貞 - 漢字私註

説文解字

卜問也。从以爲贄。一曰省聲。京房所說。
卜部

康煕字典

部・劃數
貝部二劃
古文
𠨀

『唐韻』陟盈切『集韻』『韻會』知盈切、𠀤音禎。『說文』卜問也。从卜、貝、以爲贄。《徐曰》『周禮』有大貞禮、謂卜人事也。

又『易・乾卦』元亨利貞。《疏》貞、正也。又『文言』貞者、事之幹也。『書・太甲』一人元良、萬邦以貞。《疏》天子有大善、則天下得其正。

又『書・洪範』曰貞、曰悔。《傳》內卦曰貞、外卦曰悔。

又『禮・檀弓』故謂夫子貞惠文子。《疏》諡法、外內用情曰貞。

又『釋名』貞、定也。精定不動惑也。

又木名。『本草』女貞、木名。蘇頌曰、女貞、負霜蔥翠、故貞女慕其名。一名冬靑。

部・劃數
鼎部二劃

『集韻』、古作鼑。註詳部首。

又『正字通』籀文字。

部・劃數
卜部十劃

『集韻』古作𠨀。註詳貝部二畫。

異體字

簡体字。

音訓・用義

テイ(漢) チャウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・清・貞』陟盈切〉
とふ。ただしい。

女貞とは鼠黐ねずみもちあるいは唐鼠黐(いづれも木犀科水蠟樹いぼたのき屬)のこと。一方、冬青は黐の木科黐の木屬の各種を指す。

解字

鼑はに從ひ聲。貞はその省略形。

白川

正字はにつくり、の會意。鼎によつて卜問することをいふ。恐らく本邦の盟神探湯のやうな方法か、或は鼎中の犧牲の樣子によつて卜したものであらう。

左傳・哀十七年衛侯貞卜、『國語・吳語請貞于陽卜、また『周禮・春官・大卜』凡國大貞の《鄭司農注》に貞は問ふなりと見え、卜問の訓は知られてゐた。

卜辭には「甲子、卜して𬆩(卜人の名)貞ふ」といふ定式がある。卜問によつて神意にかなふことが知られ、それより貞正の意となる。

字はまたにつくる。

藤堂

と音符の形聲。もと鼎の形を描いた象形字で、ではない。のち、卜(うらなふ)を加へた。

卜辭では(テイ・チャウ)に當てた。

落合

甲骨文はの省略形。專ら假借して卜占内容を提示する動詞として用ゐられる。(補註: 「とふ」と訓ず。)

異體字には鼎の形をそのまま使ふものや、意符としての異體(反卜)を加へた形聲字もある。後代には形聲字の形を承け、卜と鼎の略體ので貞の形となつた。

漢字多功能字庫

貞字はを假借して表し、後に卜兆を象るを意符に加へ、貞卜の貞を專門に表す。

外國の學者に、卜辭の貞字は、説文解字の言ふところの卜問ではなく、校驗、校證、試驗の意とする者がゐる。

早期甲骨文では、鼎と貞の音が十分近いので、鼎字を借りて貞字となす。後に鼎の上に卜を加へ、卜占を表す。また鼎の形を簡化するとの形に近くなるので、後世段々と變形して卜と貝に從ふ貞字となつた。

金文では貞字で鼎を表すことがあり、食器を指す。簡單に言ふと、甲骨文の貞、鼎(つまり鼎につくる貞字)は多く貞卜を表し、金文の貞は多く食器の鼎を表す。また金文では貞字を人名に用ゐる。

貞、鼎、鼒は形が近く(字形が)譌りやすい。

屬性

U+8C9E
JIS: 1-36-71
當用漢字・常用漢字
U+9F11
JIS X 0212: 77-8
𠨀
U+20A00

関聯字

貞聲の字