辨 - 漢字私註

説文解字

辧

判也。从聲。蒲莧切。

刀部

説文解字注

辧

判也。〔周禮・天官〕小宰』「傅別」、故書作「傅辨」。『〔同・秋官〕朝士』「判書」、故書判爲辨。大鄭辨讀爲別。古辨三字義同也。辧從刀、俗作辨、爲辨別字。符蹇切。別作從力之辦、爲幹辦字。蒲莧切。古辧別幹辧無二義。亦無二形二音也。

从刀辡聲。十二部。

康煕字典

部・劃數
辛部・九劃

『集韻』『韻會』皮莧切『正韻』備莧切、𠀤音辯。音2『說文』判也。『廣韻』別也。『易・乾卦』問以辨之。『禮・學記』離經辨志。《註》辨、謂考問得其定也。『周禮・天官』弊羣吏之治、六曰廉辨。《註》辨、謂辨然于事分明、無有疑惑也。

又『韻會』牀䏶足笫閒也。『易・剝卦』剝牀以辨。《疏》牀足之上、牀身之下、分辨處也。《程傳》牀之幹也。

又變也。『楚辭・九辨註』辨者、變也。謂𨻰道德以變說君也。

又井地之數也。『禮・王制・註』京陵之地、九夫爲辨、九辨而當一井。

又姓。

又『集韻』𤰞見切、音徧。音3通。帀也。『史記・禮書』萬民和喜、瑞應辨至。《註》同徧。

又『廣韻』苻蹇切『集韻』『韻會』平免切『正韻』婢免切、𠀤辯上聲。音1義同。

又『集韻』邦免切、鞭上聲。音4義同。

又與貶通。音5補注『禮・玉藻』立容辨𤰞、無讇。《註》辨作貶。容雖貶損𤰞降、不傾側柔媚也。

又『廣韻』普麪切『集韻』『正韻』匹見切、𠀤音片。音6革中斷也。『爾雅・釋器』革中絕謂之辨、革中辨謂之韏。《註》革中斷之名辨、復中分其辨名韏。『集韻』作㸤。

部・劃數
辛部・九劃

。『說文』判也。

『字彙』从力與从刀不同、力取致力之義、刀取判別之義。

音訓義

ベン(呉) ヘン(漢)⦅一⦆
ベン ハン(推)⦅二⦆
ヘン(推)⦅三⦆
ヘン(推)⦅四⦆
ヘム(推)⦅五⦆
ヘン(推)⦅六⦆
ハン(推)⦅七⦆
ヘン(推)⦅八⦆
わかつ⦅一⦆
わきまへる⦅一⦆
官話
biàn⦅一⦆
bàn⦅二⦆
piàn⦅六⦆
粤語
bin6⦅一⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・上聲』符蹇切
集韻・上聲下𤣗第二十八』平免切
『五音集韻・上聲卷第八・獮第十一・並三辯』符蹇切
聲母
並(重唇音・全濁)
等呼
重紐三
推定中古音
bɪɛn
官話
biàn
粤語
bin6
日本語音
ベン(呉)
ヘン(漢)
わかつ
わきまへる
分ける。區別する。辨證。辨別。辨明。
に通ず。
『廣韻』: 別也。『說文』判也。又蒲莧切。
『集韻』: 平免切。別也。文六。
『康煕字典』上揭

⦅二⦆

反切
『廣韻・去聲・襇・瓣』蒲莧切
『集韻・去上・襉・瓣』皮莧切
『五音集韻・去聲卷第十一・諫第十・並二瓣』蒲莧切
聲母
並(重唇音・全濁)
等呼
推定中古音
bɐn
官話
bàn
日本語音
ベン
ハン(推)
分かつ。辨別する。⦅一⦆に同じ。
處理する。辨理。辨償。辦と通用。
具へる。辦と通用。
『廣韻』辨: 具也。『周禮』云「以辨民器」。又步免切。 @b(辦: 俗。
『集韻』: 具也。通作辨。
『集韻』: 『說文』判也。
『康煕字典』上揭
補注
『康煕字典』、KO字源は、主要義に本音を示す。
ベンの音はKO字源に據る。表示は無いが呉音と思しく、故に推定音(漢音)を示す。

⦅三⦆

反切
『集韻・去下・霰・徧』卑見切
『五音集韻・去聲卷第十一・線第十一・幫四徧』方見切
聲母
幫(重唇音・全清)
等呼
日本語音
ヘン(推)
に通じ、あまねし。
『集韻』徧遍辯辨: 卑見切。『說文』帀也。或从辵。亦作辨。文五。
『康煕字典』上揭

⦅四⦆

反切
集韻・上聲下𤣗第二十八』邦免切
『五音集韻・上聲卷第八・獮第十一・幫三辡』方免切
聲母
幫(重唇音・全清)
等呼
重紐三
日本語音
ヘン(推)
『集韻』: 別也。『周禮』「辨方正位」劉昌宗讀。
『康煕字典』上揭

⦅五⦆

反切
『集韻・上下・儼・貶』悲檢切
『五音集韻・上聲卷第九・琰第十二・幫三貶』方歛切
聲母
幫(重唇音・全清)
等呼
重紐三
日本語音
ヘム(推)
貶に同じ。
『集韻』貶𧸘辨: 悲檢切。『說文』損也。或作𧸘辨。文六。
補注
『康煕字典』(上揭)に與貶通とするが音貶は示さず。

⦅六⦆

反切
『廣韻・去聲・霰・片』普麵切
『集韻・去下・霰・片』匹見切
『五音集韻・去聲卷第十一・線第十一・滂四騗』匹戰切
聲母
滂(重唇音・次清)
等呼
官話
piàn
日本語音
ヘン(推)
㸤に同じ。
『廣韻』: 『爾雅』革中絶謂之㸤。革、車轡勒也。本亦作辨。
『集韻』: 旋流也。『爾雅〔釋水〕』過辨回川。
『康煕字典』上揭
補注
官話は教育部異體字字典に據る。

⦅七⦆

反切
『集韻・平二・𠜂・班』逋還切
『五音集韻・中平聲卷第四・山第十・幫二班』布還切
聲母
幫(重唇音・全清)
等呼
日本語音
ハン(推)
に同じ。
『集韻』班辨: 逋還切。『說文』分瑞玉。一曰、次也、別也。或作辨。亦姓。文二十三。

⦅八⦆

反切
集韻・上聲下𤣗第二十八』俾緬切
『五音集韻・上聲卷第八・獮第十一・幫四褊』方緬切
聲母
幫(重唇音・全清)
等呼
重紐四
日本語音
ヘン(推)
㦚に同じ。
『集韻』辨𢣑: 『說文』憂也。一曰急也。或作𢣑。

解字

作例の出現時期からしても、字義からしても、が先にあつて辨がその聲に從ふとする説明は怪しむべきかと按ずる。

白川

形聲。聲符は。辡は當事者二人が盟誓をして爭訟を行ふ意。

『說文』にわかつなりとあり、字を剖、の間に列して分割の意とするやうであるが、辨はもと爭訟に對して是非の判斷を加へる意であり、裁判することをいふ。

藤堂

と音符(二つに分ける)の會意兼形聲。刀ですつぱりと切り分けるやうに、物事の白黑をはつきりさせるさまを示す。

落合

が意符、が聲符の形聲字。「切り分ける」が原義。引伸義で「區別する」(辨別など)や「明らかにする」(辨證など)としても使はれる。また「處理する」(辨理など)の意味でも使はれてゐるが、本來は辦が使用されてをり、借形(類似字形による代用)に當たる。

漢字多功能字庫

金文は二に從ふ。䇂は『說文』に愆の若く讀むとされ、亦聲符。刀を二つの䇂の間に置き、刀を以て物を二つに分ける意に解き、本義は切り分けること。引伸して辨別、辨析の意。

金文の䇂旁は小子生尊に見えるやうにに變形することがある。䇂と辛は、䇂は縱劃が左あるいは右に彎曲し、辛の縱劃は垂直であることで區別する。

金文での用義は次のとほり。

簡帛文字での用義は次のとほり。

屬性

U+8FA8
JIS: 1-49-94
U+8FA7
JIS: 1-50-1
別字衝突
U+5F01
JIS: 1-42-59
當用漢字・常用漢字

關聯字

別字。弁を辨の新字体に用ゐる。