象 - 漢字私註

説文解字

象
長鼻牙、南越大獸、三秊一乳、象耳牙四足之形。凡象之屬皆从象。
象部

説文解字注

象
南越大獸。長鼻牙。三年一乳。象耳牙四足尾之形。凡象之屬皆从象。

康煕字典

部・劃數
豕部五劃
古文
𤉢

『唐韻』徐兩切『集韻』『韻會』『正韻』似兩切、𠀤詳上聲。『說文』長鼻牙、南越大獸、三年一乳、象耳牙四足之形。『爾雅・釋地』南方之美者、有梁山之犀象焉。《疏》犀、象二獸、皮角牙骨、材之美者也。『詩・魯頌』元龜象齒。『左傳・襄二十四年』象有齒以焚其身、賄也。『禮・玉藻』笏、諸侯以象、士竹本象可也。

又『王安石・字說』象牙感雷而文生、天象感氣而文生、故天象亦用此字。『易・繫辭』在天成象。《疏》謂懸象日月星辰也。『禮・樂記・註』象、光耀也。

又『韓非子・解老篇』人希見生象也、而得死象之骨、按其圖以想其生也、故諸人之所以意想者、皆謂之象也。『易・繫辭』象也者、像此者也。《疏》言象此物之形狀也。『左傳・桓六年』申繻曰:名有五、以類命爲象。《註》若孔子首象尼丘。『周禮・春官・大卜』以邦事作龜之八命、二曰象。《註》謂災變雲物如衆赤鳥之屬、有所象似。『前漢・王莽傳』白煒象平。《註》象、形也。萬物無不成形于西方。

又法也。『書・舜典』象以典𠛬。《傳》法用常𠛬、用不越法。『儀禮・士冠禮』繼世以立諸侯、象賢也。《註》象、法也。

又象魏、門闕也。一曰書名。『周禮・天官・大宰』正月之吉、縣治象之法于象魏。《疏》周公謂之象魏、雉門之外、兩觀闕高魏魏然也。『左傳・哀三年』命藏象魏。《疏》由其縣于象魏、故謂其書爲象魏。

又象尊、酒器。『左傳・定十年』犧、象不出門。《疏》象尊以象鳳凰。或曰以象骨飾尊。『三禮圖』云:當尊腹上畫象之形。『禮・明堂位』犧象、周尊也。

又通言之官。『禮・王制』南方曰象。《註》劉氏曰:象、像也。如以意倣象、其似而通之、周官象胥是也。

又舞名。『詩・周頌序』維淸奏象舞也。『正義』文王時有擊刺之法、武王作樂、象而爲舞、號其樂曰象舞。『禮・內則』成童舞象。『史記・樂書』文王之舞、舞之以未成人之童、故謂之象舞。

又象人、若今戲蝦魚、獅子者也。『前漢・禮樂志』郊祭、常從象人四人。

又罔象、水怪名。『史記・孔子世家』水之怪龍、罔象。《註》罔象食人、一名沐腫。

又藥名。『本草綱目』盧會、一名象膽、以其味苦如膽也。

又象敎。卽佛敎也。『王中・頭陀寺𥓓』正法旣沒、象敎陵侇。《註》謂爲形象以敎人也。又郡名、州名、山名。『史記・秦始皇紀』三十三年爲象郡。《註》今日南。又百越地、𨻰置象郡、因象山名。隋平𨻰置象州。

又姓。『姓苑』潁州望族。今南昌有此姓。

又『正字通』象有平、上、去三聲、諸韻書收入養韻、漾韻不收、『正韻』亦然。『六書』有一字備四音者、有轉十數音者、獨至象必限以一音、此古今分韻之謬也。

又叶徐羊切、音詳。『晉書・樂志・地郊饗神歌』祇之體、無形象。潛泰幽、洞忽荒。

部・劃數
火部八劃

『玉篇』古文字。註詳豕部五畫。

部・劃數
豕部五劃

『正字通』俗字。

音訓

シャウ(漢) ザウ(呉) 〈『廣韻・上聲・養・像』徐兩切〉
きさ。かたち。かたどる。

解字

白川

象形。長鼻の獸である象の形に象る。

説文解字に南越の大獸なり。長鼻、牙あり。三年にして一たび乳す。耳牙四足尾の形に象る。(段注本)といふ。

卜辭に「象をんか」と卜するものがあり、當時は江北に象が棲息してをり、捕獲して土木工事に使役してゐたやうである。「爲す」のは象の上に手を加へる字形で、象を使役する意。築營のことを爲といつた。

殷虛の婦好墓からは象牙杯が多く出土し、『孟子・滕文公下』に、周初に驅虎、豹、犀、象而遠之。(虎、豹、犀、象を驅りて之れを遠ざく)とあり、象は古く江北の地にも群棲してゐたことが知られる。

象を象徴の意に用ゐるのは、祥との通用義であらう。

相似の意は、像、樣の意。

藤堂

象形。象の姿を描いたもの。象は、最も目立つた大きい形をしてゐるところから、かたちといふ意味になつた。

落合

象の象形。甲骨文の上部には象の長い鼻が表現されてをり、現用の字形にも殘る。殷代は氣候が溫暖で、黃河流域にも象が棲息し、狩獵の對象にもなつてゐる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 大型動物の一種の象。狩獵の對象になつてゐる。《合補》11295・末尾驗辭辛未王卜貞、田[⿱叀口]。往來亡災。王占曰、吉。獲象十、雉十又一。
  2. 地名またはその長。第五期(文武丁乃至帝辛代)には領主が象侯發と呼ばれてゐる。また殷金文の圖象記號にも見える。《合補》1248貞、勿令[⿰日索]从象、弗其受…。
象侯發
人名。第五期(文武丁乃至帝辛代)。象の領主。《合集》36344春、象侯發…尤眔二[⿰女本]、余其从…戔、亡左。

甲骨文の段階では兔と字形が近く、一部に混同が見える。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、象の側面形に象る。象の長い鼻が突出してゐる。本義は象、後に轉じて抽象、形象の象となす。

韓非は、北方には象があまり見えず、人々は象の骨からその形狀を想像したので、想像することを象と稱するとする。『韓非子・解老』人希見生象也、而得死象之骨、案其圖以想其生也、故諸人之所以意想者皆謂之象也。今道雖不可得聞見、聖人執其見功以處見其形、故曰、無狀之狀、無物之象。後にを加へて像字を分化し、雕像、塑像の義を表す。

戰國文字の象と兔は相混じる。商承祚は最も早く兔と象の區別を示した。兔の尾は短く上に撥ね、象は尾を下に垂れる。しかし部分字形が既に變形して區別を得難い。

甲骨文、金文での用義は次のとほり。

戰國竹簡での用義は次のとほり。

屬性

U+8C61
JIS: 1-30-61
當用漢字・常用漢字
𤉢
U+24262
𧰼
U+27C3C

關聯字

象に從ふ字

象聲の字