レヴュー: 『司馬遷流「イスラーム史記」』

諸元

著者
三浦康之
發行
H&I 2003年
購入日
平成16年1月5日

イスラムの創始から、筆者がイスラムの古典時代と呼ぶ、おほよそ14世紀のイル・ハーン國滅亡までを扱つてゐる。

評者も漏れずさうであるが、日本では、日本史、支那史、或は西洋史については、ある程度の認識はあれども、イスラム史については、開祖ムハンマドがメッカのカアバ神殿の神像を破壞した邊りまでの理解に留まり、その後のイスラム諸王朝については、實に漠然としたイメージしか持たないのが實状ではないだらうか。

本書の文章は割に讀み易く、また、筆者は努めて理解を促すやうな工夫をしてゐると感じるのだが、それでも、前提知識に乏しいといふことで、內容を理解するのはなかなか大變であるやうに感ぜられた。

しかし、世の現状、イスラム世界と、それ以外の世界の相克なり相異なりを見る限り、我等日本人は、もう少しだけ、イスラムといふものについて、知る必要があるのは確かだと思ふ。本書は、その入り口としては、なかなか上手く出來てゐるのではないか、そのやうに思へる。

註記

平成21年4月19日作成。內容はそれ以前に短評として執筆したものを基にした。