老 - 漢字私註

説文解字

老
考也。七十曰老。从𠤎。言須髮變白也。凡老之屬皆从老。
老部

説文解字注

老
考也。』曰、五曰轉注、建類一首、同意相受、考老是也。學者多不解。戴先生曰、老下云考也、考下云老也。此許氏之恉。爲異字同義舉例也。一其義類、皆謂建類一首也。互其訓詁、所謂同意相受也。考老適於許書同部。凡許書異部而彼此二篆互相釋者視此。如𡫳窒也、窒𡫳也、但裼也、裼但也之類。老考以曡韵爲訓。七十曰老。『曲禮』文。从人毛𠤎。音化。按此篆葢本从毛𠤎。長毛之末筆。非中有人字也。『韵會』無人字。言須髮變白也。說會意之恉。盧晧切。古音在三部。凡老之屬皆从老。

康煕字典

部・劃數
部首
古文
𠄰

『廣韻』盧皓切『集韻』『韻會』『正韻』魯皓切、𠀤音栳。『說文』考也。七十曰老。从人毛匕、言須髮變白也。『禮・曲禮』七十曰老而傳。『公羊傳・宣十一年』使帥一二耋老而綏焉。《註》六十稱耋、七十稱老。

又『詩・鄭風』與子偕老。《疏》沒身不衰也。『禮・祭義』貴老。爲其近于親也。

又『周禮・地官・鄕老註』老、尊稱也。

又『儀禮・聘禮』授老幣。《註》老賔之臣。《疏》大夫家臣稱老。

又『禮・曲禮』國君不名卿老。《註》卿老亦卿也。

又『禮・王制』天子之老。《註》老謂上公。

又『禮・禮運』三老在學。《註》乞言、則受之三老。『左傳・昭三年』三老凍餒。《註》三老、謂上壽、中壽、下壽、皆八十已上。

又『左傳・隱三年』桓公立、乃老。《註》老、致仕也。

又『列子・天瑞篇』老、耄也。又姓。『廣韻』宋有老佐。

又『韻補』叶朗口切。『釋名』老、朽也。『史記・律書』酉者、萬物之老也。

又『韻補』叶滿補切、姥當以此得聲。『班固・西都賦』若臣者、徒觀迹於舊墟、聞之乎故老。十分未得其一端、故不能徧舉也。

部・劃數
二部七劃

『玉篇』古文字。註詳部首。

音訓

ラウ(漢、呉)〈『廣韻・上聲・晧・老』盧晧切〉[lǎo]{lou5}
おいる。おい。

解字

白川

耂と𠤎の會意。耂(老)は長髮の人の側身形。その長髮の垂れてゐる形。𠤎はの初文。化は人が死して相臥す形。衰殘の意を以て加へる。

『説文解字』に考なり。七十を老と曰ふ。人毛の𠤎するに從ふ。須(鬚)髮の白に變ずるを言ふなり。とするが、𠤎は人の倒形。

『左傳・隱三年』(上揭)桓公立ちて、乃ち老す。のやうに、隱居することをもいふ。

經驗が久しいので、老熟の意となる。

藤堂

象形。年寄りが腰を曲げて杖をついたさまを描いたもので、身體が硬く強張つた年寄り。

落合

象形。長髮の人物が杖をついてゐる形。長髮と杖は年長者の象徵であり、いづれも老人を表現してゐる。現用字形の匕の部分は杖と手の一部が變化したもの。甲骨文には杖がない異體字などもある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 老人。詳細な記述がなく、あるいは「長老」の意かも知れない。稱號としても用ゐられ、「老須」や「老[⿰⿵凡又攴]」などがある。《合集》16013貞、勿呼多老舞。
  2. 地名。《合集》22246癸丑卜、婦姼在老。
  3. 祭祀名。《殷墟花園莊東地甲骨》490辛亥卜、老家、其匃又妾又畀。
  4. 占卜語。吉か凶かは不明。《合集》17055王占曰、惟老、惟人。

は金文で老から派生した同源字。

漢字多功能字庫

甲骨文はに從ふ。丨は杖の形に象り、老字は背を丸めた長髮の杖を持つ人の形に象る。本義は老人。

甲骨文と金文の字形は相似してゐる。金文は杖をの形に作り、匕はまた誤つてとなる。また老字の上部は春秋以後變化が甚だしい(齊大宰歸父盤、叔尸鐘などを見よ)。そのうち夆弔匜の老字の上部は由に從ひ、疑ふらくは老の聲符となつたもの。

甲骨文では地名に用ゐる。《合集》22246帚(婦)姼才(在)老。

金文での用義は次のとほり。

戰國文字では年老いたるを指す。

按ずるに『說文解字・敘』に轉注者、建類一首、同意相受、考老是也。とあり、考、老の二字は「轉注字」とされる。『說文解字』が二字の關係を十分に明らかにしてゐないため、轉注の意味はずつと諸説が紛紜としてゐる。いま孫雍長が獨創的な新解釋を提示した。詳しくは考字條を見るべし。

屬性

U+8001
JIS: 1-47-23
當用漢字・常用漢字
𠄰
U+20130

關聯字

老に從ふ字

漢字私註部別一覽・人部・老枝に蒐める。