
| 0001 はやかわあやね |
| http://homepage2.nifty.com/sub_express/ |
| 求める |
おかあさんがあたしの髪
なでながら言ったの
あやちゃん
おまえの髪は黒いねって
あたしの髪はあかいんだよ
なんどそう言ってもおかあさんは笑うばかり
だけどあたし
あかい髪がいいのに
どうしてあかい髪じゃいけないの?
なんどそう聞いてもおかあさんは答えてくれない
あかいランドセルにあかい靴
だから髪の毛だって赤色になりたいのに
小さな白いソックスが
その縁からレースをゆらしている
あかい靴の縁取りには
白いレースが丁度いいのに
紺色の水玉ワンピース
まだ着れるよ
ねぇおかあさん
おかあさんの好きな色だよ
あやちゃん、まだ大きくなれるよ
だから
ねぇ
返事してよ
おかあさん
| 0005 菟野くうぴい |
| http://kagoshima.cool.ne.jp/kupi_usagino/top.htm |
| 変心 |
コンビニに出かけた。
大したことはない。ちょっとしたものを買いに出かけただけだから。
古くなったミュールを素足に纏わせ
サンダルのごとく足音をならす。
二月の夜は空気が凍る。
自動ドアを困らせたくて、
わざとセンサーの許容範囲から遠ざけて自分の身を置く。
予想せずに開くのがつまらなく。
店員のやけに威勢のいい声が 睡魔を弾いて追い出した。
私の頭は今日は汚い。
汚い。一日でも洗髪しなければ
脂でべったりと のっそりと重くなり
私のにおいで囲まれる。
どうして三日も洗わないかと言えば
その数日前に
同じシャンプー使用者と別離してしまったから。
あのシャンプーも
あのリンスも
あのトリートメントも
アノヒト
まだ、私のそばで触れていてくれるようで。
妄想の果てにいじった髪が
私をコンビニの一区画にへと舞い戻らせる。
「そうだ、シャンプーを買おう。」
数回の夜を久しぶりに一人で過ごした。
それが私を孤独から自由へと誘い始めて、そうして
「1,285円になりまぁす。」
久しぶりに見た
男という存在に
心がときめいた。
「世の中、かっこいいヒトたくさんいるしぃ〜?」
| 007 愛萌 |
| 「私の髪、いとおしい手」 |
引きずるように
私の髪を
誰かがつかむ
根元から
毛先まで
痺れるような
痛みが走って
それでも
私は
動けない
絞り出すように
投げた
愛の言葉
触れれば
切れそうなほど
冷たい情熱
一瞬に燃えて
尽きてしまった
永遠
けれど私は
優しさよりも
誰かのくれた
痛みを選んだ
見えないぬくもりと
滲む熱
確かな何かを
手に入れた
そんな気がして
嬉しかった
求めれば
必ず還ってくる
想い
火のように
強い
意識と傷
それだけで
他には何も
そして唐突に
引き千切られて
私の額が
赤く染まる
そのまま
誰かの手の中に
女の命が残るなら
嗚呼
それでもいいかと
私は笑った
| 0010 瑞哉 |
| http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/7237/ |
| 温室 |
日だまりの中でぽかぽか
私は幸せだと思ってた
小さな頃から伸ばし続けた
髪が長かった
切るのは嫌だった
私の一部なのにゴミ箱に
簡単に捨てられるみたい
髪を結ってくれたのはママ
私の髪を愛おしそうに
見つめて 触って
ママのお人形だった私
愛されてると思ってた私
日だまりの中でぽかぽか
私は幸せだと思ってた
長い髪がなくなると
私はママに愛されないと
怖くて
私の世界だったのはママ
日だまりをくれたのはママ
気づいてしまったのはいつか知らない
どうしてか知らない
私の心にいた私
お人形は嫌だと
叫んでしまった
日だまりは
私を閉じ込める温室だった
髪は
私をゆるく縛りつける縄だった
気づいてしまった
私は密かに
私の一部を捨てようと思った
| 0015 丘梨衣菜 |
| すぐ食べられます |
ときおり混じる
強い風がほこりを吹き付ける
急に
小さな不安が肺の中を埋める
かいさつで定期をみせたかしら?
記憶にない
電車から降りた
ような気はする
それからかいだんをのぼっていつもの場所のかいさつぐちにむかってなにげなく
歩いた
たぶん
駅からでて信号ふたつ過ぎても
誰もわたしを追いかけてこない
きっとわたしは定期をみせたかみせるふりをしてそれらしくかばんにてをふれ
駅員は見た
はず
気がつくと記憶がなくなっている
朝おきてかいしゃに行きそつなくしごとをこなしていえに帰りおふろにはいってねる夜
毎日くりかえしおなじことそして休日にはきゅうじつにはきゅうじつには
なにをしたっけ?
昨夜のよるごはん
なにたべたっけ?
ぬるま湯につかりすぎ
ふやけてのびきった生活
柔軟性はあるけれど
つつけばもろくくずれ
誰かのせいだとさわぎだす
あるつはいまーなのちほうしょうなの
この話きのうしなかったっけ?それともでじゃぶー?
わたしふとったの。だいえっとするの。おやつたべないの。
毎週だれかがせんげんをする。ふとってないよ。ちょうどいいよ。やせすぎだよ。
それがまなーとえちけっと。やめられないちょこれーと。
ぶちょーとうけつけのひだりがわの子がらぶほてるにはいっていくの見たんだって。
やっぱりうわさはほんとうだったんだ。ところでだれがみたの。だれからきいたの。
でどころはたずねないのがえちけっと。やめられないみつのあじ。
くだらないおしゃべり。おなじはなし何回めでもあたらしいはっけんとおどろき。
だってきいてないの。みぎからひだりなの。
まいあさ会社の正面ドアにすいこまれ
ゆうがた ペッ とはきだされる
ああつかれた
まだなにもしてない
じかんがないからなにもできない
わたしはのびてゆく
どんどんたべられなくなる
あふれるわかいいのち
うずもれ
ふやかされ
かいたいされる
そして流れにのみこまれたまま
ときおり混じるものに
ため息ばかり
| 0016渦巻二三五 |
| 髪七首 |
石鹸についてはなれぬ髪の毛のただひとすじに爪を立てをり
木枯にわき立つ髪をおさへるは飛び立つことを絶ちし天女ら
なにから身をひそめむとして屈む吾か茨に髪をからめとられつ
おとうとの純潔思ふかつてわが枕辺に髪踏みし素足を
風浴びし髪梳きをれば行く春に無為の花粉をこぼしてゐるか
絡み合ふ髪解きながら忘れしはゆふべの夢の風のことなど
春昼の人形われは指ほそきおとこに髪を洗はせてをり
| 0019 NARUKO |
| http://www.hbs.ne.jp/home/poppo/ |
| 髪を切ろうかと |
髪を切ろうかと思う
あれから時間を止めてしまいたくて
伸ばしてたんだ ずっと
髪を切ってしまおうかと思う
短くするのはシャンプーがメンドクサイから
シャワーで流す水がもったいないから
すごく短くして
思いっきり切り落として
毛先に残ってたあの想い出を
美容院のおねいさんが
いつもの出来事のように
さっさと掃いて集めて
捨ててしまうところを見たなら
想い出すこともないかもしれない
髪を切ろうかと思う
少しでもこの残り香が届くように伸ばしてた
この思いつめた想いが近頃メンドクサイから
髪を切ってしまおうかと思う
毎晩洗い流すのにそれでも残る
あの感触が呼び戻されないように
うんとうんと短くするんだ
ほんの10cmのところですれ違っても
君の肩に髪が触れないように
君が私だとまったく気づかないように
私が目で追ってしまわないように
髪を切ろうかと思う
髪を切ってしまおうかと思う
そう思いながら覗く鏡には
いつにもまして艶のある髪が
胸の呼吸にあわせるように
なだらかに揺れる
毛先を指に巻きつけながら
切ってしまうのは
暖かくなってからでも遅くないから
って、
つぶやいて
もう
幾日たったのだろう
| 0024沼谷香澄 |
| http://homepage2.nifty.com/swampland/ |
| すじすじ |
枕に
髪の毛がついている
寝返りを打つと反対側にもついている
ふうと溜息をついてほほを枕にうずめると瞼に刺さる
頭を起こして拾う五本
枕の向こうにも落ちている
手を伸ばして拾う四本
ふとんの向こうにも落ちている
ふとんに座って手を伸ばし掻き集める八本
枕をのけるとふとんの上に散っている
手のひらで掻く掻いても集まらない指で拾う十一本
集めた髪の毛は左手に乗せ落としまた拾い今度は落とさないように握り締める
ごみ箱はどこだ部屋の隅窓の下だ遠いあとから捨てよう髪の毛
左手をぐうの形にしたまま四つんばいで髪の毛を集める
畳の上にすじすじすじすじ
すじすじすじ
すじ
掻き集める拾う握る
すじすじかゆい
かゆい
かゆい
ふとんと畳の境界に斜めにぺたんとお尻を下ろす
ごみばこ
ごみばこ
てをのばす
とれた
すてた
ひっくりかえった
ちらばった
掃除機はどこだ廊下の隅窓の下だ遠いあとから取ってこよう
すじすじを両手でかきあつめてまたごみ箱に入れる
畳の上髪の毛が残っている
四本
ごみ箱の中髪の毛が集まっている
すじすじ
ごみ箱を持って畳の上の髪の毛を拾い集めて立ち上がる
部屋の外廊下の隅に髪の毛が髪の毛が髪の毛が
髪の毛が
膝を突いてごみ箱を置いて両手のひらでかき集める
すじすじ
太い茶色いこれはわたし細い黒いこれはあのひと
長いこれは昔の
短いこれは先月切った前髪の
ごみ箱の底に盛り上がるすじすじ
かたまらない
よつんばいになったまま洗面所まで髪の毛かき集めて進む
すじすじぱさぱさぱさ
ぱさぱさ
洗面台の上にはりついた2本
べたべた指でこする取れない取れない取れない
べたべた洗面ボールの中に張り付いた5本
べたべたもういい流す上のも一緒に
べたべた流れが悪い排水口の網
べたべた取り出す
そこにすんでいるたくさんの
これはなに
もう
手が
出せない
たすけて。
たすける。
天は自ら助くるものを助く
気合一発指を髪の毛の固まりに押し付けて取り除く
捨てる
ごみ箱にたまった髪の毛はティッシュで包んでペダルペールの奥深く突っ込む
除菌液体ハンドソープで手を洗う
ていねいに
ていねいに
ていねいに
冷えた指あたためながら溜息一つふとんに戻ると
枕に髪の毛がついている
| 0028 阿麻 |
| http://users.goo.ne.jp/yumugen/ |
| 街に降る雨 |
大雨に打たれた 全身は
ただ
睦言のちからなさを 磁石のように感じ取り
追いつめられてく きれい事は
全部 洗われ 砕かれ
ことごとく 嘘に、なる。
髪の先から細かな・・・細かな白いしずくが
絶え間も無く こぼれ落ちながら
もの言いたげなのに いたわりを、殺して
鼓動を止めたきり、天をあおぐの
やめたらたちまち
ずぶぬれの魂が
影も形も失いそうで。
手馴れた冷たさで
きょうも街に降る とても白い雨
あしたの天気は ベールの向こう
| 0030 宵薫 |
| http://users.goo.ne.jp/dubious/ |
| 無題 |
だから
私の為に泣いてください
貴方のその薄く柔らかい頬に
少し零れた滴を舐めていたいのです
そんな
言葉などというものは
私には少し難しすぎてしまって
貴方と声に出すことすら
出来ずにいるのですから
伸びてしまった髪の一筋が
例えば触れ合うための距離だったとしても
そんなことを知りたくはないのです 今は
できることなら
もう一度
もう一度私の為に泣いてください
| 0032 山崎 みふゆ |
| http://www5d.biglobe.ne.jp/~mihuyu |
| あたしのまま |
正門を出た その時
吹き抜けた風に気を取られて
振り返った
あの頃と変わらない
くすんだ色の校舎
寒そうに佇む桜たち
変わってしまったのは あたし
あの頃 背中で波打ってた髪は
もう半分もないというのに
風の吹き抜けた その一瞬
着てもいない 制服が揺れて
長く伸ばした髪が なびいた
懐かしい声が
どこからか響いて
不思議なデジャヴ
思わず触れた髪は
やっぱり 今のあたしのもの
だけど
冬の曇り空仰いで
髪を揺らす
その感触は確かにあの頃のもので
軽く風に髪をはらませながら
踵を返して 帰路につく
16才の あたしのままで
| 0036 野中ひまり |
| http://hccweb1.bai.ne.jp/natural/ |
| 髪の毛 |
時が過ぎるほど
形を変えていく記憶と
同じ分量の水を毎日やりながら
新しく生まれつづける
今まで切ってしまった髪の毛も
こっそりと
意識の底で
引き摺りながら
おばあさんになるころには
長く伸ばして
一人で眠るとき以外は
べっ甲のくしで
留めておこうと思う
わたしは
歳をとるほど
キレイになりたい
| 0037 とかげ |
| 存在すること |
いつからか
ずっとみじかいままの
わたしのかみの毛は
また
いつからか
のびることを忘れてしまったのだと
思っていた
ざあざあとふる
雨の
かみの毛をぬらしては
ほほにながれてゆくことも
わたしは気にしなくなったのだし
いつからか
道は白く
ところどころに
みずたまりだけがのこる
わたしのかみの毛は
今日ものびて
きっと明日ものびていく
そこに
なごりを残さないこと
切ればただ
はらはらと落ちてゆくこと
それから
雨がふったあとに
ぽつりぽつりとのこる
みずたまりの
ひそかにゆれること
| 0038 しおん |
| http://www.kit.hi-ho.ne.jp/pirota/ |
| キオク |
こんな日は
決まって さらさら 髪がナク
ポロ ロン ロン
風にただよう 窓の夢
ピアノは
静かに紡ぎだす
オタマジャクシがかえるところは
あの頃 あの春 優しい手
指は 静かに
髪を這う
ポロ ロン ロン
オリヅルランがゆれている
静かにピアノもないている
オタマジャクシの波にゆれながら
うえからしたへ(したからうえへ)
優しく指が
髪を這う
さ
さら
さら
こぼれる髪は
束の間 指を抱きしめて
密かに甘い蜜を出す
さ
さら
さら
さら
さ
ら
ポロ ロン ロン
あの頃の
あの指を知る髪は もういない
それでも
オリヅルランがゆれるとき
ピアノが静かに紡ぐとき
こんな日は
決まって
さらさら
髪がナク
| 0043 鈴川ゆかり |
| http://plaza.rakuten.co.jp/niveau/ |
| くる る |
おかあさん の かみの け
くる る ゆびに
からめないと
ねむれない
くる る だって
おかあさん の ほそい け
くる る わたしのひとさしゆび
ねむれない
だって
だって
なんにもつかまなかったら
ねているうちに
なにかにもしも おばけにさらわれて
わたしがひっぱられたら しまうかもしれない
おかあさんきっと
しれないよ
「 い た い 」 っ て
おきてくれるかもしれない
しれない
おかあさん
おかあさん の
ほそい くる る ほそ い くる る くる る
る
| 0045 雪柳 |
| http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=yukiwatari |
| 髪 形 |
アップにまとめた髪を下ろして
後ろめたさを シャドーに隠す
チェリーピンクを 唇に置いた
鏡の中の 私は 女
アップにまとめた 母親の私
いつもは自分で縛っている
髪形を変える
母親から 女へ 心を切り替える
まるでスイッチのように
縛っていた 自由を 開放する
隠していた 欲望を 解き放つ
ありふれた 非日常の扉を開ける
想いの風に髪を委ねて
女としての自分を取り戻す
乱れる髪は 私の心
欲望のままに 一歩を踏み出す
| 0049 吉野櫻 |
| サバト |
また髪の毛を食べている
月夜に
屋上に雲ひとつない空
物干し竿にまたがって
目だけらんらんと光り
全身長い毛で覆われて
獣が
髪を櫛けずっては
抜け毛を食べてしまう
獣は無心
迫る赤黒いクレーター
何かがあるはずの夜に
遠吠えさえしない
忘れてしまった
何を
自分の名前を
唇が
切れる
血に絡みつく
一本の長い
髪
| 0051 Ray |
| http://www40.tok2.com/home/stgeorgeutahusa/ |
| 理髪 |
手にとって
女物だと
笑ってる
毛染めに使う
ロレアルの箱
さらさらと
指の隙間を
こぼれ行く
あなたの髪は
銀の糸くず
柔らかな
耳のカーブを
カタチどり
鋏は滑る
指先動く
銀色の
髪と眉毛が
ブロンドに
変わるひと時
裸で待つキミ
私の手
あなたを変える
魔法の手
整った髪
ブロンドの髪
| 0052 Ako |
| http://www.enpitu.ne.jp/usr5/51541/ |
| ベリーショートの独り言 |
豊かな長い髪を風に揺らして
貴方の肩に寄り添えば
洗い立ての髪の香りが
貴方の鼻をくすぐることでしょう・・・
しかし、私には出来ない事
好きな男が出来ると
気に入られたいもんだから
彼の好みを知りたくて
探りを入れたくなるけれど
素知らぬふりしながらも
その手のアンテナは思い切り
こっそり張り巡らせてはいるけれど
その反面、
「何よ、あんた媚び売ってんの?」
「なにさ、急に女々しちゃってさ?」
でどころの知れない声がする・・・。
「好きな男に媚び売って何がいけないの?」って
心の中で言い返しては見るものの
それで過ちを犯した事が多かった事
それで自分を見失いかけた事もあったと
急に不安に駆られるものだから
私は今、どこに居ると思う?
ささやかなる抵抗
鏡に映る私を見据えて
美容師は私の髪を手際よくカットする
ベリーショートになるまで落した髪
なんとなく手櫛で整えながら
自分の中の女気を少しは切り落としてみても
どうせなら派手なピアスをつけちゃえと
こころの中では貴方の
驚く顔ちょっと期待している
| 000a のん |
| http://plaza5.mbn.or.jp/~mae_nobuko/ |
| 髪 |
夜 洗面台の前で
丹念に髪をとかすと
黒々とした髪の毛が落ちて
何本も白い陶器にからみつく
肩で波打っていた時は束になって
あんなにも美しく輝いていたのに
抜けた瞬間から髪はもう
汚らしいゴミに変わっていく
きっと抜け落ちなければ
輝いていられたんだろう
何にでもふさわしい場所が
あるんだろう
肩で小さく息を吐き
それから屑篭に捨てた
| 000b 佐々宝砂 |
| http://www2u.biglobe.ne.jp/~sasah/ |
| たかが私の |
たかが女の髪ひとすぢ と
スウィフトは(そういえばドジソン先生も)
書いておられましたが
粉砕され漂白された木質繊維にさえ
人の思いこめられるものならば
かたちもDNAもとどめたこの動物性蛋白に
その持ち主の思いこもるのは
理の当然でございましょう
さて昨年の晩秋のこと
私は思い立って剃髪し
百円ショップで毛糸を一山買ってきて
その毛糸と自らの髪を縒りあわせ
ざっくざっくとセーターを編みました
それから私は庭に出て
真夏に刈り取った草木を集めて焚き付けにして
編んだばかりのセーターを焼きました
晩秋のからかぜが
つんつるてんの頭に寒うございましたが
私はつかのま晴れやかでございました
けれど
育つことを停めた肉体に属していながら
髪は今日も育ちゆきます
剃っても剃っても
朝にはうっすらした翳りとなります
たかが女の髪ひとすぢに
怨念無念こもるなら
セーターに編み込むことすらなされず終わる
この毎朝の翳りには
いかなる念がこもることかと
おののく方もおありでしょうが
つまるところそれは
たかが私の髪でございます
私の髪 私の念でございます
地上の誰に宛てたものでない
天の誰の汚れをぬぐうこともない
たかが私の
| 000c 芳賀 梨花子 |
| http://www.stupidrika.com/hej+truelove/ |
| 私が愛の歌を歌い続ける、その理由 |
その液体が細い管を通って
左腕の静脈に
心臓の鼓動も下垂体も皮膚も
なにもかも無意味で
きっちり六角形の夢に堕ちていく
はい、目をつぶって
あきらめきれないのか
それとも
意識を失ってしまうのが嫌なのか
必死に意思表示しようと
それなのに
語尾だけが色づいていく
それは螺旋状に重なり合って
生のない出産を繰り返す女は歌いだす
これは愛の歌、そして踊る、踊っている、一緒に
しあわせに満ち溢れているから
髪の毛を梳いてあげるね
この櫛はママがおばあさまにいただいた
たいせつなものなの、いつか、あなたに
あなたにはおにいちゃまがいるのよ
おにいちゃまも、きっと、あなたを大事にするわ
おててをつないで、きっと、色んな冒険ができるわ
肩まで伸びた髪の毛は柔らかくて
まるで妖精の羽根のようで
櫛が絡まってしまう、痛いのはがまんしちゃ駄目よ
でも、きっと、こんなに美しい髪の毛を授かったから
こんなことになっちゃったのかもしれないね
ママ、泣かないで、一緒にお歌を歌いましょう
手をとって、一緒に踊りましょう
赤く染まった頬にそっと唇をつけて
今だけでも実感しましょう
踊りながら歌いながら
そのぬくもりに暮らしましょう
それなのに夢さえ悟っていたようで
小声で教えてくれた
手を伸ばしても駄目なのだ
と、その時、望んではいない行き先に
たどり着かなければならないのだと
天井と、青白い蛍光灯さえ、訳知り顔で
ガラガラと動くストレッチャーは、きっと
時間と当倍の世界のものであって
他のなにものでもないはずなのに
あまりにも白くて瞬きなどできない
愛の歌は楽しそうに裾を翻して
カーテンは風に吹かれて
ビルの間の欅のにおいは
昨日と同じはずなのに
目があった男は疲れた顔で
おんなのこだったみたい
と、さぁ、あなたにも聞こえるように
お歌を歌ってあげるわ
まだ、この夢は続く
この世に生まれなかったものは
常に美しく
この世に生まれてきたものは
悲しいほど醜く
そっと手を握ってくれる小さな手
ちょっと、汗ばんでいて
それは、きっと力の限り握り締めてくれていて
そのしぐさを本能は愛しめという
笑顔に安堵しろと言う
美しいものは忘れなさいと
人は言う
そうよ、忘れなさい、忘れて
愛する醜いものたちを抱きしめて
美しいものを愛の歌に閉じ込めてしまうまで
枕元に昨日飾った額縁の笑顔は
明るい窓辺に追いやって
もう少しだけ覚えていたい
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