臾 - 漢字私註

説文解字

臾
束縛捽抴爲臾。从
十四申部

康煕字典

部・劃數
臼部二劃

『唐韻』『集韻』𠀤求位切、音匱。同。『說文』草器也。古象形。引【論語】荷臾而過孔氏之門。或作䕚。○按【論語】今作蕢。

又『廣韻』羊朱切『集韻』『韻會』容朱切『正韻』雲居切、𠀤音余。『儀禮・燕禮』寡君有不腆之酒、以請吾子之與寡君須臾焉。『中庸』道也者、不可須臾離也。

又姓。『左傳・文六年』賈季奔狄、宣子使臾駢送其帑。

又人名。『史記・封禪書』黃帝得寶鼎宛朐、問於鬼臾區。『淮南子・汜論訓』臾兒、易牙、湽澠之合者、嘗一哈水、而甘苦知矣。《註》臾兒、易牙、皆齊之知味者也。

又國名。『左傳・僖二十一年』任宿、須句、顓臾、風姓也。《註》顓臾在泰山南、武陽縣東北。又『字彙補』鳧臾、東方國名。卽扶餘也。

又『荀子・大略篇』語曰、流丸止于甌臾、流言止于智者。

又『集韻』『韻會』𠀤勇主切、音庾。『周禮・冬官考工記・弓人』往體多、來體寡、謂之夾臾之屬。《註》夾臾之弓、合五成規。《疏》夾臾、反張多隨、曲執向外。『釋文』臾、音庾。

又『正韻』尹竦切、音勇。縱臾、與慫慂通。詳心部字註。

又『韻補』叶兪戍切、音裕。『漢・廣陵厲王歌』奉天期兮不得須臾、千里馬兮駐待隅路。

第一項は説文解字にいふの古文の解説と取るべきか。

部・劃數
曰部二劃

『正字通』俗字。○按『說文』作臾、在申部。『字彙』附臼部。詳臼部臾字註。

音訓・用義

ユ(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・虞・逾』容朱切〉
ヨウ(漢) 〈『正韻』尹竦切、音勇〉

臾曳とは、ひくこと。

須臾とは、しばらく、少しの間の意。

縱臾とは、すすめるの意、慫慂に同じ。

解字

白川

象形。人が腰に手を掛けてゐる形に象る。

『説文解字』に束縛して捽抴するを臾と爲すとあり、捽は頭髮を摑む、抴は押し倒すといふほどの意味。

須臾はしばらくの意であるが、『漢書・賈山傳願少須臾毋死(願はくはしばらく須臾して死すこと毋かれ)の須臾は從容の意であり、左右の手を腰に當ててくつろぐ姿をいふ。すなはち腴の初文と見てよい。

『説文解字』に字形を申に從ひ乙に從ふとするが、は電光の象。臾は𦥑とに分ち得るが、その全體を象形と見てよい。

藤堂

𦥑(兩手)と丨(引つ張る)と乀(橫へ引き拔く)の會意。ぬくと訓じ、そつと橫へ引き拔く意。

落合

會意。甲骨文はまたは𦥑に從ひ、人の頭部を兩手で捕らへる形。異體字にはに從ふ字形などがある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. 名詞。捕虜であらう。《合集》1107乙巳卜㱿貞、我勿有令馘、弗其臾用王。
  2. 祭祀名。捕虜を犧牲にすることであらう。《合集》19830…臾大甲、侑。
  3. 地名。《合集》37474壬申卜貞、王…田臾、往來亡災。

後代には字義が轉じて「引き止める」などの意で用ゐられた。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は兩手とその間のに從ひ、兩手を用ゐて人の頭部を捉へあるいは頭髮を引つ張り、引つ張つて行くさまに象る(王筠、于省吾)。後に兩手は𦥑に變形した。王筠『說文句讀』束縛其人、捽持其髮而拖之也。後に須臾の臾に假借し、片刻、短暫を表す。『荀子・勸學』吾嘗終日而思矣、不如須臾之所學也。

甲骨文での意義は不明。《合集》1107臾用王を、何琳儀は『集韻』を引いて善を表すとするが、詳解はない。

金文では人名に用ゐる。師臾鐘師臾其萬年永寶用亯(享)。師は官名、軍事の長官の一種。臾は人名。師臾は萬年永遠にこの鐘を珍重し、享祭に用ゐ、祖先を祭祀するの意。

戰國竹簡では古代の陰陽家の占卜術の一種を指す。《睡虎地秦簡・日書甲種》簡135正禹須臾、『後漢書・方術傳』須臾、李賢注須臾、陰陽吉凶立成之法也。今書『七志』有『武王須臾』一卷。(參・睡虎地秦墓竹簡整理小組) 日書にいふ「須臾」は占卜術の一種で、「禹須臾」あるいは「武王須臾」と稱し、一類の占卜術を禹や武王に假託し、禹や武王と關はりがあり、あるいは禹や武王に起源を持つ占卜であることを表す。

漢帛書では萸の通假字となす。《馬王堆・五十二病方》第271行「「薑、椒、朱(茱)臾(萸)」。「茱萸」は植物の名で、香氣辛烈、藥とすることができる。古俗では、農歷九月九日重陽節に茱萸を帶びて邪を除き惡を退ける。

屬性

U+81FE
JIS: 1-71-44
U+3B30

関聯字

臾聲の字