CopyRights2002(c)蘭の会 AllrightsReserved




















6月のプラズマ  時雨  僕の恋路  「誰が彼女を殺したか」  
雨はすべての  雨の吃音  洗濯をしよう  こころよわりの  
舞踏への誘い  なみだ  予感  帰り道にて  
  雨乞い  雨の日のお部屋  ティアドロップ  
かみなりさまのなみだ  さぎりの都  「文句垂れ」  
豆腐小僧のレーゾンデートル  行進曲  

















0001 はやかわあやね
http://homepage2.nifty.com/sub_express/

6月のプラズマ
初夏の匂いがあちらこちらで萌え始め
春はもう遠い日射しの向こうに消えてしまった
夏の夕暮れが近づく前には
きっと6月の雨が
すべてを洗い流してくれるだろう

すべては終ってしまった
あの日から数えて
幾度眠れぬ夜を過ごしたことだろう
けれどももう
そんなことで頭を煩わす必要など何処にもなければ
嘆いたりため息をついて
窓の向こうを仰ぎ見る必要ももう何処にもないのだ


遠い向こうから何処かの飼い犬が鳴いている
哀しそうでもあり
嬉しそうでもあるあの声は
鏡に映った私の匂いでもあるかもしれない
屈折している光線の影に
揺れているプラズマは
もう何も見る必要もなければ
何を描こうとしているのか
思い倦ねてみる理由もないわけだ


理科室から溢(こぼ)れてくるあの溶液の色は
何色だったかさえ定かではないが
それでも光合成を果たしたと見える光りの屑は
いつだってそのカーテンの陰に見え隠れしている



6月の雨は
いつだってその空模様を映してくれるわけではない
そうしていつだってその空から降って来る雨は
私のものであるとは限らないのだ


すべてを清めれば迫りくる7月(なながつ)は
どんな時にもその空に
満天の星を映し出し
夜空の風景を垣間見せてくれることを
決して知りはしないだろう



--











0002 yoyo
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ango/6455/

時雨
いつもの川岸
いつもの時刻
しとしとと時雨滴るる
僅かに鼓動の重なる日々

時が熟すのを待ちわびて
草木の露は沁みいられ
裏腹にすれ違う轡の痕跡に
恋の呪縛さえ感じられ

色香は日増しに落ちゆくけれど
満開の紫陽花の咲く心の波紋
あなたを待つ天の川の河辺利で
つなぐ橋かからんこと祈る悠暮











0005 菟野くうぴい
http://www3.ocn.ne.jp/~a98185/top.html

僕の恋路
キミは傘をささずに道ばたに立ちつくしていた
指先に力無く
垂れ下がる煙草には火が無かった
髪の曲線をたどる雨粒の群が
顔を透明なセロファンで隠したみたいにして

キミが泣いているのか
笑っているのか
分からなくなる


僕はというと
傘を差したままキミを見つめて
冷たくなった足下を動かせるはずもなく
声をかける訳でもなく

車道を過ぎた車が
水たまりをはねた



よけられなくて  僕らは濡れた
スローモーションで落ちる煙草
しずく
なみだ、だと思う
唇が歪んで
僕の両目は卑屈な同情を指し示すような
そんな風に見せかけたと思う

「あいつが死んだんだ」



不道徳にも
俯いて垂れ下がる長い髪の束に
黒い束に巻き付かれる細い首筋に触れて
ふしだらに口づけをするシュミレーション

それとは別の

傘に入れて
手を引いて


「そうか。」
何処かへ連れていく僕の姿


その握り締めた手に
力一杯の“恋してる”を込めた











0007 愛萌

「誰が彼女を殺したか」



空っぽの鳥かご
開けっぱなしの窓辺



鳥は飛び立たない
自由な世界へ行くだけの
力を持っていて
なお
部屋の中
静かに佇んでいる


鳥は泣いている
流れる雫は
窓を伝って
映る景色を歪ませた


醜いのは自分
弱いのは自分

理由を探して
生きてゆくことに
鳥は魅力を感じない



明日も変わらぬ安息を
永久に褪せない輝きを

求めて
けれど
恐ろしくて


外には雨が降り続いていると

手を差し伸べた
あたたかな人に
嘘をついた



傷も痛みも苦しみも
充分過ぎるほど味わった
だから
もう二度と
誰かのために
同じ思いを繰り返すことが

鳥にはどうしてもできなかった



空っぽの鳥かご
開けっぱなしの窓辺

片付いた部屋は
唯一の逃げ場所


空を飛べる翼は
皆と同じように
そこにあるのに

鳥は決して飛び立たない



外には雨が降っているから


濡れた羽は
役に立たない


そうして


鳥は泣きながら
静かに
独り
息をしながら

あたたかな人に
背中を向ける



雨が止む日はやって来ない











0013 朋田菜花
http://www.asahi-net.or.jp/~sz4y-ogm/

雨はすべての
    降りしきる雨

    雨、あめ、雨、

    窓辺を濡らし、木々を濡らし

    遠くの屋根も濡らし、都市を濡らし

    降りしきる雨

    雨、あめ、雨‥‥



    雨はすべての迷いを濡らす

    灰色の土を被った

    日々の雑事雑念が

    生きることの意味をも覆い隠してしまうから

    人は大切な曲がり角さえ悩まずに素通りしてしまう

    だから

    雨はすべての迷いを濡らす

    手足に濡れて絡み着く執拗な迷いが

    都市は安全な森ではなく死の匂いのするジャングルだと

    きっとあなたに思い出させてくれる


    雨はすべての幸福を濡らす

    たやすく手に入れられる

    出来合いの充足で

    イミテーションの生活に慣れきってしまったから

    人は本当に捜していたものの価値さえ見失ってしまう

    だから

    雨はすべての幸福を濡らす

    偽物のエクスタシーが濡れて醜悪に変容するとき

    真実の幸福はみずみずしく輝きを放ちながら

    きっとあなたに呼び掛けてくれる



    雨はすべての命を濡らす

    あわただしく過ぎていく時間の中で

    思いやりも優しさも

    友達の悲しみを思いやるゆとりさえ

    人はどこかに置き忘れ自分のことさえ見失っていく

    だから

    雨はすべての命を濡らす

    頬をつたう冷たいしずくが

    干涸らびた心臓を濡らし、萎縮した肢体を癒すとき

    この地上に生まれてきた理由を

    人は"何処"から生まれ

    "何処"へ向かって歩き続ける旅人なのかを

    きっとあなたに教えてくれる



    雨はすべての命を濡らし

    雨はすべての渇いた魂を潤し

    あなたを求めている誰かに

    そして、誰かを必要としているあなた自身に

    いつか必ず気付かせてくれる

    いつしかかならず導いてくれる‥‥



   雨はすべての大地を濡らし

   雨はすべての海洋を濡らし

   雨はすべての‥‥ 











0016 渦巻二三五

雨の吃音
 雨、戸、窓、
 目の、瑪瑙、脳の、舌、他、多々、下、祟る、したたる、
 吐、屠、窓、啼く、咎め、泣く、とめどなく、無く、櫛、
 失くし。
 苦笑、故障、瀟々、
 少し、晴れ、はれあがる、腫れ、
 剥がす、吐かす、滓、数、課す、
 雨、飴、病まず、いや増す、
 うとましさ。
 増し、憂し、産め、梅、埋め、膿み、
 打つ。
 肉、逝く、染み、にくしみ、現し身、刺す、
 閉ざす、翳す、堅く、口、血、土地、
 戸、窓、胴、とまどう、
 徒歩、友、家、癒えず、言えず、未だ、
 窓。

 「こころして」
   ころして
  こうころして
  ころころして
    こうして
    こうじて

 あめ、世、夜、予後、誤、よごれ、良かれ、
 予感、枯れ、駆られ、狩られ、蹴られ、
 霰、茜、鐘、
 撞き、つぎ、注ぎ、継ぎ、月の、野の、
 兎。
 跳び、扉、日、落、飽く、ひらく、墜落、追憶、
 奥、置く、遠く、尊く、疎く、徳、口説く、毒、ふ。
 太く、解く、輪、吾、われ、童、笑う、洗う、あの、
 雨。











0019 NARUKO
http://www.hbs.ne.jp/home/poppo/

洗濯をしよう
洗濯をしよう
雨が降っていても
ベランダに干せば大丈夫だから
明日履く靴下は
お気に入りでないと
いつもの調子がでないから
踵のところも念入りに
洗濯をしよう


洗濯をしよう
雷が鳴っていても
ベランダに落ちるって話は聞いたことないから
明日着るシャツは
明日のラッキーカラーでないと
運が落ちるとイヤだから
エリの汚れも念入りに
洗濯をしよう


メールを何度も読み返す
指の先までクスクス笑う
ねえ、君が
何色のシャツでやってくるか
当ててみよっか?


洗濯をしよう
雨が降っていても
明日はやってくるはずだから
太陽が昇るだけが
明日じゃないから
雨が降っていても
雨音は弾んでいるから
朝になったら
念入りにアイロンをかければいいから
シャボンの泡も笑っているから
洗濯をしよう


ねえ、君が
逢ったら最初になんていうか
当ててみよっか?











0024 沼谷香澄
http://homepage2.nifty.com/swampland/

こころよわりの

雨はいいです堂々とシャッターに囲った昼を沈めてゆける


 冬だった
北風を避けて枯葉の溝の底うずくまってた子猫に、猫に


 東にいる
肌寒く湿った壁よ輪郭のゆるい姿に立ってもいいか


 西を思う
ざらざらと熱く乾いた山肌に降る霧雨のこころよわりの



言い張ってみても仕方がないのだがレッドロビンの新芽が白い



植えたばかりに違いない小手毬と皐月の上も下も雨だれ



花を食う猫の揺れてる縞模様こころもとないうすいつめたい











0035 遠野青嵐
http://webmania.jp/~seiran/

舞踏への誘い
今年は異常気象らしい 6月になっても雨が降ると言う。

私は危惧を抱いて
私は箱の中に投げ捨てていたフィルムを抱いて
走れ走れと
喘ぐ
目指そうとする
息が途切れて間に合わない

6月だ
私を今すぐ絞め殺してくれ

踊りはどうした
雨の中で息もつけずにいる人々は野次る
しずくのスパンコール
スパンコールにしずく
滴らせて言う

音楽ならいい
燃えさかる炎だった、夜の木々の枝先を彩る
音楽ならいい
鼓膜を裂く呼び声と
突き刺す
クラップ
何が他に入りこめると言うのか

6月に雨が降るとはついぞなかったはずだ
駝鳥の羽根が扇から抜けて 道端に捨てられている
模造細工の記憶の真珠が 道端に捨てられている
金のモールか? こんな筈ではなかったと言うのか

6月だ
今すぐ
今すぐ

けれども扉はいけない
回転している
毎日を景色の縞模様を巻きつけるだろう
けれども扉がいけない
重ねてはひらく
薄っぺらい派手な渦巻き模様の包み紙が
細い金色の丸められたリボンと
甘美だったのは何故なのか

ビラーディー

6月だ
今すぐ

手を叩いて
揺らして
手を上げて
踊らないのなら

6月だ
今すぐ私を絞め殺して欲しい

予告通りに降る雨になど太刀打ちできる筈はないのだ、
信じようと信じまいと
それは毎日降るのだ











0036 野中ひまり
http://hccweb1.bai.ne.jp/natural/

なみだ
雨は 一向に 止む気配がありません
赤いレインコート着た あの子が
じっと こちらを 見つめています

時間を ぼんやりにさらわれ続けるのは
なんだか 嫌になってしまって
それに あの子が 窓の向こうで
じっと こちらを 見つめているのが 
苦しくてしかたなく

わたしは 傘を置いてきぼりにして
外へ出ました

わたしは あの子の隣りに立ち
手を 繋ぎました

あの子は 嬉しそうに
わたしの顔を 見ています

雨は 本当は
優しいものだと
知りました











0037 とかげ

予感
そろそろ雨が来る、とおもう

肌のしめりけや
耳元をゆく風の音
そして土のにおいのする空気に

雨のふるころ
わたしはひとつの動物で
この腕はあまりにしろくて力もないが
たしかに動物なのだ、と思っては覚悟する
野生にはおきてというものがあるので


雨のふる夜はきまってほの赤い

この世に存在することになる少し前
ざあざあと音のするほの赤いくらやみの中
自分がヒトという動物であることに
そのうすぐらい赤さがヒトの血の色であることに
わたしは気づいていなかった

なつかしさなど感じることもないが
きっとわたしの中もほの赤いのだろうから
ときどき思い出さなくてはいけない
女のいのちはほの赤く
その温度をながいこと忘れたままでいる


遠く、かみなりがひびいている

雨が来る、とおもって
窓から外をながめてもいなづまは見えないが
ほの赤い夜空の下
雨がひそかに近づいていることを知る

朝にはすべておわるだろう
わたしは濡れることもない

雨は外も内もなく降って
あとにはきまじめな顔をした水垢が
ぽつりとのこされるだけ











0043 鈴川ゆかり
http://plaza.rakuten.co.jp/niveau/

帰り道にて
赤いランドセルに
黄色い雨よけカバーは カッコ悪いし
いくら丁寧にかけても しまいには
ノートやら教科書やらに 水が滲んでしまう
黄色い傘をさして
みんなで細い道 押しあいへしあい
こんなにいっぱい黄色なのに
ばしゃり 車の人は
いつも意地悪よ

早くお家に着かないかな
おかあさんが えらかったねつめたかったねって
タオルと新しい靴下を持ってきてくれるの
おかあさん それでおとうさんが
ほれ見い、お隣さんの鮎釣りのおすそ分けだって
アイスボックスいっぱいの生臭いおさかなを
見せてくれるの 夕ごはん
早く食べたいな
ばしゃり
あーあ長靴が
水たまりを踏んでドロドロ
ばしゃばしゃり
ばしゃばしゃ、ばしゃばしゃばしゃ
いつもより川が濁って
隣町までさらわれてしまいそう
そういえば おばあちゃんが教えてくれた
むかしむかし 丁度このあたりで
おじいちゃんが死んだ
こんな雨の降る日に
突っ込んできた車にはねられて
そのまま濁流に
呑まれた






(注)「えらかった」→方言。
    疲れた、しんどかったの意味。     


 











0045 雪柳
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=yukiwatari



改札を出ると 雨
霧のように 体に纏わりつく
慰めてくれているような…
行き交う人はみな急ぎ足
独り ゆっくりと ゆっくりと
雨に 身を委ねる

仰ぎ見る空は どんよりと垂れ込めて
まるで 今の私
霧が雫となって 頬を伝う
内から溢れる想いと共に

暖かいわ…
雨が… こんなに優しいなんて











0051 Ray
http://www40.tok2.com/home/stgeorgeutahusa/

雨乞い
濡れたいと
乾いた空に
手を伸ばす
つかめるようで
つかめぬようで

氷塊が
水滴になり
地に落ちる
届かぬものは
雨にもなれず











0053 鹿嶋里緒
http://page.freett.com/riosan/

雨の日のお部屋
傘がないから雨の日は部屋の中
風が強いから思わずうずくまる
寒気がするから毛布にくるまる
なぜか悲しいから上を向く

煙草は私に依存しない
耳をふさいでも聞こえる音
繰り返される映像は不鮮明

天気予報を見ないから
気まぐれ太陽にそそのかされ
降られて戻ってくる部屋の中











0060 峰里えり
http://isweb26.infoseek.co.jp/art/tohne/

ティアドロップ
まあるい形のいい粒が
さらさら音をたてて転がってゆくよ
床についたらはじけて
いっそう高らかにうたうよ

さよなら
さよなら
さよならの雨が
きれいな星なのに
どこからか降るよ

なめたら甘い
イチゴみたいに
夏みかんみたいに
桑の実みたいに
ココアみたいに

一緒に過ごした時間の数だけ
ちがう味がする

鈴の音のように笑ってゆくよ
過ぎたことはなんでも美しいから
ありがとうって
卑屈になるからいわなかったよ

ころころ
転がってこぼれて
形はなにひとつ残ってはくれなかったよ

熱くも冷たくもなく
口の中で最後の一粒が
あとかたもなく











0062 みまにや
http://www2.odn.ne.jp/~haf82250/

かみなりさまのなみだ
死んだコトリが恋しくて
かみなりさまは 
もろもろ 泣いた

あふれる
あふれだす
あふれだす あふれる

かみなりさまのなみだ

かなしい
かなしい
雨となって
コトリを埋めた土面のあたりに

ぽろ ぽろ ぽろり

降りそそいだ

しばらくしてから
かみなりさまは 
お顔をたたいて  
ふるふる と わらった

そして

6月の空も 
かみなりさまのふうわりを受けて

すこしだけ 
わらった











0064 紺

さぎりの都

たゆたうのは霧
ながれるのは雨

蒼ざめた舗道を通り過ぎる者がいます
夜明け前のさぎりの都
心の底で思い出の曲が流れている時
思わず涙がこぼれてしまうような
かすかな侘びしさに支配された都です

いつも もうこれっきり会えないのでしょうと
口には出さぬままの逢瀬
声を笑顔をやきつけたくとも 霧
たゆたう霧が 貴方を覆い 
ふたりでいても 迷子のまま

誰もが住所不定 誰もが身元不明
全ては不特定多数   恋だけが
恋だけが  恋だけが

はっきりとした残酷です
はっきりとした残酷です


さぎりの都は 一日に一瞬だけ光が射します
そしてティーカップの縁に
ダイヤモンドより輝く虹の光が煌めく

永遠の ではないからこそ
切なく輝く光が

その一瞬後 陽は翳り
柔らかな雨が無音に降りながら
細かく細かくなって また霧となります
包み込むような 霧に


あなたはいま どこに
いるのですか


あなたにあえない私は
誰 ですか


そしてここは












000a のん
http://plaza5.mbn.or.jp/~mae_nobuko/

「文句垂れ」
田舎から種を送ってきたので
植木鉢に植えたら二葉が出て
花が咲いたらそれは母さんだった
母さんは相変わらずブツブツと
テレビを見ながら文句を言っている

 この俳優は演技が下手なんじゃないの
 もっと他に面白い番組はないの
 あんたそこ座ったら見えにくいじゃないの
 気がきかんね茶ぐらい入れたらどうなの

鬱陶しいので植木鉢ごと
母さんをベランダに放り出して
カーテンを引いてしまった
それでもまだブツブツと雨垂れのように
遅くまで文句は聞こえていた

朝になってカーテンを開けたら
なんと霜が降りている
慌ててベランダを見渡すと
母さんが冷たく転がっていた
おい脅かすなよ大丈夫なんだろうと声をかけると
青ざめた母さんは弱々しく口を開いて


気がきかんね温室くらい買ったらどうなの


なあ 母さん
もっと景気良く怒鳴ってくれよ
俺に茶碗でもぶつけてみろよ

いつまでもブツブツと
鬱陶しい文句垂れの母さんで
いてくれよ


そうしたら明日

新しいヒーター付きの植木鉢を買ってやるよ











000b 佐々宝砂
http://www2u.biglobe.ne.jp/~sasah/

豆腐小僧のレーゾンデートル
彼は豪雨が好きでない
彼が好きなのは
ごくごく静かに降る雨で
こぬか雨きりさめ煙る雨
そんな雨の日には
きっと

静かな林の路傍に彼は立つ
水を含む苔の上に足をおく
草鞋履きなので
下からじんわりと水がしみてくる
笠も蓑もしっとりと濡れ
蓑火が光って落ちてゆく
暗い林間に雨の匂いが充ちる

捧げ持った小さな皿の上には
真っ白な豆腐
ネギとショウガをきちんと添えて

誰のための豆腐なのか
何のために自分があるか
彼は知らない
捧げ持つ豆腐の味さえ知らない

思想もなく理想もなく大義名分もなく

それでも
静かに雨降る暗い日には
きっと

静かに雨が降る
こぬか雨きりさめ煙る雨が降る
それだけが
豆腐小僧のレーゾンデートルで
だからと言って彼は特に悩みもせず
ひっそりと雨に濡れて
豆腐を捧げ持ち路傍に立つ











000c 芳賀 梨花子
http://www.stupidrika.com/hej+truelove/

行進曲
息子が立ち上がる息子が歩く
息子さんは手をつながずに歩く
産毛がみっしりと夢を見る
わたしは目をふせて産毛をなぜる

息子さんの背が伸びていく
雲をつかむ勢いで伸びていく
雨が降り出すのはいつだろう

息子さんが歩いてく
黄色い傘さした後姿遠のいてく
長靴が連れてくみずたまり

とったんとったんとったんたん
ととたんととたんあめがふる
たんたんたんたんあるいてく
息子さんが歩いてく















2002/6/15発行

推奨環境IE5.5以上文字サイズ最小

詩集の感想などGuestBook
かきこしてくださいね♪
ダウンロードは
サイトのないのほんだなよりできます

[ご注意]

著作権は作者に帰属する
無断転載お断り
詳細は蘭の会にお問い合わせください
⇒蘭の会へ連絡する

グラフィック製作 芳賀梨花子)