戊 - 漢字私註

説文解字

戊
中宮也。象六甲五龍相拘絞也。戊承、象人脅。凡戊之屬皆从戊。
十四戊部

康煕字典

部・劃數
戈部(一劃)

『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤莫𠋫切、音茂。十幹之中也。物皆茂盛也。『爾雅・釋天』歲在戊曰著雍、月在戊曰厲。

又『集韻』莫後切、音牡。義同。『詩・小雅』吉日維戊。《朱傳》戊、剛日也。凡外事用剛日、宣王田獵、外事也、故用剛日。

○按五代史梁開平元年、改日辰戊字爲武、避諱也。後人讀戊音爲武音、其譌由此。

音訓

ボ(慣) ボウ(漢) 〈『廣韻・去聲・𠋫・茂』莫候切〉
つちのえ。ほこ。

解字

白川

象形。兵器の形に象る。斧や鉞に近い柄のある矛の形。

『説文解字』に字を十干の一とし、中宮なり。六甲五龍、相ひ拘絞するに象る。戊は丁を承け、人のむねに象る。とするが、その形には見えない。中宮は五行の中、六甲は干支六十日のうちに六甲があること、五龍は五辰で五行、すべて干支を以て説くが、字形とは關係がない。十干を五行を以て説くのは、六國以後のことであらう。

藤堂

象形。戉(まさかり)に似た武器を描いたもので、その根元の穴が柄に被さるのでボウ(冒)といふ。

のち十干の序數に當てたため、原義は忘れられた。

戈の一種で、矛(突く武器)とは形が異なる。

落合

象形。の刃先を廣くした形。の刃先以外を狹くした形かも知れない。

甲骨文では專ら十干の五番目として用ゐられ、原義での用例はない。《甲骨綴合集》166・末尾驗辭丁亥卜內、翌戊子、不其雨。戊霧、不雨。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、斧鉞の一種の武器の形に象る。本義は斧。後に假借して十干の五番目となす。

甲骨文の戊字の斧刃の弧形は内向きに凹み、の斧刃が外向きに出つ張つてゐるのと區別がある。金文は變形して斧刃が外向きに出つ張る形になり、戉と字形が混じり、部分字形は更にの字形と混じり、ただ辭例に據り區別をする。

甲骨文、金文での用義は次のとほり。

《郭店楚簡・老子甲本》簡34未知牝戊之合陰怒、精之至也。の「戊」字は馬王堆帛書や王弼本『老子』では「牡」に作り、「牝戊」は「牝牡」のこと。

屬性

U+620A
JIS: 1-42-74
人名用漢字

關聯字

戊聲の字