけました
自由に生きる私を憎みつつも愛したのです
互いに耽溺し合う器官の充足が魂の至福でした




「宿命のカタパルト vol.8」

貴方は何度も私を試そうとしました
もう会わないなどと残酷な言葉を吐いたり
別れようと言ったり 離さないと言ったり
今度は過去の恋人とやり直すと言い出したり

「ずっと愛し続けるつもりでいたけど いいわ
貴方の未来のためさようならしましょう」

すると唐突に貴方はその場で失神しました
抱きしめ続ける以外何ができたというのでしょう



「宿命のカタパルト vol.9」

貴方は結局、昔の恋人に会いに行きました
そこで何が話されたのでしょう
昔彼女と一緒に暮らした街で
新しい発見はありましたか
昔のように胸はときめきましたか
戻ってこなくてもよかったのに
私のことなんか忘れてくれてよかったのに
そしたら私も自由に未来へ歩き始められたのに



「宿命のカタパルト vol.10」

本当は知っていたの ここへ帰ってくること
貴方があの街に捜しに行ったのは
無くした矜持、一度棄てた夢、喪われた時間

でも 本当は最初から失ってなどいなかった
全部そばにあったのよ 
あなたは自分の目を塞いでいただけ

彼女は、貴方などなくても輝いていたでしょう
自分で充足し生きる道を見つけていたでしょう



「宿命のカタパルト vol.11」

いいわ仕方ないわ抱きしめてあげる
存分に息が止まるくらいに
光射す朝の海を
水平線まで歩いていきましょう
遠い渚の潮だまりで海水に半分浸かって
めしいた肺魚のようにこの泥土の中で
ひっそり二人暮らしましょうか
それとも・・・



「宿命のカタパルト vol.12」

唇をかさね初めて1時間
身体の位置を変えてまた1時間
ひとつになって揺れ初めて1時間
私が抱え上げられながら揺れてもう1時間
少しふつうじゃないと思いながら
この耽溺から逃れられない
何もかも互いに忘れてしまうの
生きていくことを取り巻く法則さえ



「宿命のカタパルト vol.13」

睡っている貴方は
私の手を握りしめたまま

指をほどこうとしたらそのたびそれ以上に
強く強く握り返してくるので
私は寝返りも打てずにあなたの額眺めてる

ミルクのような吐息と
煙草の匂いの混じった体臭と
寝言で小さく私の名を囁いた 涙が滲んだ



「宿命のカタパルト vol.14」

貴方が私を閉じこめたの?
私が貴方を閉じこめたの?
白い密室で愛し合っているうちに
つゆが明け夏が来たと貴方が口にした瞬間
西岸都市の影法師は灼熱の彼方に氷解して
気恥ずかしいくらいに純白の朝が生まれた

蝉たちの束の間の夏はカタパルト

愛を精一杯にうたうために飛び立っていく
























































































































































































朋田菜花オリジナルの
詩物語「宿命のカタパルト」は
こちら





0016 渦巻ニ三五
http://homepage3.nifty.com/ginryu/index.html
折れそうに細い
柳の木に
しがみつく母の
青ざめた手が
わたしには見える

夫以外だれも自分をしらない土地で
さわさわと鳴るのは
枝ずれの音
胸騒ぎの音
耳をふさぐこともできない
乾いた幹に
両手の
爪をくいこませているので

憧れと希望と決意をもってやってきた
それでも時として
やるせないさびしさに
打たれる
しあわせな自分がうちあければ
笑われるだけのせつなさ

わたしもまた
さわさわという
耳鳴りを聞くだろう
鞭のような枝に
肩を打たれるだろう

若かった母が
孤独におびえ
とりすがって泣いたという
柳の木は
今はもう
ふっくらと
しなやかな枝を垂れている




0022 ヤリタミサコ
yarita@mguad.meijigakuin.ac.jp
ふたつの靴




ふたつの靴が
一緒に歩いてゆく
同じ地は踏まない
近いところを
前と後ろで歩いてゆく
お互いにぶつからないよう
注意深くバランスをとりながら
リズミカルに
一緒に歩いてゆく
ひとつは
もうひとつに支えれられ
もうひとつも
ひとつに支えられ
ひとつと
ひとつで
歩いてゆく
ふたつの靴が歩いてゆく
ひとつとひとつで
ふたつになって
歩いてゆく





0023 ナツノ
http://www5.plala.or.jp/natuno/brunette_top.htm
二人の色


ひとり暮しがしたくって
いつも母さんを 悲しませた
どうしてあなたは出て行きたいの?
ここが あなたの家なのに。 

ひとり暮らし たす ひとり暮らしが
二人暮らしじゃなかった。

あなたに出会って わかった
あなた色 たす わたし色が
二人の色じゃないんだね。

のんびり屋のあなたの色と
おこりんぼのわたしの色と
にじんだところが 二人の毎日なんだってこと。

不思議だなぁ こんなことって ホントにあるの?
母さんちに帰らなくたって 誰も文句言わない
男の人と 同じ部屋に暮らしたって 誰も怒らない
ずっとずっと こうなる事 夢見てた気がする

そりゃそうよ
だって 結婚したんだから。

これからは そこがあなたの帰る場所
これからは そこがあなたの眠る場所よ
ずっとずっと ね。

眠りにつく時
足の先が冷たかったら 暖めてあげる

タオルはふたりで一つを使おう ハブラシは別々にするけれど。

どおか どおか しあわせに 二人の色を にじませて…
































































0037 とかげ
つなぐ
手をつなごうというので
手をつないでみる
きみの手は意外と冷たい

ぼくにはまだ目的地がわからない
ただ歩けと言う声が聞こえる
たぶん歩かなくてはいけないのだと思う
あまり根拠はないけれど
あの声はたいてい正しい

手をはなすなよ
手をはなしたら歩き方まで忘れてしまいそうだから
いままでどうやって歩いてきたか
どうやって息をして
どうやって足を上げて
どうやって道をみつけてきたか
それから
どうやってきみと出会ったか

きみがわらう
あなたこそしっかりにぎっておいてよ、とわらう
きみの手はこんなに冷たい
冬がもうそこまで来ている





0043 鈴川ゆかり
http://plaza.rakuten.co.jp/niveau
レリーフ

暗がりに慣れた瞳が
君の眠る顔の輪郭をなぞる
髪のはえぎわや
小鼻の窪み

触れたい
では
丁寧に
僕の不器用な指が
眠りを妨げてはならない

こんな気持ち
絶え間なく生まれるのは
何処からなんだろう
どんなに闇が深くても 僕は
君の呼吸を聴き分け
耳を塞がれたって
この指は正しく
君の輪郭をなぞるだろう






0059 汐見ハル
http://www3.to/moonshine-world
gift
わたしがあなたにあげられるものなんて
なんにもないのよ ほんとよ
しいていうなら この身ひとつきり ほんとよ
だけれどこの身に どれだけのねうちがあるっていうのよ

幸福の王子みたいに めだまをくりぬいてみせたところで
わたしの瞳は ルビィでもサファイヤでもないんだもの

でもあなた わたしの瞳をのぞきこむね
いくどもいくども のぞきこむね
天啓のように
わたしこれでいいんだって
わたしこれがいいんだって
あなただけが おしえる
恒星よりもたしかな きらめきでもって

わたしおなじこと できるかな
わたしこれでいいんだって
わたしこれがいいんだって
わたしあなたがいいんだって
いちばん

わたしだけが
あなたにつたえつづけても いいのかな
そのためのまなざし
そのためのささやき
そのためのぬくもり

わたしがあなたにあげられるものなんて
そんなものよ ほんとに
でもあなたもおんなじなのよね そういえば

たがいの輪郭にくるまれた
かたちのないおくりものたち
ねえ どうかわたしたち 
くりかえしてね
時の音楽がなりやむまで 
いいえずっとずっと
あなたにさしだす 
あなたからうけとめる

忘れないでね
忘れないから















































0061 ヨ
http://y0.kits.ne.jp/~sk52/y/poe/
マーチ
どんなに口惜しいケンカをしても良し
腹がたってあの人の背がリビングから消えた途端
ムスくれた口元が勝手に歪み
目頭に火がついたように熱くなり
涙がホトホトと湧いても良し
耳と胸に高鳴る鼓動
そのリズムが2人のマーチだと私は知っている
きっとリビングの先
多分トイレか玄関の外
煙草の買い置きならあるというのに
もしくはコンビニに向う道を歩きつつ
眉間か額に深い皺を寄せ或いは真っ青の無表情で
あの人も後悔と自己嫌悪割ることのムカっ腹を抱え込み
2人のマーチを聞きながら
1人涙している筈なのだ
(万が一、私より早く目の前で泣かれた場合は御愛嬌)

私の前に映るのは
あの人という容器をした私以外であるはずは無い
そう高慢に勝どきを上げる
それを祝福する為の1日
耳と胸にこだまする2人のマーチは
あらゆる者に讃えられ
どれにも似ていない独特のリズムを刻みだす
あの人の方が恍惚とリズムを噛み締めている
私の容器は
あの人で満ちているからすぐに分る
そんな自信と慈しみを手に

どんなに厳しいあの人の顔を見たとしても
どんなに切ない寂しさに動けなくなっても
あの人と名付いた手を胸に当て
私という目をしっかりと見つめ返し
互いの耳で思いだせればと
ただ、それだけを、誓いあえれば

どんなにくやしいケンカをしても良し
全て2人のリズムの元ではマーチ





0066 藤咲すみれ
Now and Future
私には見えない未来がある
現在大学二年生
人生山あれば谷もある
でも人生ってうまくいってるんだって
感じたこのごろ
でもやっぱり見えない未来もある

見てしまった友人もいるけど
自分に置き換えることはできない
幸か不幸かわからない

私には見えない未来
でもあなたは今いる現在

10代の終わり、未来は果てしないと
感じたこのごろ

あなたに捧げる言葉

あなたに幸あれ

あなたの未来は光の中



































000a 宮前のん(みやさきのん)
nobu@eb.mbn.or.jp
http://plaza5.mbn.or.jp/~mae_nobuko/
動物病院の夜


深夜の動物病院はひっそりとして
廊下を歩く靴の音さえ遠慮がちに響く

「寝台車はいりません、先生。私が背負って連れて帰ります」

涙声でキッパリと言う老いたダルメシアン

てきぱきと荷物をまとめる傍らには
彼の伴侶が眠るように横たわる

一番好きだったチョッキを着せられて
両耳にピンクのリボンを結んだ彼女を
そっと毛布でくるんで抱き上げる

もしもの時
私の家族はきっと事務的で
決して私を抱いて帰ったりはしないだろう

皺だらけの頬にシミだらけの足を添えて
じっと目を閉じて抱き合っているこの二匹の間に
かつてどんな夢が生まれては過ぎたのか


優しい微笑みを浮かべる彼女をフラフラと背負って
病院の裏口から出ていく彼を見送ったあと
なにか忘れ物をしたような気持ちになって私は
しばらく澄んだ夜空を見上げていた






000b 佐々宝砂
この広い館の無数の扉
あなたがたは
名づけられないものをたずさえています

この広い館には
数え切れぬほどの見知らぬ部屋があって
その部屋のすべてに
封じられたままの箱がおいてありますが
あなたがたが
その胸に大切にたずさえているそれは
すべての扉をあけるでしょう
すべての箱をひらくでしょう

でも

あなたがたが
その手に握りしめているのは鍵ではありません
それは封をこじあけるものではなく
自らすべてをひらくもの

それは風のようにとらえきれず逃げ
それはくすのきのように高く空に伸び
それは流れる水のように優しくしかし時に人を呑み
それはどこにでも偏在ししかし目で見ることはできない

それは贈ることによって贈られるものではなく
贈られることによって贈り返すものでもなく
しかし確かにどこか高い場所からの贈りもの

私たちはそれを探し続けています
この広い館
奥にゆくほど深く豊かになってゆく
いくつ扉をくぐってもまだまだ奥に扉がある
タマネギめいた奇妙に広大なこの館のどこかに
あなたがたと同じく私たちもいて
あなたがたと同じくそれを胸に抱きしめて
でも青い鳥を探すチルチルミチルのように
それをすでに得ているとは気づかずに

ことによると
あなたがたも気づいてはいないのかもしれませんが
気づかずともよいのです
名づけずともよいのです

それでもそれは
この広い館の無数の扉を
いとも簡単にひらいてゆくのですから





000c 芳賀 梨花子
http://www.stupidrika.com/hej+truelove/
しあわせのかたち
しあわせってなんだろう

しあわせってまあるいのかな

それとも、さんかく、しかく

まんまるだといいなぁ

さんかくも、しかくも

ぶつかると

ちょっといたそうだもん

まんまるであってほしいなぁ

あ、でも、まんまるはころころころがってしまうから

ちょっと、かどがあるぐらいのほうがいいのかも

きっと、そこでまっていてくれるようなきがするもん

ねぇ、あなた

あたしはしかくくってさんかくで

ときにはまんまるになっちゃうとおもうから

あなたも

おんなじかたちでいることないよ

あなたがころころころがっていったら

わたしせきとめるし

あなたがさんかくになってしまったら

かどをなでてやわらかくしてあげる

あなたがましかくになって

みうごきとれなくなってしまったら

わたし、うんとこどっこいしょって

あなたのせなかをおすよ

やがてふたつのかたちがいっこになって

いっこだとおもったら

さんこになったり

よんこになったり

もしかしてななこになったりするかもね

でも、わたしはなんこでもだいじょうぶ

だって、わたし、ちからもちになるんだもん

しあわせってそういうことなんだって

わたし、おもうんだもん












2002/10/15発行

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(編集 遠野青嵐)

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