今 - 漢字私註

説文解字

今
是時也。从从㇇。㇇、古文及。
説文解字注は㇇をにつくる。意義は同じ。
亼部

康煕字典

部・劃數
人部二劃

『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤居吟切、音金。『說文』是時也。『廣韻』對古之稱。『詩・召南』迨其今兮。『毛傳』今、急辭也。『朱傳』今、今日也。不待吉也。

又『圓覺經』無起無滅、無去來今。《註》謂過去見在未來三世。

又『韻補』叶居靑切、音京。『詩・周頌』有椒其馨、胡考之寧。匪且有且、匪今斯今。

又叶居良切、音姜。『易林』庭爎夜明、追古傷今。陽弱不制、隂雄坐房。

从亼𠃌會意。𠃌、古文及字。巳往爲古、逮及爲今。

音訓

コム(呉) キム(漢) 〈『廣韻・下平聲・侵・金』居吟切〉
いま。ただちに。このとき。もし。

解字

白川

もと象形字。壺などの蓋栓の形を象る。酒壺に蓋栓を施した形を酓といふ。飲の初形は酓に從ひ㱃につくり、飲酒をいふ。

説文解字に會意字とするが、字は蓋栓の形に過ぎず、酓、㱃によつて字の初義を考へることができる。今聲の字に、上より蓋して閉塞する意を持つものが多い。

時の今昔の意に用ゐるのは假借の用法。

藤堂

印(蓋で圍んで押さへたことを示す)と印(取り押さへたものを示す)の會意。圍み閉ぢて押さへるの意味を表す。逃さずに捕らへ押さへてゐる時間、目前に取り押さへた事態などの意を含む。

落合

と同じく建築物の屋根、あるいは器物の蓋の象形。但し、入、今は上古から字音が大きく異なつてをり、別源語と推定される。

甲骨文はの形、あるいは覆ふものを橫劃で表した形があり、現用の字形は後者を承ける。

甲骨文では假借して、いま、現在を表す。時制を表す者を附して今者とも言ふ。また、時間を表す字を附した今日、今夕、今旬、今春、今秋、今歳などの語もある。《合集補編》1864庚申卜㱿貞、今者、王德土方、受有祐。十二月。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、(倒口)とに從ひ、吟の初文。本義に二説あり、一説には口を閉ぢて言はざることを表すといひ、一説には呻吟を表すといふ。

甲骨文は亼と一より成り、あるいは一を省いて亼にのみ從ふ。形を釋するに、意見が分かれる。一説には亼は逆さにしたであり(參・林義光、關子尹、等)、一は舌の省文と見ることができ、今は口を下に向けて下を伸ばすさまを象る、といふ。甲骨文の飲、や命、令などの構形はこの説の側證である。また、亼と一に從ふ今は、吟の初文で、頭を下げて呻吟、苦吟するの意。このほか、徐中舒は今を木鐸の象形とし、亼は鈴體を、一は木舌を象るとする。徐は商周時代、木鐸を以て號を發し令を施し、今は發令してすぐの時刻のことで、即刻、現在の意を派生する。上記二説は亼、今の構形についてまるで違ふ解釋をしてゐる。このうち、我々は具體的な事象を表す飲、食や抽象的な命、令などの字のいづれについても合理的な解釋をしてゐる前説を認める。後説は抽象的な今字を解釋することしかできない。

今は呻吟あるいは吟詠の吟字の原字で、抽象的な意味の今は假借の結果である。

裘錫圭は古文字の今は曰の倒寫であるとする。裘の説は亼を倒口と解くことを暗示してゐるが、今を口を閉ぢて言はざるさまを象り、吟の初文、但し噤に當たり、口を閉ぢて聲を出さないことを表す、とする。『史記・淮陰侯列傳』雖有舜、禹之智、吟而不言、不如瘖聾之指麾也。同樣の用法は、『呂氏春秋』、『說苑』、『黃帝內經素問』などに見える。

今字を假借して時制の意の今に用ゐる用法は甚だ早くから出現し、甲骨文中の今は已に今日を表す。《合集》20912今夕其雨

金文での用義は次のとほり。

屬性

U+4ECA
JIS: 1-26-3
當用漢字・常用漢字

関聯字

今聲の字