羊 - 漢字私註

説文解字

羊
祥也。从𦫳、象頭角足尾之形。孔子曰、牛羊之字以形舉也。凡羊之屬皆从羊。
羊部

説文解字注

羊
祥也。㬪韵。『〔周禮〕考工記・注』曰、羊、善也。按譱義羑美字皆从羊。从𦫳、象四足尾之形。謂干也。與章切。十部。孔子曰、牛羊之字、以形舉也。許多引孔子言。如黍羊、皆是也。凡羊之屬皆从羊。

康煕字典

部・劃數
部首

『廣韻』與章切『集韻』『韻會』余章切『正韻』移章切、𠀤音陽。『說文』羊、祥也。从𦫳、象頭角尾之形。孔子曰、牛羊之字、以形舉也。『玉篇』豕屬也。『易・說卦』兌爲羊。《註》其質好剛鹵。『詩・召南』羔羊之皮。《傳》小曰羔、大曰羊。『禮・曲禮』羊曰柔毛。『月令』食麥與羊。《註》羊、火畜也。時尚寒、食之以安性也。

又麢羊。『爾雅・釋獸』麢、大羊。《註》似羊而大、角圓銳、好在山崖閒。

又鳥名。『家語』齊有一足之鳥、飛集于公朝。齊侯使使問孔子、孔子曰、此鳥名商羊、水祥也。

又姓。『左傳・閔二年』羊舌大夫。《註》羊舌、氏也。『公羊傳疏』子夏傳與公羊高。『史記・梁孝王世家』齊人羊勝。

又官名。『周禮・夏官・羊人註』羊屬南方火、司馬火官、故在此。

又白羊、匈奴國名。『史記・匈奴傳』幷樓煩、白羊、河南。

又『前漢・禮樂志』雙飛常羊。《註》猶逍遙也。『屈原・離騷』聊逍遙以相羊。《註》逍遙、相羊、皆遊也。

音訓

ヤウ(漢、呉) 〈『廣韻・下平聲・陽・陽』與章切〉[yáng]{joeng4}
ひつじ

解字

白川

象形。羊を前から見た形で、と同じ書き方。

『説文解字』に祥なりと疊韻を以て訓ずる。

漢代の鏡銘や瓦塼の類に、羊を字に用ゐることが多いが、省文に過ぎない。

羊は羊神判に用ゐ、祥、善の字は羊に從ふ。

卜辭に羌人を犧牲とするものが多いが、彼等が牧羊族であつたことと關聯があるかも知れない。

藤堂

象形。羊を描いたもの。美味しくて、良い姿をしたものの代表と意識され、養、善、義、美などの字に含まれる。

落合

羊の頭部の象形。甲骨文の上部は羊の曲がつた角を表現し、下部の短い斜線は目か耳に當たる。その他の部分はと同樣に一本の縱劃に簡略化されてゐる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. ひつじ。《殷墟小屯中村南甲骨》447丁巳卜、侑于父己羊十。
  2. 祭祀名。神に羊を捧げること。《殷墟花園莊東地甲骨》409丙卜、叀羊于妣丁。
  3. 地名またはその長。第一期(武丁代)には領主が婦羊とも呼ばれてゐる。また殷金文の圖象記號にも見える。《合集》28215貞、羊受年。

甲骨文の異體字に角と頭部を分ける記號を加へた形があり、これが後代の字形の元になつてゐる。現用の字形の橫三劃のうち二劃目に當たる。

角を強調した字形は嶽の初文([⿱羊山])にも用ゐられてゐる。また同じ形が後代に羋に分化したとする説もあるが、金文、古文には羋が見えず、繼承關係は確實ではない。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は羊の頭に一對の彎曲した角のある形に象り、本義は羊。古人は羊を吉祥の動物とし、今も一部の少數民族がなほ節日や喜慶の時節に羊角の銀の飾りを戴く習俗を保存してをり、羊に從ふ漢字の大部分が美善吉祥の義を有する所以である。古今の詩文に羊、を竝び述べる例は澤山ある。清・樂鈞『青芝山館詩集・宋畫苑待詔勾龍爽邨莊嫁娶圖卷子』比鄰羊酒祝宜男、入室公姑賀祥女。一日相歡百歲親、妾自紡績郎耕耘。

羊と祥の意味や讀音は密接であり、金文や戰國竹簡で羊字をまた通讀して祥となし、吉祥を表す所以である。

羊字はまた漢字のとても重要な構成要素である。

甲骨文、金文の用義は次のとほり。

漢帛書では讀んで詳となし、詳細を指す。《馬王堆帛書・戰國縱橫家書・蘇秦獻書趙王章》第236行臣願王兵〈與〉下吏羊(詳)計某言而竺(篤)慮之也。臣は王と下吏が詳細に謀りを巡らせて話すこと、周到に考慮することを願ふ、の意。

屬性

U+7F8A
JIS: 1-45-51
當用漢字・常用漢字

關聯字

羊に從ふ字を漢字私註部別一覽・羊部に蒐める。