黃 - 漢字私註

説文解字

黃
地之色也。从、炗亦聲。炗、古文光。凡黃之屬皆从黃。
十三黃部
𡕛
古文黃。

説文解字注

黃
地之色也。从田。炗聲。炗、古文光。凡黃之屬皆从黃。
𡕛
古文黃。

康煕字典

部・劃數
部首
古文
𡕛

『唐韻』乎光切『集韻』『韻會』『正韻』胡光切、𠀤音皇。『說文』地之色也。『玉篇』中央色也。『易・坤卦』黃裳元吉。象曰、黃裳元吉、文在中也。『文言』君子黃中通理。

又『史記・天官書』日月五星所行之道曰黃道。

又山名。『前漢・東方朔傳』北至池陽、西至黃山。

又黃河。『爾雅・釋水』河出崑崙虛、色白、所渠幷千七百、一川色黃。

又地名。『春秋・哀十四年』公會晉侯及吳子于黃池。《註》陳留封丘縣南有黃亭。

又國名。『左傳・桓八年』楚子合諸侯于沈鹿、黃隨不會。《註》黃國、今弋陽縣。

又州名。古邾國、漢西陵縣、隋黃州。

又縣名。『前漢・地理志』黃縣屬東萊郡、內黃屬魏郡、外黃屬𨻰留郡。《註》縣有黃溝澤、故名。師古曰、惠公敗宋師于黃、杜預以爲外黃縣東有黃城、卽此地。

又中黃、天子內藏。『後漢・桓帝紀』建和元年、芝生於黃藏府。

又官名。『杜氏通典』乗黃令、晉官、主乗輿金根車。『又』晉以后、給事黃門侍郞、散騎常侍、俱屬門下省、稱曰黃散。

又老人曰黃髮。『禮・曲禮』君子式黃髮。《疏》人初老則髮白、太老則髮黃。『爾雅・釋詁』黃髮齯齒鮐背耈老、壽也。《疏》壽考之通稱。

又小兒曰黃口。『淮南子・汜論訓』古之伐國、不殺黃口。『高誘註』黃口、幼也。『唐開元志』凡男女始生爲黃、四歲爲小、十六爲丁、六十爲老。每歲一造計帖、三年一造戸籍、卽今之黃冊也。

又翠黃、飛黃、𠀤馬名。『淮南子・覽冥訓』靑龍進駕、飛黃伏皁。『詩・魯頌』有驪有黃。《註》黃騂曰黃。

又鵹黃、鳥名。『爾雅・釋鳥倉庚註』卽鵹黃也。

又黃目、卣罍類。『禮・郊特牲』黃目、鬱氣之上尊也。黃者、中也。目者、氣之淸明者也。

又大黃、弩名。『太公・六韜』陷堅敗强敵、用大黃連弩。『史記・李廣傳』以大黃射其裨將。

又大黃、地黃、硫黃、雄黃、雌黃、𠀤藥名。

又流黃、綵也。『古詩』少婦織流黃。『廣雅』作留黃。

又會稽竹簟供御、亦號流黃。『唐詩』珍簟冷流黃。

又『正字通』貼黃、卽古引黃。唐制、詔勑有更改、以紙貼黃、其表章略舉事目、見於前封皮者、謂之引黃。后世卽以引黃爲貼黃、不用黃紙。

又倉黃、急遽失措貌。『風土記』大雪被南越、犬皆倉黃吠噬。

又『玉篇』馬病色也。『爾雅・釋詁』虺隤、黃病也。《註》皆人病之通名、而說者便以爲馬病。『詩・周南』我馬虺隤。

部・劃數
夂部八劃

『集韻』古作𡕛。註詳部首。

異體字

いはゆる新字体。

音訓

クヮウ(漢) ワウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・唐・黃』胡光切〉[huáng]{wong4}
き。きばむ。

解字

白川

象形。卜文の字形は火矢の形かと思はれ、金文の字形は佩玉の形に見える。いづれも黃の聲義を含み得る字。

『説文解字』に地の色なりとし、字はとに從ふもので、光の聲を取るといふが、卜文、金文の字形は光を含む形ではない。

金文に長壽を「黃耇」といひ、黃は黃髮の意。

詩・周南・卷耳我馬玄黃(我が馬玄黃たり)、また『詩・小雅・何草不黃何草不黃(何の草か黄ばまざる)、何草不玄(何の草か玄まざる)の玄黃は、ともに衰老の色。

黃を土色、中央の色とするのは五行説によるもので、その説の起こつた齊の田齊(田・陳)氏の器に、黃帝を高祖とする文がある。

藤堂

象形。火矢の形を描いたもの。上部は(光)の略體。下は中央に膨らみのある矢の形で、油を染み込ませ、火を著けて飛ばす火矢。火矢の黃色い光を表す。

落合

金文をもとにに從ふ字とする説もあるが、甲骨文では矢に近い字形は少なく、を用ゐた字形が多いので、字源は人の腰の部分に佩玉を帶びた形と考へられる。殷代の玉器には黃色いものが多く、そこから黃色の字義を表したと思はれる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 黃色の。甲骨文には黃牛や黃璧などが見える。《殷墟花園莊東地甲骨》223戊卜、于己、入黃裘于丁。
  2. 地名またはその長。第五期(文武丁乃至帝辛代)には貞人(黃組)としても見える。《合補》11234・後半驗辭癸亥卜黃貞、王旬亡禍。在九月、征人方。在雇彝。
黃尹
殷の神である伊尹の別名。合文で表記することもある。《合補》521貞、侑于黃尹二羌。
黃兵
兵は兵器で、恐らく青銅製の兵器を指す。《合集》9468貞、勿賜黃兵。
黃金
青銅。は銅を指し、殷代の青銅は淡い金色を呈してゐたため、その色を黃と表示したもの。《英藏》2567王其鑄黃金奠、盟、叀今日乙未、利。
黃奭
神名。恐らく黃尹(伊尹)の配偶。伊奭ともいふ。《合集》9774侑犬于黃奭、卯三牛。

現用字は、金文で上部にのやうな形を加へたものを承ける。甲骨文にもごく僅かだが同樣の形が見える。

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天に向かつて頭を上げる人に象り、腹が大きく脹らむのは、胸肚が隆起し、體附きが太く短い癈人を表す(唐蘭、裘錫圭)。後に顏色の黃に用ゐる。古人には大旱魃で雨の降らないときに病人を焚燒して天に降雨を冀求する風俗があつた。『左傳・僖二十一年』夏、大旱、公欲焚巫尪。杜預注或以為尪非巫也、瘠病之人、其面上向、俗謂天哀其病、恐雨入其鼻、故為之旱、是以公欲焚之。後にまた病人を日に曝す習慣に變はつた。『禮記・檀弓下』天久不雨、吾欲暴尪而奚若。

黃はの本字。『呂氏春秋・明理』高誘注尪、短仰者也。『呂氏春秋・盡數』高誘注尪、突胸卬(仰)向疾也。いづれも尪は胸腹が隆起し體附きが太く短い病人であると説明する。黃の本義は病人で、また疾病を指すこともある。傳世文獻にも黃を病と訓ずる例がある。『爾雅・釋詁』黃、病也。按ずるに「黃病」の語は早く『説文解字』に見える。疸、黃病也。黃はあるいは人の肚の中の長蟲(蛇??)を指し、それによつて肚が鼓脹(鼓腸、腹水の類)する。

甲骨文の黃は人の腹の脹れる形に象り、舊く誤つて交と釋す。後に甲骨文はあるいは腹の上に飾筆を加へ、金文もまたこの種の書き方をし、また字の上にを加へ、以て天を仰ぎ嘆いて息を吐くの意を表す(季旭昇)。

甲骨文での用義は次のとほり。

《合集》916正㞢(侑)于黃尹十伐、十牛。は、十人の人牲、十頭の牛を用ゐて伊尹に對して侑祭を行ふことを指す。

金文での用義は次のとほり。

戰國竹簡での用義は次のとほり。

黃はもと疾病を指し、後に顏色の黃と解き、全く假借に屬する。梁東漢は、黃病(黃疸)を患ふ者は多く皮膚が黃色いとする。『史記・扁鵲倉公列傳』は黃病の症狀は腹大、上膚黃粗を含むと述べる。故に本義から派生して黃色の意を有する。

按ずるに『説文解字』の述べるところは黃字の本義ではない。

屬性

U+9EC3
JIS: 1-94-81
人名用漢字
𡕛
U+2155B
U+9EC4
JIS: 1-18-11
當用漢字・常用漢字

關聯字

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