大日本帝國憲法改正試案 (平成21年版)



前置き

本案は明治22年の大日本帝國憲法の改正試案である。

吾は、「日本國憲法」無效論で述べたやうに、「日本國憲法」の憲法としての正當性及び有效性を認めない。よつて、昭和憲法については成る可く速やかに失效せしめた上で、帝國憲法に時宜に應じた然るべき改正を行ふことを主張する。

吾はは平成17年に改正私案を示し、また、平成20年11月に帝國憲法改正試案を示した。ここでは、更に考慮を加へた案を示す。

吾は、帝國憲法が根幹において劣つたものであるが故に改正すべきものとは考へてゐない。然し、基本的骨骼において優れてゐると言つていい帝國憲法と雖も、缺陷を内包し、亦、時節の變化や内外の状況へ對應する爲、細部調整の爲に改正が必要と認識するものである。當然だが、本案はもとより完璧なものではなく、憲法改正の論議に一石を投じることが出來れば、十分意圖は達するものと考へる。

なほ、昨今の法令の口語化、平假名化に敢へて逆行するのは無理と承知するので、改正の要がない條規についても口語・平假名化を施したことを豫め斷つておく。また、削除すべきとした條文については、括弧內に、條規の要旨を示す。

また、昭和21年「日本國憲法」に依り「廢止」され、以降運用されてゐない樞密院については、之を、皇室典範及び其の他の皇室にかかる事案につき諮詢する爲の機關に變更することとした。帝國議會の議を經た立法及び內閣が其の責任を負つて發する行政命令につき、改めて諮詢を經るは要せずとの考へからである。このことについては、今後も檢討を重ねるべきことは、言ふまでもなく、ここに示したのは單なる一つの試案に過ぎない。

最後に、ここに示したのは、改正後の帝國憲法の條規の案であり、憲法改正が如何なる文言で憲法の條規を改正するかには關知してゐない。また、上諭、發布勅語、告文には、一切觸れてゐない。


第一章 天皇

第一條

大日本帝國は、萬世一系の天皇が之を統治する。

第二條

皇位は、皇室典範の定める所に依り、皇男子孫が之を繼承する。

第三條

天皇の一身を侵すことはできない。

凡て天皇の國務上の行爲は、內閣が輔弼し、其の責任を負ふ。

第四條

天皇は、國の元首であり、國の統一及び永續性の象徵である。

天皇は、統治權を總攬し、此の憲法の條規に依り之を行ふ。

天皇は、法律の定める所に依り、其の大權の全部又は一部を攝行せしめることができる。

第五條

天皇は、帝國議會と共に立法權を行ふ。

第六條

天皇は、憲法改正及び法律を裁可し、其の公布及び執行を命じる。

第七條

天皇は、帝國議會を召集し、其の開會を命じる。

天皇は、衆議院の解散を命じる。

第八條

天皇は、衆議院の解散を命じた後、新たに衆議院議員が選擧されるまでの間に、緊急の必要があるときは、貴族院に緊急集會を命じる。

前項の緊急集會は、帝國議會の權能を有するものとする。但し、緊急集會で採られた措置は、臨時のものであつて、次の帝國議會開會の後十日以內に、衆議院の同意がない場合には、其の效力を失ふ。

第九條

天皇は、此の憲法及び法律を執行する爲に必要な命令を發し、又は發せしめる。

命令を以て法律を變更することはできない。

命令には、特に法律の委任のある場合を除いては、罰則を設けることができない。

第十條

天皇は、此の憲法及び法律の定める所に依り、文武官を任免し、又は任免せしめる。

行政各部の官制は、法律を以て定める。

第十條の二

天皇は、衆議院の指名に基いて、內閣總理大臣を任命する。

第十條の三

天皇は、內閣總理大臣の奏上に基づいて、國務大臣を任免する。

第十條の四

天皇は、貴族院の議決を經て、最高裁判所長官を任命する。

第十條の五

天皇は、貴族院の議決を經て、最高裁判所長官以外の最高裁判所の裁判官を任命する。

第十一條

天皇は、軍を統帥する。

第十二條

軍の編成竝びに任務及び權限は、此の憲法及び法律を以て定める。

第十三條

天皇は、帝國議會の議決を經て、戰を宣し、和を講じ、及び諸般の條約を締結する。

天皇は、締結した條約の公布を命じる。

天皇は、全權委任狀竝びに大使及び公使の信任狀を發する。

天皇は、批准書及び其の他の外交文書を發し、又は發せしめる。

天皇は、外國の大使及び公使を接受する。

天皇は、國の賓客を接遇し、又は接遇せしめる。

第十四條

天皇は、非常事態を宣告する。

非常事態の宣告の要件及び效力は、此の憲法及び法律で之を定める。

第十五條

天皇は、爵位、位階、勳章及び其の他の榮典を授與する。

第十六條

天皇は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復權を命じる。

第十七條

天皇が成年に達しないときは、皇室典範の定める所に依り攝政を置く。

天皇が、精神若しくは身體の重患又は重大な事故に由り、大權を親ら行へないときは、皇室典範の定める所に依り攝政を置く。

攝政は、天皇の名に於いて大權を行ふ。此の場合には、第三條第二項の規定を準用する。


第二章 臣民の權利及び義務

第十八條

日本臣民たる要件は、法律の定める所に依る。

第十八條の二

凡て日本臣民は、生來の權利として、すべての基本的人權を有する。

此の憲法が日本臣民に保障する權利及び自由は、其の性質上、此の憲法が日本臣民のみが有するべきと定めるものを除き、日本臣民でない者に對しても之を保障する。

第十八條の三

此の憲法が日本臣民に保障する自由及び權利は、臣民の不斷の努力によつて、之を保持しなければならない。亦、臣民は、之を濫用してはならず、常に公益に合致するやうに利用する責任を有する。

第十八條の四

何人も、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求の權利については、公益に反しない限り、立法其の他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十八條の五

凡て日本臣民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別されない。

華族の禮遇竝びに政治的又は經濟的な權利及び義務は、法律を以て定める。

第十九條

日本臣民は、法律の定める所により均く文武官に任じられ、及び其の他の公務に就くことができる。

凡て文武官は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

第一項に定める權利は、日本臣民でない者については、法律で之を制限する。

第十九條の二

日本臣民は、此の憲法及び法律の定める投票及び選擧を以て、國政及び地方公共團體の運營に參加する權利を有する。

凡て選擧における投票の祕密は、之を侵してはならない。選擧人は、其の選擇に關し公的にも私的にも責任を負ふことはない。

第一項の權利は、日本臣民でない者には之を認めない。

第二十條

凡て日本臣民は、國防の權利を有し、義務を負ふ。

第二十一條

何人も、法律の定める所に依り、納稅の義務を負ふ。

第二十二條

何人も、公益に反しない限り、居住、移轉及び職業選擇の自由を有する。

何人も、外國に移住し、又は國籍を離脱する自由を侵されない。

第二十三條

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、權限を有する裁判官が發し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令狀に依らなければ、逮捕されない。

何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに辯護人に依賴する權利を與へられなければ、抑留又は拘禁されない。亦、抑留又は拘禁の理由は、要求があれば、直ちに本人及び其の辯護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

何人も、法律の定める手續に依らなければ、審問を受けない。

何人も、法律の定める手續に依らなければ、其の生命若しくは自由を奪はれ、又は其の他の刑罰を科せられない。

拷問及び殘虐な刑罰は、絶對に之を禁ずる。

第二十四條

何人も、法律に定められた裁判官による裁判を受ける權利を奪はれない。

第二十四條の二

凡て刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける權利を有する。

刑事被告人は、すべての證人に對して審問する機會を充分に與へられ、亦、公費で自己の爲に強制的手續に依り證人を求める權利を有する。

刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依賴することができる。被告人が自ら之を依賴できないときは、國で之を附する。

第二十四條の三

何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、之を證據とすることができない。

何人も、自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第二十四條の四

何人も、實行の時に適法であつた行爲又は旣に無罪とされた行爲については、刑事上の責任を問はれない。亦、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第二十四條の五

何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の判決を受けたときは、法律の定める所に依り、國に其の補償を求めることができる。

第二十五條

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、正當な理由に基いて發せられ、且つ搜索する場所及び押收する物を明示する令狀がなければ、其の住居、書類及び所持品について、侵入、搜索及び押收を受けない。

搜索又は押收は、權限を有する裁判官が發する各別の令狀に依つて行はなければならない。

第二十六條

何人も、正當な理由に基づいて、權限を有する裁判官の發した令狀に依らなければ、通信の祕密を侵されない。

檢閲は、之を禁止する。

第二十七條

財產權を侵してはならない。

公益の爲に必要な私有財產の處分は、正當な補償の下で、法律の定める所に依つて行はなければならない。

第二十八條

信敎の自由は、安寧秩序を妨げない限り、何人に對しても之を保障する。

いかなる宗敎團體も、政治上の權力を行使してはならない。

國及び其の機關は、信敎の自由を侵害する宗敎的活動をしてはならない。

天皇及び皇室の祭祀、竝びに其の他の宗敎的な性質を有する國事上の儀式又は行爲は、臣民の信敎の自由を侵害しない限り、之を妨げない。

第二十九條

言論、著作、出版、集會、結社及び其の他一切の表現の自由は、之を保障する。

第三十條

何人も、損害の救濟、文武官の罷免、法律、命令又は規則の制定、廢止又は改正其の他の事項に關し、平穩に請願する權利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第三十條の二

何人も、文武官の不法行爲により、損害を受けたときは、法律の定める所に依り、國又は公共團體に、其の賠償を求めることができる。

第三十條の三

何人も、自己の名譽、信用其の他の人格を不當に侵害されない。

何人も、自己の私事及び家庭に濫りに干渉されず、亦、第三者に公開されない權利を有する。

第三十條の四

何人も、いかなる奴隸的拘束も受けない。

第三十條の五

思想及び良心の自由を侵してはならない。

第三十條の六

學問の自由は、之を保障する。

第三十條の七

婚姻は、兩性の同意のみに基いて成立し、夫婦が同等の權利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

家族は、社會を構成する基本的な單位であり、何人も、その屬する家族の維持に努めなければならない。亦、國は家族を尊重し、其の維持に必要な保護に努めなければならない。

配偶者の選擇、財產權、相續、住居の選定、離婚竝びに婚姻及び家族に關する其の他の事項に關しては、法律は、個人の尊嚴と兩性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第三十條の八

凡て日本臣民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。

國は、凡て生活部面について、社會福祉、社會保障及び公衆衞生の向上及び增進に努めなければならない。

第三十條の九

凡て日本臣民は、良好な環境を享受する權利を有し、其の保全に努める義務を負ふ。

國は、良好な環境の保全に努めなければならない。

第三十條の十

凡て日本臣民は、法律の定める所に依り、其の能力に應じて、均く敎育を受ける權利を有する。

凡て日本臣民は、法律の定める所に依り、其の保護する子女に普通敎育を受けさせる義務を負ふ。

義務敎育は、之を無償とする。

第三十條の十一

凡て日本臣民は、勤勞の權利を有する。

賃金、就業時間、休息其の他の勤勞條件に關する基準は、法律を以て定める。

兒童を酷使してはならない。

第三十條の十二

勤勞者の團結する權利及び團體交渉其の他の團體行動をする權利は、之を保障する。

第三十一條

削除 (戰時・國家事變時の權利制限)

第三十二條

削除 (軍人の權利制限)


第三章 帝國議會

第三十三條

帝國議會は、貴族院及び衆議院の兩議院を以て構成する。

第三十四條

貴族院は、法律の定める所に依り、華族及び勅任された議員を以て組織する。

第三十五條

衆議院は、法律の定める所に依り直接選擧された議員を以て組織する。

衆議院の議員の定數は、法律を以て定める。

衆議院の議員及び其の選擧人の資格は、法律を以て定める。但し、人種、信條、性別、社會的身分、門地、敎育、財產又は收入に由つて差別してはならない。

皇族は、衆議院議員となることができない。亦、皇族は、衆議院議員の選擧人となることができない。

華族は、衆議院議員となつた場合、其の在任中、華族の禮遇竝びに華族としての政治的權利及び義務を停止される。

衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、其の期間滿了前に終了する。

衆議院議員は、法律の定める所に依り、勅命を以て選擧せしめる。

第三十五條の二

此の憲法の定の外、選擧區、投票の方法其の他兩議院の議員の選擧に關する事項は、法律を以て定める。

第三十六條

何人も、同時に兩議院の議員たることはできない。

第三十六條の二

兩議院の議員は、法律の定める所に依り、國庫から相當額の歳費を受ける。

第三十七條

凡て法律は帝國議會の議決を經ることを必要とする。

第三十八條

凡て法律案は、衆議院が先議する。

兩議院の議員は、法律の定める所に依り、衆議院に法律案を提出することができる。

內閣は、衆議院に法律案を提出することができる。

第三十九條

帝國議會が法律案を議決するには、此の憲法に特別の定のある場合を除いては、兩議院で可決することを必要とする。

貴族院は、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、帝國議會休會中の期間を除いて六十日以內に、其の可否を議決しなければならない。貴族院が、受け取つた法律案の可否を議決しない場合は、其の法律案は、帝國議會で議決されたものとする。

貴族院は、受け取つた法律案を修正し、衆議院に廻附することができる。衆議院が廻附された法律案を再修正せずに可決した場合は、其の法律案は、帝國議會で議決されたものとする。

衆議院は、貴族院が否決した法律案を再可決することができる。此の場合、法律案は、帝國議會で議決されたものとする。但し、兩議院及び其の議員に關する法律案、及び、貴族院が、其の出席議員の五分の三以上の多數で否決した法律案については、此の限りではない。

第三十九條の二

凡て條約の締結には、帝國議會の議決を經ることを必要とする。

條約締結についての帝國議會の議決には、此の憲法に特別の定のある場合を除いては、兩議院で可決することを必要とする。

凡て條約は、衆議院が先議する。

貴族院は、衆議院が可決した條約を受け取つた後、帝國議會休會中の期間を除いて三十日以內に、其の締結の可否を議決しなければならない。貴族院が此の期間を超えても議決しない場合は、其の條約は、帝國議會で議決されたものとする。

衆議院は、貴族院が否決した條約を再可決することができる。此の場合、條約は、帝國議會で議決されたものとする。

第三十九條の三

前二條の外、帝國議會の議決には、此の憲法又は法律に特別の定のある場合を除いては、兩議院の議決を經ることを必要とする。

第三十九條の四

樞密顧問竝びに最高裁判所長官及び其の他の最高裁判所の裁判官の任命には、貴族院の議決を經ることを必要とする。

前項の外、國務大臣を除く文武官について、法律は、貴族院の議決を經ることを任命の要件とすることができる。

第四十條

兩議院は、各々國政に關する調査を行ひ、之に關して、證人の出頭及び證言竝びに記錄の提出を要求することができる。

第四十一條

帝國議會の常會は、毎年一囘之を召集する。

第四十二條

帝國議會の常會の會期は、法律を以て定める。

第四十三條

臨時緊急の必要がある場合には、帝國議會の臨時會を召集することができる。

いづれかの議院の總議員の四分の一以上の要求がある場合には、法律の定める期間內に、臨時會を召集しなければならない。

第四十四條

帝國議會の開會、閉會及び會期の延長は、兩議院同時に行はなければならない。

衆議院が解散を命じられたときは、貴族院は、同時に閉會となる。

第四十五條

衆議院が解散されたときは、勅命を以て解散の日から四十日以內に新たに議員を選擧せしめ、其の選擧の日から三十日以內に、帝國議會を召集しなければならない。

第四十五條の二

兩議院は、各々其の議員の資格に關する爭訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第四十六條

兩議院は、各々其の總議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

第四十七條

兩議院の議事は、此の憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半數で之を決し、可否同數のときは、議長の決する所による。

第四十八條

兩議院の會議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多數で議決したときは、祕密會を開くことができる。

兩議院は、各々其の會議の記錄を保存し、祕密會の記錄の中で特に祕密を要すると認められるもの以外は、之を公表し、且つ一般に頒布しなければならない。

出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、之を會議錄に記載しなければならない。

第四十九條

兩議院は、各々天皇に上奏することができる。

第五十條

兩議院は、臣民が呈出する請願書を受けることができる。

第五十一條

兩議院は、各々其の議長其の他の役員を選任する。

兩議院は、各々其の會議其の他の手續及び內部の規律に關する規則を定め、亦、院內の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五十二條

兩議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第五十三條

兩議院の議員は、法律の定める場合を除いては、國會の會期中、其の議院の許諾がなければ逮捕されない。亦、會期前に逮捕された議員は、其の議院の要求があれば、會期中之を釋放しなければならない。

第五十四條

內閣總理大臣其の他の國務大臣は、兩議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について發言するため議院に出席することができる。亦、答辯又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第五十四條の二

帝國議會は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、兩議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける。

裁判官の彈劾に關する事項は、法律を以て定める。


第四章 內閣及び樞密顧問

第五十五條

內閣は、天皇を補弼して行政權を行ひ、其の責任を負ふ。

凡て法律其の他の國務に關する詔勅には、主任の國務大臣が署名し、內閣總理大臣が連署することを必要とする。

第五十六條

天皇の諮詢に應へて皇室の重要事項を審議するため、法律の定める所に依り樞密院を組織する。

樞密院が審議すべき案件の範圍は、此の憲法及び法律の定める所に依る。

樞密顧問は、貴族院の議決を經て、之を勅任する。


第五章 司法

第五十七條

凡て司法權は、天皇の名に於いて、最高裁判所及び法律の定める所に依り設置する下級裁判所が行ふ。

軍事裁判所は、下級裁判所として、法律の定める所に依り之を設置する。

軍事裁判所は、戰時において、法律の定める裁判權を有する。亦、軍事裁判所は、平時においても、軍事上の犯罪について法律の定める裁判權を有する。

行政機關は、終審として裁判を行ふことができない。

特別裁判所を設置することはできない。

凡て裁判官は、其の良心に從ひ獨立して其の職權を行ひ、此の憲法及び法律にのみ拘束される。

第五十八條

裁判官は、裁判に依り、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾に依らなければ罷免されない。行政機關が裁判官の懲戒處分を行ふことはできない。

第五十八條の二

最高裁判所は、最高裁判所長官及び法律の定める員數の其の他の裁判官で之を構成する。

最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齡に達したときに退官する。

凡て最高裁判所の裁判官は、定期に相當額の報酬を受ける。此の報酬は、在任中、之を減額することができない。

第五十八條の三

下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した名簿に依つて、內閣が之を任命する。其の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齡に達したときには退官する。

凡て下級裁判所の裁判官は、定期に相當額の報酬を受ける。此の報酬は、在任中、之を減額することができない。

第五十九條

裁判の對審及び判決は之を公開する。

裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、對審の公開を停止することができる。但し、政治犯罪、出版に關する犯罪又は此の憲法第二章で保障する臣民の權利が問題となつてゐる事件の對審は、常に之を公開しなければならない。

第六十條

最高裁判所は、訴訟に關する手續、辯護士、裁判所の內部規律及び司法事務處理に關する事項について、規則を定める權限を有する。

檢察官は、最高裁判所の定める規則に從はなければならない。

最高裁判所は、下級裁判所に關する規則を定める權限を、下級裁判所に委任することができる。

第六十一條

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する權限を有する終審裁判所である。


第六章 財政

第六十一條の二

國の財政を處理する權限は、帝國議會の議決に基いて行使しなければならない。

第六十二條

新たに租稅を課し、又は現行の租稅を變更するには、法律又は法律の定める條件に依ることを必要とする。

第六十三條

國費を支出し、國債を起し、又は國が債務を負擔するには、帝國議會の議決に基くことを必要とする。

第六十四條

國の歲出歲入は、毎年豫算を以て帝國議會の議決を經なければならない。

內閣は、毎會計年度の豫算を作成し、帝國議會に提出して、その審議を受け議決を經なければならない。

豫算の款項に超過し、又は豫算の外に生じた支出があるときは、帝國議會の承諾を求めなければならない。

第六十五條

豫算は、先に衆議院に提出しなければならない。

豫算について、貴族院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定める所により、兩議院の協議會を開いても意見が一致しないとき、又は貴族院が、衆議院の可決した豫算を受け取つた後、帝國議會休會中の期間を除いて三十日以內に議決しないときは、衆議院の議決を帝國議會の議決とする。

第六十六條

皇室經費は、豫算に計上して帝國議會の議決を經なければならない。

第六十七條

削除 (既定の歳出の廢止・削減の制限)

第六十八條

特別の必要がある場合には、內閣は豫め年限を定め、繼續費として帝國議會の承認を求めることができる。

第六十九條

豫見し難い豫算の不足に充てるため、帝國議會の議決に基いて豫備費を設け、內閣の責任で之を支出することができる。

凡て豫備費の支出については、內閣は、事後に帝國議會の承諾を經なければならない。

第七十條

削除 (緊急時の財政處分)

第七十一條

削除 (豫算不成立時の扱ひ)

第七十二條

凡て國の收入支出の決算は、毎年會計檢査院が之を檢査し、內閣は、次の年度に、其の檢査報告とともに、之を帝國議會に提出しなければならない。

會計檢査院の組織及び權限は、法律を以て定める。

第七十二條の二

內閣は、帝國議會及び臣民に對し、定期に、少くとも毎年一囘、國の財政狀況について報告しなければならない。

第七十二條の三

公金其の他の公の財產は、宗敎上の組織若しくは團體の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に屬しない慈善、敎育若しくは博愛の事業であつて法律の定めるものに對し、之を支出し、又は其の利用に供してはならない。


第七章 補則

第七十三條

此の憲法の條項を改正するには、各議院が其の總議員の過半數で議決した後、臣民投票に附して、其の過半數の贊成を得なければならない。

前項の臣民投票は、法律の定める所に依り之を行ふ。

憲法改正について、臣民投票に於いて過半數の贊成を得たときは、天皇は、此の憲法と一體を成すものとして、直ちに之を裁可し、其の公布を命じる。

憲法改正には、凡て內閣總理大臣其の他の國務大臣が署名することを必要とする。

第七十四條

皇室典範は、帝國議會の議決及び樞密院の諮詢を經て、之を勅定する。

皇室典範を以て此の憲法及び法律の條規を變更することはできない。

第七十五條

憲法及び皇室典範は、攝政を置く間、之を變更してはならない。

戰時又は非常事態が宣告された後解除されるまでの間についても、前項に準じる。

第七十六條

此の憲法は、國の最高法規である。

法律、規則、命令、又は何等の名稱を用ゐてゐるに拘らず、此の憲法の條規に反する法令、詔勅及び國務に關する其の他の行爲の全部又は一部は、其の效力を有しない。

大日本帝國が締結した條約及び確立された國際法規は、之を誠實に遵守することを必要とする。

第七十七條

憲法改正、皇室典範、法律及び條約竝びに其の他法律の定める詔勅及び命令は、官報を以て公布する。

憲法改正、皇室典範、法律、條約、詔勅及び命令の公布の形式に關する事項は、此の憲法の定の他、法律の定める所に依る。

第七十八條

大日本帝國の領土は、本州、九州、四國及び北海道竝びに法律の定める其の他の部分からなる。

國は、現に外國に侵犯されてゐる領土の恢復に努めなければならない。亦、外國による新たな領土侵犯の防止に努めなければならない。

領土を定める法律の制定及び改正には、第三十九條第二項乃至第四項の規定に關はらず、兩議院の議決を經ることを必要とする。

第七十九條

大日本帝國の國旗は、日章旗である。

大日本帝國の國歌は、君が代である。

國旗の制式竝びに國歌の歌詞及び樂曲は、法律を以て定める。

第八十條

大日本帝國の首都は、京都及び東京とする。


經過規定

改正時點で必要な經過事項については本案では示さない。


大日本帝國憲法增補 內閣

第一條

內閣は、法律の定める所により、其の首長たる內閣總理大臣及び其の他の國務大臣を以て組織する。

內閣總理大臣其の他の國務大臣は、現役の武官であつてはならない。

內閣は、行政權の行使について、帝國議會に對し連帶して責任を負ふ。

第二條

內閣總理大臣は、衆議院議員の中から衆議院の議決で、之を指名する。此の指名は、他の凡ての案件に先立つて、之を行ふ。

第三條

國務大臣の過半數は、衆議院議員の中から選ばれなければならない。

第四條

內閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以內に衆議院が解散されない限り、總辭職しなければならない。

第五條

內閣總理大臣が缺けたとき、又は衆議院議員の總選擧の後に初めて帝國議會の召集があつたときは、內閣は、總辭職しなければならない。

內閣總理大臣が缺けたときは、法律の定める所に依り、臨時代行を置く。

前項の臨時代行は、國務大臣でなければならない。

第六條

前二條の場合には、內閣は、新たに內閣總理大臣が任命されるまで引き續きその職務を行ふ。此の間、衆議院を解散することはできない。

第七條

內閣總理大臣は、內閣を代表して議案を帝國議會に提出し、一般國務及び外交關係について帝國議會に報告し、竝びに行政各部を指揮監督する。

第八條

內閣は、他の一般行政事務の他、左の事務を行ふ。

法律を誠實に執行し、國務を總理すること。

外交關係を處理すること。

法律の定める基準に從ひ、文武官に關する事務を掌理すること。

豫算を作成して帝國議會に提出すること。

第九條

國務大臣は、其の在任中、內閣總理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、之がため、訴追の權利は、害されない。


大日本帝國憲法增補 安全保障

第一條

國の平和及び獨立を堅守し、領土を保全し、國及び臣民の安全を保障するため、軍を編成する。

軍の編成は、法律の定める所に依る。

第二條

國權の發動たる戰爭及び武力による威嚇又は武力の行使は、自衞の目的を除き、之を行はない。

第三條

戰を宣するには、帝國議會の議決を經ることを必要とする。

前項の外、武力行使を伴ふ軍の行動には、事前に、時宜によつては事後に、帝國議會の議決を經ることを必要とする。

第四條

平時に軍を國外に派遣するには、事前に帝國議會の議決を經ることを必要とする。

第五條

戰時に於ける立法、行政、司法及び其の他の國政上の特別の措置については、豫め法律を以て定める。

戰時に於ける臣民の自由及び權利の制限については、豫め法律を以て定める。但し、臣民の自由及び權利の制限は、臣民の生命、身體又は財產を保護するために必要且つ最小限度の範圍に留めることを必要とする。


大日本帝國憲法增補 非常事態

第一條

戰爭、天災其の他國の安全又は多數の臣民の生命、身體若しくは財產が侵害され、又は侵害される虞のある事態に、緊急に對處する必要がある場合には、法律の定める所に依り、國の全部又は一部の地域に、非常事態を宣告することができる。

非常事態を宣告した場合には、內閣は、法律の定める所に依り、軍、警察其の他の行政機關を統制し、亦、地方公共團體の長を直接指揮することができる。

第二條

非常事態を宣告したときは、十五日以內に帝國議會の承認を得なければならない。

帝國議會が非常事態の宣告を承認しなかつたとき、又は非常事態の宣告の理由がなくなつたときは、直ちに非常事態の宣告を解除しなければならない。

第三條

非常事態を宣告したときは、法律の定める所に依り、臣民の生命、身體又は財產を保護するために必要且つ最小限度の範圍で、帝國憲法第二章の條規に依り保障される臣民の自由及び權利を制限する緊急措置を行ふことができる。

前項の措置を行ふ場合、內閣は、濫りに臣民の自由及び權利を制限してはならず、常に基本的人權の尊重に留意しなければならない。

第一項の措置は、公正且つ適正な手續を經て行はなければならない。


大日本帝國憲法增補 地方自治

第一條

地方が其の實状及び其の住民の意思に基いて決定し執行することが適當な事項については、之を地方自治に委ねる。

地方自治を行ふ主體として、地方公共團體を設ける。地方公共團體の組織及び運營に關する事項は、法律を以て定める。

第二條

地方公共團體には、法律の定める所に依り、長及び議事機關を置く。

第三條

地方公共團體の長、其の議事機關の議員及び法律の定める其の他の吏員は、其の地方公共團體の住民が、直接之を選擧する。

第四條

地方公共團體は、法律の定める所に依り、其の財產を管理し、事務を處理し、及び行政を執行する。

第五條

地方公共團體は、法律の範圍內で條例を制定する。

條例の制定には、其の地方公共團體の議事機關の議決を經ることを必要とする。

第六條

特定の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定める所に依り、其の地方公共團體の住民の投票において其の過半數の同意を得なければ、之を制定することができない。




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