耳 - 漢字私註

説文解字

耳

主聽也。象形。凡耳之屬皆从耳。而止切。

十二耳部

説文解字注

耳

主聽者也。者字今補。凡語云「而已」者、急言之曰「耳」。在古音一部。凡云「如此」者、急言之曰爾。在古音十五部。如『世說〔任誕〕』云「聊復爾耳」、謂且如此而已、是也。二字音義、絶不容相混。而唐人至今譌亂至不可言。於古經傳亦任意塡寫、致多難讀。卽如『論語』一經、言「云爾」者、謂「如此」也。言「謹爾」、「率爾」、「鏗爾」者、爾猶然也。言「無隱乎爾」、「一日長乎爾」、爾猶也。言「汝得人焉爾乎」、言得人於此否也。『公羊傳』『〔禮記〕三年問』焉爾、皆訓「於此」也。全經惟有「前言戲之耳」、乃「而已」之訓。今俗刻作「汝得人焉耳乎」、乃極爲可笑。曹操曰「俗語云生女耳。耳是不足之詞。」此古說之存者也。音轉讀爲仍。如耳孫亦曰仍孫、是也。

象形。而止切。一部。

凡耳之屬皆从耳。

康煕字典

部・劃數
部首

『唐韻』而止切『集韻』『韻會』『正韻』忍止切、𠀤音洱。『說文』主聽也。『易・說卦』坎爲耳。『管子・水地篇』腎發爲耳。『淮南子・精神訓』肝主耳。『白虎通』耳者、腎之𠋫也。

又俗以塗巷語爲信曰耳食。『史記・六國表』此與以耳食何異。《註》耳食、不能知味也。

又凡物象耳形者、皆曰耳。『史記・封禪書』有雉登鼎耳。『後漢・五行志』延熹中、京都幘顏短耳長。

又『韻會』助語辭。『論語』女得人焉耳乎。『禮・祭統』夫銘者、壹稱而上下皆得焉耳矣。

又『正韻』語決辭。『史記・高祖紀』與父老約法三章耳。

又『詩・魯頌』六轡耳耳。《傳》耳耳然至盛也。『朱註』耳耳、柔從也。

又爵名。『左傳・昭七年』燕人歸燕姬、賂以瑤罋玉櫝斝耳。《註》斝耳、玉爵。《疏》斝、爵名、以玉爲之、旁有耳、若今之杯、故名耳。

又姓。『正字通』明洪煕中有耳元明。

又人名。老子名李耳。

又地名。『前漢・武帝紀』罷儋耳眞番郡。《註》師古曰、儋耳、本南越地、眞番、本朝鮮地、皆武帝所置也。『後漢・明帝紀』西南哀牢、儋耳、僬僥諸種、前後貢獻。《註》楊浮異物志曰、儋耳、南方夷、生則鏤其頰皮、連耳匡分爲數枝、狀如雞腸、纍纍下垂至肩。

又山名。『書・禹貢』熊耳外方桐柏。《疏》熊耳山、在弘農盧氏縣東、伊水所出。『荆州記』順陽益陽二縣、東北有熊耳山、東西各一峯、如熊耳狀、因以爲名。『齊語』踰大行與辟耳之谿。《註》辟耳、山名。『史記・封禪書』束馬懸車、上𤰞耳之山。《註》𤰞耳、山名在河南太陽。

又草名。『詩・周南』采采卷耳。《傳》卷耳、苓耳也。廣雅云、枲耳也。《疏》生子如婦人耳中璫、或謂之耳璫、幽州人謂之爵耳。『博雅』𠭿耳、馬莧也。

又獸名。『博雅』李耳、虎也。又綠耳、周穆王駿馬名、俗作騄駬。魏時西𤰞獻千里馬、色白、兩耳黃、名黃耳。『山海經』丹熏之山、有獸焉、其狀如鼠、而兔首麋身、其音如獋犬、以其尾飛、名曰耳鼠《註》卽鼯鼠、飛生鳥也。『崔豹・古今注』狗、一名黃耳。

又蟲名。『爾雅・釋蟲』螾𧊔入耳。《疏》今蚰蜒、喜入耳者。『揚子・方言』蚰𧎘、自關而東謂之螾𧎘、或謂之入耳。

又曾孫之孫曰耳孫。『前漢・惠帝紀』內外公孫耳孫。《註》應劭曰、耳孫者、玄孫之孫也。去曾高遠、但耳聞之。

又『集韻』『韻會』𠀤如蒸切、音仍。『前漢・惠帝紀』耳孫。《註》晉灼曰、耳孫、玄孫之曾孫也。師古曰、爾雅、仍孫從己而數、是爲八葉。與晉說相同。仍耳聲相近、蓋一號也。又『諸侯王表』玄孫之子耳孫。《註》耳音仍。

又『集韻』仍拯切、仍上聲。關中河東讀耳作此音。

音訓・用義

(1) ジ(漢) ニ(呉) 〈『廣韻・上聲』而止切〉[ěr]{ji5}
(2) ジョウ(漢) 〈『集韻』如蒸切、音仍、平聲蒸韻〉[réng]
(1) みみ。のみ。

耳孫は音(2)に讀む。玄孫の曾孫(仍孫に同じ)とも、玄孫の子(來孫に同じ)ともいふ。

解字

白川

象形。耳の形に象る。

『説文解字』に聽くものをつかさどるものなりといふ。耳と目は神聖に接するのに最も重要なもので、耳目の聰明なのを合はせてといふ。の卜文は耳の下に𡈼(人の挺立する形)をかき、それに祝禱の器であるを加へるととなる。聖とは神の聲を聽き得る人をいふ。聖に呪飾のあるを加へた形が聽。

終助詞に用ゐるのは、而已ジイの音に當てたもので、假借の用法。

藤堂

象形。耳を描いたもの。柔らかいの意を含む。

落合

耳の象形。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. みみ。聽覺器官。《合集》13630貞、疾耳、惟有[𫝀它]。
  2. 地名またはその長。貢納された甲骨の受け取りを擔當する例もある。また殷金文の圖象記號にも見える。
耳鳴
災厄を表す語。今で言ふ「耳鳴り」と同じか。《殷墟花園莊東地甲骨》53癸卜貞、子耳鳴、亡⿱𫝀它。

甲骨文の要素としては、耳を用ゐた行爲のほか、聞くことに關する字に使はれてゐる。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は、耳朶の形に象る。

卜辭での用義は次のとほり。

金文での用義は次のとほり。

耳に從ふ字は多く聽覺に關係する。

先秦典籍では耳を借りて語氣の助詞となし、句末に置き、限止(制限、範圍の規定、約束)、決定、肯定あるいは語句の停頓、結束を表す。『論語・陽貨』偃之言是也、前言戲之耳。

屬性

U+8033
JIS: 1-28-10
當用漢字・常用漢字

関聯字

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