虹 - 漢字私註

説文解字

虹
螮蝀也。狀似蟲。从聲。『明堂月令』曰、虹始見。
十三虫部
𧍺
籒文虹从。申、電也。

説文解字注

虹
螮蝀也。『釋天』曰、螮蝀謂之雩。螮蝀、虹也。《毛傳》同。狀佀虫。虫各本作蟲、今正。虫者、它也。虹似它。故字从虫。从虫工聲。戶工切。九部。『朙堂月令』曰、虹始見。季春文。
𧍺
籒文虹。从𦥔。會意。《𦥔部》曰、𢑚、籒文𦥔。𦥔、電也。電者、陰陽激燿也。虹似之。取以會意。

康煕字典

部・劃數
虫部三劃

『唐韻』戸公切『集韻』『韻會』『正韻』胡公切、𠀤音洪。『說文』螮蝀也。『禮・月令』季春、虹始見。孟冬、虹藏不見。『淮南子・說山訓』天二氣則成虹。『後漢・郞覬傳』凡日旁氣色白而純者、名爲虹。

又『字彙補』宛虹、龍也。

又草名。『拾遺記』背明國有虹草、花似朝虹之色。

又劒名。『魏文帝序』造百辟寶劒三、其一曰流彩虹。

又『集韻』『正韻』𠀤胡江切、音降。與訌同。潰亂。一曰爭訟相陷入之言也。『爾雅・釋言』虹、潰也。『詩・大雅』彼童而角、實虹小子。

又『廣韻』古巷切、音絳。『元稹・送客遊嶺南詩』山頭虹似巾。

又縣名、在泗州。『後漢・郡國志』沛國虹。

又『集韻』古送切、音貢。義同。

又胡貢切、音鬨。虹洞、相連也。『枚乗・七發』虹洞兮蒼天。『馬融・廣成頌』天地虹洞。又『韻補』戸孔切、音汞。『郭璞・鯨魚贊』壯士挺劒、氣激白虹。鯨魚潛淵、出而色悚。

『玉篇』籀文作𧍺

部・劃數
虫部九劃

『玉篇』籀文字。

部・劃數
虫部三劃

『篇海』同。『前漢・天文志』暈適背穴、抱珥𧈫蜺。『如淳註』𧈫、或作虹。

又『字彙補』𧈫𧈫、海外神名、有兩首。

又『古音略』音臬。義與霓蛪同。

音訓

(1) コウ(漢) 〈『廣韻・上平聲・東・洪』戸公切〉[hóng]{hung4}
(2) コウ(漢)
(1) にじ
(2) みだす。みだれる。

音義(2)は訌に通ず。藤堂は去聲送韻、官話發音をhòngとする。KO字源は江韻、字音假名遣をカウとする。『康煕字典』は『集韻』『正韻』を引き、胡江切、音降とする。

解字

白川

形聲。聲符は。工は左右にわたつて反りのあるもので、虹の胴體と考へられてゐる部分はその形。その頭は蜺字の從ふの形で、左右兩頭のものとされた。

『説文解字』に螮蝀なり。狀、虫に似たり。(段注本)とあり、虹は龍形の獸とされた。ゆゑにその字はみなに從ふ。その雄は虹、雌は蜺(霓)といふ。

籀文がに從ふのは電光の象で、この字に相應しくなく、字形に疑問がある。

藤堂

(蛇)と音符(貫く)の會意兼形聲。天空を貫く大蛇に見立てた呼び名。

落合

甲骨文は雙頭の龍の象形。當時は虹を雙頭の龍と看做す信仰があり、甲骨文では黃河に虹が架かることを「飲于河」と表現してゐる。異體字に蛇を意味するを意符、を聲符とする形聲の形があり、これが後代に繼承された。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. にじ。雙頭の龍として記述される。《合集》10405・驗辭昃亦有出虹、自北、飲于河。
  2. 虹の神格。自然神のひとつ。《合集》20278…酉卜扶、王嬪虹。

漢字多功能字庫

甲骨文は天上にアーチ狀に架かる虹に象る。古人は虹は二つの頭を持つ怪物であると考へてゐた。後にに從ひ聲の形聲字に改まつた。

古人は溪澗(溪谷、谷川)の上に架かる虹を、水を飲む生き物と考へ、故に「飲虹」の語がある。

王褒〈玄圃濬池临泛奉和〉石壁如明鏡、飛橋類飲虹。

戰國以後、古人は虹を雌雄に分ける。赤が外側、紫が内側で、色鮮やかなものを「雄虹」あるいは「正雄」と稱し、赤色が内側、紫が外側で、色が比較的淡いものを「副虹」あるいは「雌虹」と稱す。

甲骨文では本義に用ゐる。《合集》10405反㞢(有)出虹自北、飲于河。

郭沫若は、『説文解字』が虹を「螮蝀」と稱するのは、虹がリボンのやうな形をしてゐるため、とする。

屬性

U+8679
JIS: 1-38-90
常用漢字(平成22年追加)
𧍺
U+2737A
𧈫
U+2722B