大日本帝國憲法改正試案 (平成20年版)
- 前置き
- 第一章 天皇
- 第二章 臣民の權利及び義務
- 第三章 帝國議會
- 第四章 內閣
- 第五章 司法
- 第五章の二 安全保障及び國際協力
- 第五章の三 緊急事態
- 第六章 財政
- 第六章の二 地方自治
- 第七章 補則
- 第八章 經過規定
前置き
本案は明治22年の大日本帝國憲法の改正試案である。間違つても昭和21年の「日本國憲法」の改正案ではない。
平成17年にも一度、改正私案を示したが、此の度、更に考慮を加へ、その結果を新たに試案として公開するものである。
そもそも「日本國憲法」の「成立」は聯合國占領下におけるものであり、ハーグ陸戰規約に明かに違反し、亦、非常時における帝國憲法改正は、帝國憲法第75條が攝政設置時に帝國憲法及び皇室典範を改正するを得ずと定めた趣旨にも反するものであるので、之を容認することは出來ない。よつて本局は「日本國憲法」の正當性を是認せず、その憲法としての有效性も認めない。
本稿は帝國憲法改正案を示すのが目的であつて「日本國憲法の無效性」を主張するのが本旨ではないので、これ以上は觸れないが、一應念頭に置いておいて頂きたいと思ふ。
本改正試案は、帝國憲法が基本的骨骼において優れたものであることを念頭に置きつつ、時節の變化や内外の状況に對應するべく改正が必要であると判斷し、その一案を提示するものである。憲法改正の論議に一石を投じることが出來れば十分意圖は達したものと考へる。
なほ、昨今の法令の口語化、平假名化に敢へて逆行するのは無理と承知するので、改正の要がない條規についても口語・平假名化を施したことを豫め斷つておく。また、削除した條文については、括弧內に、條規の要旨を示す。
また、昭和21年「日本國憲法」に依り廢止され、以降運用されてゐない樞密院について、之を如何に運用すべきか考慮した結果、皇室典範及び其の他の皇室にかかる事案につき諮詢する爲の機關に變更することとした。帝國議會の協贊を經た立法及び內閣が其の責を任じて發する行政命令につき、改めて諮詢を經ることは、現代において要せずと考へるものである。このことについては、今後も檢討を重ねるべきことは、言ふまでもなく、ここに示したのは單なる一つの試案に過ぎない。
ここに示したのは、改正後の帝國憲法の條規の案であり、憲法改正が如何なる文言で憲法の條規を改正するかには關知してゐない。また、上諭、發布勅語、告文には一切觸れてゐない。起草と雖もその領域に踏み込むのは、吾が分限を逸脱するものであると判斷する。
第一章 天皇
- 第一條
大日本帝國は、萬世一系の天皇が、之を統治する。
- 第二條
皇位は、皇室典範の定める所に依り、皇男子孫が之を繼承する。
- 第三條
天皇の一身を侵すことはできない。
凡て天皇の國政上の行爲は、內閣が輔弼し、其の責に任ずる。
- 第四條
天皇は、國の元首であり、國の統一及び永續性の象徵である。
天皇は、統治權を總攬し、此の憲法の條規に依り之を行使し、又は行使せしめる。
天皇は、法律の定める所に依り、其の大權の全部又は一部を攝行せしめることができる。
- 第五條
天皇は、帝國議會の協贊を以て、立法權を行使する。
- 第六條
天皇は、憲法改正及び法律を裁可し、其の公布及び執行を命じる。
- 第七條
天皇は、帝國議會を召集し、その開會を命じる。
天皇は、衆議院の解散を命じる。
- 第八條
削除 (緊急勅令)
- 第九條
天皇は、此の憲法及び法律を執行する爲に必要な命令を發し、又は發せしめる。
命令を以て法律を變更することはできない。
命令には、特に法律の委任のある場合を除いては、罰則を設けることができない。
- 第十條
天皇は、此の憲法及び法律の定める所に依り、文武官を親ら任免し、又は任免せしめる。
行政各部の官制は、法律で之を定める。
天皇は、衆議院の指名に基いて、內閣總理大臣を任命する。
天皇は、參議院の指名に基いて、最高裁判所長官を任命する。
天皇は、國務大臣及び法律の定める其の他の文武官の任免を裁可する。
- 第十一條
天皇は、軍を統帥する。
- 第十二條
削除 (軍の編成權)
- 第十三條
天皇は、帝國議會の協贊を以て、戰を宣し、和を講じ、及び諸般の條約を締結する。
天皇は、締結した條約の公布を命じる。
天皇は、全權委任狀竝びに大使及び公使の信任狀を裁可する。
天皇は、批准書及び其の他の外交文書を裁可する。
天皇は、外國の大使及び公使を接受する。
- 第十四條
天皇は、戒嚴を宣告する。
戒嚴の要件及び效力は、此の憲法及び法律で之を定める。
- 第十五條
天皇は、爵位、位階、勳章及び其の他の榮典を授與する。
- 第十六條
天皇は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復權を命じる。
- 第十七條
天皇が成年に達しないときは、皇室典範の定める所に依り攝政を置く。
天皇が、精神若しくは身體の重患又は重大な事故により、大權を自ら行使できないときは、皇室典範の定める所に依り攝政を置く。
攝政は、天皇の名で大權を行使する。此の場合には、第三條第二項の規定を準用する。
第二章 臣民の權利及び義務
- 第十八條
日本臣民たる要件は、法律の定める所に依る。
- 第十八條の二
凡て日本臣民は、生來の權利として、すべての基本的人權を享有する。
此の憲法が日本臣民に保障する權利及び自由は、其の性質上日本臣民のみが享有するべきものを除き、外國人に對しても之を保障する。
- 第十八條の三
此の憲法が日本臣民に保障する自由及び權利は、臣民の不斷の努力によつて、之を保持しなければならない。又、臣民は、之を濫用してはならず、常に公益に合致するように利用する責に任ずる。
- 第十八條の四
何人も、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求の權利については、公益に反しない限り、立法其の他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。
- 第十八條の五
凡て日本臣民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別されない。
華族の禮遇竝びに政治的、經濟的權利及び義務は、法律を以て定める。
- 第十九條
日本臣民は、法律の定める所により均く文武官に任じられ、及び其の他の公務に就くことができる。
凡て文武官は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
第一項に定める權利は、外國人については、法律で之を制限する。
- 第十九條の二
日本臣民は、此の憲法及び法律の定める投票及び選擧を通じて、國政及び地方公共團體の運營に參加する權利を有する。
凡て選擧における投票の祕密は、之を侵してはならない。選擧人は、其の選擇に關し公的にも私的にも責を負ふことはない。
第一項の權利は、之を外國人には認めない。
- 第二十條
凡て日本臣民は、國防の權利を有し、義務を負ふ。
- 第二十一條
何人も、法律の定める所に依り、納稅の義務を負ふ。
- 第二十二條
何人も、公益に反しない限り、居住、移轉及び職業選擇の自由を有する。
何人も、外國に移住し、又は國籍を離脱する自由を侵されない。
- 第二十三條
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、權限を有する裁判官が發し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令狀に依らなければ、逮捕されない。
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに辯護人に依賴する權利を與へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、抑留又は拘禁の理由は、要求があれば、直ちに本人及び其の辯護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
何人も、法律の定める手續に依らなければ、審問を受けない。
何人も、法律の定める手續に依らなければ、其の生命若しくは自由を奪はれ、又は其の他の刑罰を科せられない。
拷問及び殘虐な刑罰は、絶對に之を禁ずる。
- 第二十四條
何人も、法律に定められた裁判官による裁判を受ける權利を奪はれない。
- 第二十四條の二
凡て刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける權利を有する。
刑事被告人は、すべての證人に對して審問する機會を充分に與へられ、又、公費で自己の爲に強制的手續に依り證人を求める權利を有する。
刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依賴することができる。被告人が自ら之を依賴できないときは、國で之を附する。
- 第二十四條の三
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、之を證據とすることができない。
何人も、自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
- 第二十四條の四
何人も、實行の時に適法であつた行爲又は旣に無罪とされた行爲については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
- 第二十四條の五
何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の判決を受けたときは、法律の定める所に依り、國にその補償を求めることができる。
- 第二十五條
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、正當な理由に基いて發せられ、且つ搜索する場所及び押收する物を明示する令狀がなければ、其の住居、書類及び所持品について、侵入、搜索及び押收を受けない。
搜索又は押收は、權限を有する裁判官が發する各別の令狀に依つて行はなければならない。
- 第二十六條
何人も、正當な理由に基づいて、權限を有する裁判官の發した令狀に依らなければ、通信の祕密を侵されない。
檢閲は、之を禁止する。
- 第二十七條
財產權を侵してはならない。
公益の爲に必要な私有財產の處分は、正當な補償の下で、法律の定める所に依つて行はれなければならない。
- 第二十八條
信敎の自由は、安寧秩序を妨げない限り、何人に對しても之を保障する。
いかなる宗敎團體も、政治上の權力を行使してはならない。
國及びその機關は、信敎の自由を侵害する宗敎的活動をしてはならない。
天皇及び皇室の祭祀、竝びに其の他の宗敎的な性質を有する國事上の儀式又は行爲は、信敎の自由を侵害するものでない限り、之を妨げない。
- 第二十九條
言論、著作、出版、集會、結社及び其の他一切の表現の自由は、之を保障する。
- 第三十條
何人も、損害の救濟、文武官の罷免、法律、命令又は規則の制定、廢止又は改正其の他の事項に關し、平穩に請願する權利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
- 第三十條の二
何人も、文武官の不法行爲により、損害を受けたときは、法律の定める所により、國又は公共團體に、その賠償を求めることができる。
- 第三十條の三
何人も、自己の名譽、信用其の他の人格を不當に侵害されない。
何人も、自己の私事及び家庭に濫りに干渉されず、又、第三者に公開されない權利を有する。
- 第三十條の四
何人も、いかなる奴隸的拘束も受けない。
- 第三十條の五
思想及び良心の自由を侵してはならない。
- 第三十條の六
學問の自由は、之を保障する。
- 第三十條の七
婚姻は、兩性の同意のみに基いて成立し、夫婦が同等の權利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
家族は、社會を構成する基本的な單位であり、何人も、その屬する家族の維持に努めなければならない。又、國は家族を尊重し、其の維持に必要な保護に努めなければならない。
配偶者の選擇、財產權、相續、住居の選定、離婚竝びに婚姻及び家族に關する其の他の事項に關しては、法律は、個人の尊嚴と兩性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
- 第三十條の八
凡て日本臣民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。
國は、すべての生活部面について、社會福祉、社會保障及び公衆衞生の向上及び增進に努めなければならない。
- 第三十條の九
凡て日本臣民は、良好な環境を享受する權利を有し、其の保全に努める義務を負ふ。
國は、良好な環境の保全に努めなければならない。
- 第三十條の十
凡て日本臣民は、法律の定める所に依り、其の能力に應じて、均く敎育を受ける權利を有する。
凡て日本臣民は、法律の定める所に依り、其の保護する子女に普通敎育を受けさせる義務を負ふ。
義務敎育は、之を無償とする。
- 第三十條の十一
凡て日本臣民は、勤勞の權利を有する。
賃金、就業時間、休息其の他の勤勞條件に關する基準は、法律を以て定める。
兒童を酷使してはならない。
- 第三十條の十二
勤勞者の團結する權利及び團體交渉その他の團體行動をする權利は、之を保障する。
- 第三十一條
削除 (戰時・國家事變時の權利制限)
- 第三十二條
此の憲法が日本臣民に保障する權利は、軍の法令又は規律に牴觸しない限り、軍人にも保障される。
第三章 帝國議會
- 第三十三條
帝國議會は、貴族院及び衆議院の兩議院を以て成立する。
- 第三十四條
貴族院は、法律の定める所により、皇族、華族、勅任された議員及び公選された議員を以て組織する。
公選される貴族院議員の定數は、法律を以て定める。
公選される貴族院議員の任期は、六年とし、三年ごとに半數を改選する。
公選される貴族院議員及び其の選擧人の資格は、法律を以て定める。但し、人種、信條、性別、門地、敎育、財產又は收入に由つて差別してはならない。
公選される貴族院議員は、法律の定める所に依り、勅命を以て選擧せしめる。
勅任される貴族院議員の員數の上限及び勅任するのに不適格とする事項は、法律を以て定める。但し、其の不適格とする事項は、人種、信條、性別、門地、敎育、財產又は收入に由るものであつてはならない。
勅任された貴族院議員は、法律の定める場合を除き罷免されない。
- 第三十五條
衆議院は、法律の定める所に依り直接選擧された議員を以て組織する。
衆議院の議員の定數は、法律を以て定める。
衆議院の議員及び其の選擧人の資格は、法律を以て定める。但し、人種、信條、性別、社會的身分、門地、敎育、財產又は收入に由つて差別してはならない。
皇族は、衆議院議員となることができない。
衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、其の期間滿了前に終了する。
衆議院議員は、法律の定める所に依り、勅命を以て選擧せしめる。
- 第三十五條の二
此の憲法の定の外、選擧區、投票の方法其の他兩議院の議員の選擧に關する事項は、法律を以て定める。
- 第三十六條
何人も、同時に兩議院の議員たることはできない。
華族にあつて衆議院議員となつた者は、其の在任中、華族の禮遇竝びに華族としての政治的權利及び義務を停止される。
- 第三十六條の二
兩議院の議員は、法律の定める所により、國庫から相當額の歳費を受ける。
- 第三十七條
凡て法律は帝國議會の協贊を經ることを必要とする。
- 第三十八條
凡て法律案は、衆議院が先議する。
兩議院の議員は、法律の定める所に依り、衆議院に法律案を提出することができる。
內閣は、衆議院に法律案を提出することができる。
- 第三十九條
法律案は、此の憲法に特別の定のある場合を除いては、兩議院で可決したとき法律となる。
衆議院で可決し、貴族院で之と異なつた議決をした法律案は、衆議院で再び可決したときは、法律となる。但し、兩議院及び其の議員に關する法律については、此の限りではない。
前項の規定は、法律の定める所に依り、衆議院が、兩議院の協議會を開くことを求めることを妨げない。
第二項による衆議院の再議決は、貴族院の議決後、帝國議會休會中の期間を除いて三十日を經なければ、することができない。
貴族院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、帝國議會休會中の期間を除いて六十日以內に、議決しないときは、衆議院は、貴族院がその法律案を否決したものと看做すことができる。
- 第三十九條の二
凡て條約の締結に必要な帝國議會の承認については、第三十九條を準用する。但し、第四項中三十日とある所は十日と讀み替へ、第五項中六十日とある所は三十日と讀み替へる。
- 第三十九條の三
樞密顧問及び最高裁判所の裁判官の任命には、貴族院の議決を經ることを必要とする。
前項の他、國務大臣を除く文武官の任命について、法律は、貴族院の議決を經ることを必要とすることができる。
- 第四十條
兩議院は、各々國政に關する調査を行ひ、之に關して、證人の出頭及び證言竝びに記錄の提出を要求することができる。
- 第四十一條
帝國議會の常會は、毎年一囘之を召集する。
- 第四十二條
帝國議會の常會の會期は、法律を以て定める。
- 第四十三條
臨時緊急の必要がある場合には、帝國議會の臨時會を召集することができる。
いづれかの議院の總議員の四分の一以上の要求がある場合には、法律の定める期間內に、臨時會を召集しなければならない。
- 第四十四條
帝國議會の開會、閉會及び會期の延長は、兩議院同時に行はなければならない。
衆議院が解散を命ぜられたときは、貴族院は同時に閉會となる。但し、國に緊急の必要があるときは、貴族院に緊急集會を命じることができる。
前項但書の緊急集會において採られた措置は、臨時のものであつて、次の國會開會の後十日以內に、衆議院の同意がない場合には、其の效力を失ふ。
- 第四十五條
衆議院が解散されたときは、勅命を以て解散の日から四十日以內に新たに議員を選擧せしめ、其の選擧の日から三十日以內に、帝國議會を召集しなければならない。
- 第四十五條の二
兩議院は、各々其の議員の資格に關する爭訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。
- 第四十六條
兩議院は、各々其の總議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
- 第四十七條
兩議院の議事は、此の憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半數で之を決し、可否同數のときは、議長の決する所による。
- 第四十八條
兩議院の會議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多數で議決したときは、祕密會を開くことができる。
兩議院は、各々其の會議の記錄を保存し、祕密會の記錄の中で特に祕密を要すると認められるもの以外は、之を公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、之を會議錄に記載しなければならない。
- 第四十九條
兩議院は、各々天皇に上奏することができる。
- 第五十條
兩議院は、臣民が呈出する請願書を受けることができる。
- 第五十一條
兩議院は、各々其の議長其の他の役員を選任する。
兩議院は、各々其の會議其の他の手續及び內部の規律に關する規則を定め、又、院內の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。
- 第五十二條
兩議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
- 第五十三條
兩議院の議員は、法律の定める場合を除いては、國會の會期中、其の議院の許諾がなければ逮捕されない。又、會期前に逮捕された議員は、其の議院の要求があれば、會期中之を釋放しなければならない。
- 第五十四條
內閣總理大臣其の他の國務大臣は、兩議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について發言するため議院に出席することができる。又、答辯又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
- 第五十四條の二
帝國議會は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、兩議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける。
裁判官の彈劾に關する事項は、法律を以て定める。
第四章 內閣及び樞密院
- 第五十五條
內閣は、天皇を補弼して行政權を行使し、其の責に任ずる。
凡て法律其の他の國務に關する詔勅には、主任の國務大臣が署名し、內閣總理大臣が連署することを必要とする。
- 第五十五條の二
內閣は、法律の定める所により、其の首長たる內閣總理大臣及び其の他の國務大臣を以て組織する。
內閣總理大臣其の他の國務大臣は、現役の武官であつてはならない。
內閣は、行政權の行使について、帝國議會に對し連帶して責に任ずる。
- 第五十五條の三
內閣總理大臣は、衆議院議員の中から衆議院の議決で、之を指名する。此の指名は、他のすべての案件に先立つて、之を行ふ。
- 第五十五條の四
內閣總理大臣は、國務大臣を任命する。但し、其の過半數は、衆議院議員の中から選ばれなければならない。
內閣總理大臣は、任意に國務大臣を罷免することができる。
- 第五十五條の五
內閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以內に衆議院が解散されない限り、總辭職をしなければならない。
- 第五十五條の六
內閣總理大臣が缺けたとき、又は衆議院議員の總選擧の後に初めて帝國議會の召集があつたときは、內閣は、總辭職しなければならない。
- 第五十五條の七
前二條の場合には、內閣は、新たに內閣總理大臣が任命されるまで引き續きその職務を行ふ。此の場合、衆議院は解散できない。
- 第五十五條の八
內閣總理大臣は、內閣を代表して議案を帝國議會に提出し、一般國務及び外交關係について帝國議會に報告し、竝びに行政各部を指揮監督する。
- 第五十五條の九
-
內閣は、他の一般行政事務の他、左の事務を行ふ。
- 一
法律を誠實に執行し、國務を總理すること。
- 二
外交關係を處理すること。
- 三
法律の定める基準に從ひ、文武官に關する事務を掌理すること。
- 四
豫算を作成して帝國議會に提出すること。
- 第五十五條の十
國務大臣は、其の在任中、內閣總理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、之がため、訴追の權利は、害されない。
- 第五十六條
樞密院は、法律の定める所に依り、皇室典範及び其の改正竝びに攝政の設置、皇位繼承順序の變更、及び其の他の皇室に關する事項を審議する。
樞密院の組織は、法律を以て定める。
樞密顧問は、貴族院の議決を經て、勅任される。
攝政の設置について、樞密院は、內閣の要求に依り審議を行ひ、其の結果を內閣に報告しなければならない。
前項の場合を除き、樞密院は、天皇の諮詢に應へて審議を行ひ、其の結果を上奏して勅裁を請はなければならない。
帝國議會が、皇室典範及び其の改正について、兩議院で、各々出席議員の三分の二以上の多數で議決した場合、樞密院は、天皇の諮詢に對して、帝國議會の議決と異なる上奏をしてはならない。
第五章 司法
- 第五十七條
凡て司法權は、天皇の名に於いて、最高裁判所及び法律の定める所に依り設置する下級裁判所が行使する。
軍事裁判所は、戰時において、法律の定める裁判權を有する。また、軍事裁判所は、平時において軍の成員の犯した軍事上の犯罪について、法律の定める裁判權を有する。
軍事裁判所は、下級裁判所として、法律の定める所に依り之を設置する。
行政機關は、終審として裁判を行ふことができない。
特別裁判所を設置することはできない。
凡て裁判官は、其の良心に從ひ獨立して其の職權を行ひ、此の憲法及び法律にのみ拘束される。
- 第五十八條
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾に由らなければ罷免されない。行政機關が裁判官の懲戒處分を行ふことはできない。
- 第五十八條の二
最高裁判所は、最高裁判所長官及び法律の定める員數の其の他の裁判官で之を構成する。
最高裁判所長官の指名は、內閣の提案により貴族院の議決で之を行ふ。內閣の提案を貴族院が否決したときは、內閣は、直ちに別の提案をしなければならない。
最高裁判所長官以外の最高裁判所の裁判官は、貴族院の議決を經て、內閣が之を任命する。
最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齡に達したときに退官する。
凡て最高裁判所の裁判官は、定期に相當額の報酬を受ける。此の報酬は、在任中、之を減額することができない。
- 第五十八條の三
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した名簿に依つて、內閣で之を任命する。其の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齡に達したときには退官する。
凡て下級裁判所の裁判官は、定期に相當額の報酬を受ける。此の報酬は、在任中、之を減額することができない。
- 第五十九條
裁判の對審及び判決は之を公開する。
裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、對審の公開を停止することができる。但し、政治犯罪、出版に關する犯罪又は此の憲法第二章で保障する臣民の權利が問題となつてゐる事件の對審は、常に之を公開しなければならない。
- 第六十條
最高裁判所は、訴訟に關する手續、辯護士、裁判所の內部規律及び司法事務處理に關する事項について、規則を定める權限を有する。
檢察官は、最高裁判所の定める規則に從はなければならない。
最高裁判所は、下級裁判所に關する規則を定める權限を、下級裁判所に委任することができる。
- 第六十一條
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する權限を有する終審裁判所である。
第五章の二 安全保障及び國際協力
- 第六十一條の二
大日本帝國及び日本臣民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求する。國權の發動たる戰爭及び武力による威嚇又は武力の行使は、自衞の目的を除き、之を行はない。
- 第六十一條の三
國の獨立及び平和を護持し、國及び臣民の安全を保障する爲、法律の定める所に依り、軍を編成する。
- 第六十一條の四
國は、國際平和の維持及び人道上の支援の爲、國際機關及び國際協調の下での活動に、軍を參加させることができる。
- 第六十一條の五
軍に武力行使を伴ふ行動を命じる場合には、事前に、時宜によつては事後に、帝國議會の承認を經なければならない。
第五章の三 緊急事態
- 第六十一條の六
天災、外國による武力行使其の他國の獨立、安全又は多數の臣民の生命、身體若しくは財產が侵害され、又は侵害される虞のある事態が發生し、緊急に對處する必要がある場合には、法律の定める所に依り、國の全部又は一部の地域に、戒嚴を宣告することができる。
戒嚴を宣告した場合には、內閣は、法律の定める所に依り、軍、警察其の他の行政機關を統制し、又、地方公共團體の長を直接指揮することができる。
- 第六十一條の七
戒嚴を宣告したときは、十五日以內に帝國議會の承認を經なければならない。但し、衆議院が解散されてゐるときには、貴族院の緊急集會の承認を帝國議會の承認に代へることができる。
帝國議會が戒嚴の宣告を承認しなかつたとき、又は戒嚴の理由となつた事態がなくなつたときは、直ちに戒嚴を解除しなければならない。
- 第六十一條の八
戒嚴を宣告したときは、內閣は、法律の定める所に依り、臣民の生命、身體又は財產を保護するために必要且つ最小限度の範圍で、第二章の條規により保障される臣民の自由及び權利を制限する緊急措置をとることができる。
前項の措置をとる場合、內閣は、濫りに臣民の自由及び權利を制限してはならず、常に基本的人權の尊重に留意しなければならない。
第一項の措置は、公正且つ適正な手續を經て行はなければならない。
第六章 財政
- 第六十一條の九
國の財政を處理する權限は、帝國議會の議決に基いて行使しなければならない。
- 第六十二條
新たに租稅を課し、又は現行の租稅を變更するには、法律又は法律の定める條件によることを必要とする。
- 第六十三條
國費を支出し、國債を起し、又は國が債務を負擔するには、帝國議會の議決に基くことを必要とする。
- 第六十四條
國の歲出歲入は、毎年豫算を以て帝國議會の協贊を經なければならない。
內閣は、毎會計年度の豫算を作成し、帝國議會に提出して、その審議を受け議決を經なければならない。
豫算の款項に超過し、又は豫算の外に生じた支出があるときは、帝國議會の承諾を求めなければならない。
- 第六十五條
豫算は、先に衆議院に提出しなければならない。
豫算について、貴族院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定める所により、兩議院の協議會を開いても意見が一致しないとき、又は貴族院が、衆議院の可決した豫算を受け取つた後、帝國議會休會中の期間を除いて三十日以內に議決しないときは、衆議院の議決を帝國議會の議決とする。
- 第六十六條
皇室經費は、豫算に計上して帝國議會の議決を經なければならない。
- 第六十七條
削除 (既定の歳出の廢止・削減の制限)
- 第六十八條
特別の必要がある場合には、內閣は豫め年限を定め、繼續費として帝國議會の承認を求めることができる。
- 第六十九條
豫見し難い豫算の不足に充てるため、帝國議會の議決に基いて豫備費を設け、內閣の責任で之を支出することができる。
凡て豫備費の支出については、內閣は、事後に帝國議會の承諾を經なければならない。
- 第七十條
公共の安全を保持するために緊急の需要がある場合において、內外の情勢により帝國議會を召集することができない場合は、勅令により財政上必要な處分をすることができる。
前項の場合は、次の會期において帝國議會の承認を經なければならない。
- 第七十一條
削除 (豫算不成立時の扱ひ)
- 第七十二條
凡て國の收入支出の決算は、毎年會計檢査院が之を檢査し、內閣は、次の年度に、その檢査報告とともに、之を帝國議會に提出しなければならない。
會計檢査院の組織及び權限は、法律で之を定める。
- 第七十二條の二
內閣は、帝國議會及び臣民に對し、定期に、少くとも毎年一囘、國の財政狀況について報告しなければならない。
- 第七十二條の三
公金その他の公の財產は、宗敎上の組織若しくは維持のため、又は公の支配に屬しない慈善、敎育若しくは博愛の事業であつて法律の定めるものに對し、之を支出し、又はその利用に供してはならない。
第六章の二 地方自治
- 第七十二條の四
地方公共團體の組織及び運營に關する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律を以て定める。
- 第七十二條の五
地方公共團體には、法律の定める所に依り、其の議事機關として議會を設置する。
地方公共團體の長、其の議會の議員及び法律の定める其の他の官吏は、其の地方公共團體の住民が、直接之を選擧する。
- 第七十二條の六
地方公共團體は、其の財產を管理し、事務を處理し、及び行政を執行する權限を有し、法律の範圍內で條例を制定することができる。
- 第七十二條の七
特定の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定める所に依り、其の地方公共團體の住民の投票において其の過半數の同意を得なければ、帝國議會は、之を制定することができない。
第七章 補則
- 第七十三條
此の憲法の改正は、各議院の總議員の過半數の贊成で、帝國議會が、之を發議し、臣民に提案して其の承認を經なければならない。此の承認には、特別の臣民投票又は帝國議會の定める選擧の際行はれる投票において、其の有效投票の過半數の贊成を必要とする。
憲法改正について前項の承認を經たときは、天皇は、此の憲法と一體を成すものとして、直ちに之を裁可し、公布を命じる。
憲法改正には、凡て內閣總理大臣其の他の國務大臣が署名することを必要とする。
- 第七十四條
皇室典範及び其の改正は、帝國議會の議決及び樞密院の諮詢を經て勅定される。
皇室典範を以て此の憲法の條規を變更することはできない。
- 第七十五條
憲法及び皇室典範は、攝政を置く間、之を變更してはならない。
戰時又は戒嚴が宣告された後解除されるまでの間についても、前項に準じる。
- 第七十六條
此の憲法は、國の最高法規である。
法律、規則、命令、又は何等の名稱を用ゐてゐるに拘らず、此の憲法の條規に反する法令、詔勅及び國務に關するその他の行爲の全部又は一部は、其の效力を有しない。
大日本帝國が締結した條約及び確立された國際法規は、之を誠實に遵守することを必要とする。
- 第七十七條
大日本帝國の領土は、本州、九州、四國及び北海道竝びに法律の定める其の他の部分からなる。
國は、現に外國に侵犯されてゐる領土の恢復に努めなければならない。又、外國による新たな領土侵犯の防止に努めなければならない。
- 第七十八條
大日本帝國の國旗は、日章旗である。
大日本帝國の國歌は、君が代である。
國旗の制式竝びに國歌の歌詞及び樂曲は、法律を以て定める。
- 第七十九條
大日本帝國の首都は、京都及び東京とする。
- 第八十條
憲法改正、法律及び條約竝びに其の他法律の定める詔勅及び命令は、官報で之を公布する。
憲法改正、法律、條約、詔勅及び命令の公布の形式に關する事項は、此の憲法の定の他、法律の定める所に依る。
第八章 經過規定
本章は改正時點で必要な經過事項について定めるべきものとし、本試案においては省略する。