成 - 漢字私註

説文解字

成

就也。从聲。氏征切。

十四戊部
𢦩

古文成从徐鍇曰、戊中宮成於中也。

説文解字注

本文には異同なく、註には氏征切。十一部。といふのみ。

康煕字典

部・劃數
戈部・三劃
古文
𢦩

『唐韻』是征切『集韻』『韻會』『正韻』時征切、𠀤音城。『說文』就也。『廣韻』畢也。凡功卒業就謂之成。

又平也。『周禮・地官・調人』凡過而殺傷人者、以民成之。《疏》成、平也。非故心殺傷人、故共鄕里和解之也。『詩・大雅』虞芮質厥成。又『左傳・隱六年』鄭人來輸平。『公羊傳』輸平猶墮成也。『文七年』惠伯成之。

又終也。凡樂一終爲一成。『書・益稷』簫韶九成。『儀禮・燕禮』笙入三成。《註》三成謂三終也。

又善也。『禮・檀弓』竹不成用。《註》成、猶善也。

又『周禮・天官・大宰』八灋五曰官成。《註》官成、謂官府之成事品式也。又『秋官・士師』掌士之八成。《註》八成者、行事有八篇、若今時決事比也。『釋文』凡言成者、皆舊有成事品式。

又必也。『吳語』勝未可成。《註》猶必也。

又倂也。『儀禮・旣夕』俎二以成。《註》成、猶倂也。

又『禮・王制』司會以歲之成質于天子。《註》計要也。『周禮・天官・司會』以參互攷日成、以月要攷月成、以歲會攷歲成。

又『司馬法』通十爲成。『周禮・冬官考工記』方十里爲成。『左傳・哀元年』有田一成。

又重也。『爾雅・釋地』丘一成爲敦丘。《註》成、猶重也。周禮曰、爲壇三成。《疏》言丘上更有一丘、相重累者。

又『釋名』成、盛也。

又『諡法』安民立政曰成。

又州名。古西戎白馬氏國、西魏置成州、唐同谷郡。

又姓。周武王子成伯之後。又盆成、陽成、皆複姓。

又『集韻』辰陵切、音承。本作。或省作成。地名。

又『韻補』叶𨻰羊切、音常。《范蠡曰》得時不成、反受其殃。又『史記・龜筴傳』螟螽歲生、五穀不成。叶上祥。

部・劃數
戈部・五劃

『說文』古文字。註詳三畫。

音訓

セイ(漢) ジャウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・清・成』是征切〉[chéng]{sing4/seng4/cing4}
なる。なす。たひらぐ。たひらぎ。

粤語では成數の語に限つてはcing4と讀む模樣。

解字

古い字形は、ではなくに從ふ形に見える。

白川

の會意。

『説文解字』にるなり。戊に從ひ、丁聲。とするが、卜文、金文の字形は、戈に綏飾としての丨を加へる形。

器の制作が終はつたときに、綏飾を加へてお祓ひをする意で、それが成就の儀禮であつた。就は凱旋門である京の完成のときに、犬牲を加へて、いはば竣工式を行ふ意。すべて築造や制作の完成の時には、その成就の儀禮を行つた。

藤堂

と音符の會意兼形聲。丁は、打つて纏め固める意を含み、打の原字。成は、纏め上げる意を含む。

落合

甲骨文は、を加へた會意字。丁、成は上古音で同部であり、丁亦聲かも知れない。甲骨文では、丁は城壁の形として使はれることが多いので、武器で都市を守備することが原義であらう。

【補註】作例に、丁に從ふ形のほか、丁を短い縱劃に替へる形、丁をに替へる形を擧げる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 王名。殷の建國者とされる大乙の名。
    • 《合補》庚子卜貞、侑于成。
    • 《殷墟花園莊東地甲骨》318甲子卜、福成、鬯祖甲。用。
  2. 地名またはその長(丁を短縱劃に替へる字體) 。《屯南》762叀成田、湄日亡災。
成戊
神名(丁を口に替へる字體)。『尚書』などに見える巫咸(太甲の臣)とも言はれるが、甲骨文には詳細な記述がない。《合補》6570丁未卜扶、侑成戊。

後代には轉じて「成立」や「完成」などの意味で用ゐられた。

丁を短い縱線に簡略化した形が後代に繼承され、戌とで成の字體となつた。

また口に從ふ異體字は、後に咸として分化したが、甲骨文の段階では未分化。(補註: 漢字多功能字庫は當該字を咸の甲骨文として擧げる。)

漢字多功能字庫

甲骨文に二種類の字形がある。一つ目はに從ふ。一説には戌とに從ひ、丁は聲符といふ。甲骨文の囗と丁は同じ形で、囗は城邑の形に象り、戌は斧鉞に象り、武器を以て城の周りを守る意と解き、の初文(季旭昇、李艷)。

二つ目の字形は戌と小さい縱劃(丨)に從ふ。季旭昇は、丨はの省形とする。李艷は、木杭の形に象るとする。聚居地を代表し、その表す義と囗の表す城邑とは同じ。

金文は甲骨文の二つ目の字形を承ける。春秋戰國金文では小縱劃の中間に圓點を飾りに加へる。

甲骨文の囗に從ふ成字は大乙の廟號で、あるいは唐と稱し、商の建國者の成湯のこと。小縱劃に從ふ成字は多く地名や牲法に用ゐる。

金文での用義は次のとほり。

屬性

U+6210
JIS: 1-32-14
當用漢字・常用漢字
𢦩
U+229A9

關聯字

成に從ふ字を漢字私註部別一覽・戉部・成枝に蒐める。