説文解字私註 巳部

巳部

説文解字
巳也。四月、陽气巳出、陰气巳藏、萬物見、成文章、故巳爲蛇、象形。凡巳之屬皆从巳。
康煕字典
己部(零劃)
『唐韻』詳里切『集韻』『韻會』象齒切『正韻』詳子切、𠀤音似。『說文』已也。四月陽氣已出、隂氣已藏、萬物皆成文章、故巳爲蛇、象形。『史記・律書』巳者、言陽氣之已盡也。『前漢・律歷志』振美於辰、已盛於巳。『釋名』已也、如出有所爲、畢已復還而入也。『玉篇』嗣也、起也。『爾雅・釋天』太歲在巳曰大荒落。
『韻會』上巳、節名。『韓詩章句』鄭國之俗、三月上巳、之溱洧兩水之上、執蘭招魂續魄、祓除不祥。『宋書・禮志』自魏以後、但用三日、不以巳也。
『韻補』古巳午之巳、亦讀如已矣之已。『增韻』陽氣生于子、終于巳。巳者、終巳也、象陽氣旣極回復之形、故又爲終巳字。今俗以有鉤挑者爲終已字、無鉤挑者爲辰巳字、是蓋未知其義也。
解字(白川)
蛇の象。金文では後の巳、の字に用ゐられてゐる。恐らく聲義の通ずる字であつたと推測。
解字(藤堂)
胎兒の象。包の中と同じ。
解字(漢字多功能字庫)
一説に胎兒の形、一説に蛇蟲の形。
甲骨文、金文では、の省體、用ゐて祀となす。工吳王劍工(攻)吳王乍(作)元巳(祀)用。祀の用ゐる外、金文での用法は五つある。一つ目に、十二支に用ゐる。二つ目に、終止を表し、典籍ではにつくる。三つ目に、句首の嘆詞に用ゐる。盂鼎巳、女(汝)妹辰又(有)大服。『尚書・大誥』巳、予惟小子。孔安國傳巳、發端嘆辭也。四つ目に、句末の語辭に用ゐ、典籍では已につくる。吳王光鑑往巳(已)弔(叔)姬、虔敬乃后。五つ目に、巳巳は喜び樂しむさまを表し、典籍では怡怡につくる。『論語・子路』朋友切切偲偲、兄弟怡怡。馬融注怡怡、和順之貌。
人名用漢字

十二支の六番目。甲骨文では、巳ではなくを十二支の六番目に用ゐた。

説文解字
用也。从反。賈侍中說、巳、意巳實也。象形。
康煕字典
人部三劃
《古文》㠯
『韻會』『正韻』𠀤養里切、怡上聲。爲也。『論語』視其所以。
因也。『詩・邶風』何其久也、必有以也。『左傳・昭十三年』我之不共、魯故之以。〔註〕以魯故也。『列子・周穆王篇』宋人執而問其以。
用也。『論語』不使大臣怨乎不以。又『左傳・僖二十六年』凡師能左右之曰以。『易・師卦』能以衆正。又『詩・周頌』侯彊侯以。〔註〕彊民有餘力來助者、以閒民轉移執事者。
。『孟子』無以、則王乎。
古以聲相通。『禮・燕禮』君曰、以我安。〔註〕猶與也。『魏書・李順傳』此年行師、當克以不。『韓愈・剝啄行』凡今之人、急名以官。〔註〕韓文與多作以。
『集韻』與同。『易・明夷』箕子以之。鄭氏、荀氏皆作似。
もちゐる。もつて。おもふ。ひきゐる。ゆゑ。
解字(白川)
㠯はすきの象形字、耜の初文。後に以、、厶に分かれた。
解字(藤堂)
㠯は曲がつた棒(耜や梃子に用ゐる)を描いた象形字。耜の原字。
以は、または人と、㠯の會意、㠯は亦た音符。手で道具を用ゐて仕事をする意を含む。〜を、〜で、〜で以て、などの意を示す前置詞となつた。
解字(落合)
以の甲骨文は人が物を攜へた形を象る。
㠯はその略體。甲骨文では耜を含め具體的なものを指して使はれてをらず、抽象的な物體表現である。
耜字の旁の㠯は單なる聲符であらう。
解字(漢字多功能字庫)
以の甲骨文は、人と㠯に從ひ、手に物を攜へた人の形を象り、初義は持ち攜へること、提げること。人を省くこともあり、手に提げた物の形の㠯に簡化する。金文では㠯を多用する。牧簋では㠯の旁に人を增やし、甲骨文を承け、楷書の以の字形の根據となつてゐる。
甲骨文では率ゐることを表す。《合集》10王往以眾黍于囧。は商王が群衆を率ゐて往くことを記してゐる。また送ることを表す。《合集》14454追弗其以牛。
當用漢字・常用漢字

補遺

説文解字
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康煕字典
己部(零劃)
『廣韻』羊己切『集韻』『韻會』『正韻』養里切、𠀤音以。『玉篇』止也、畢也、訖也。『廣韻』成也。『集韻』卒事之辭。『易・損卦』已事遄往。
『玉篇』退也。『廣韻』去也、棄也。『書・堯典』試可乃已。『論語』三已之。
太也。『廣韻』已、甚也。『孟子』仲尼不爲已甚者。〔註〕不欲爲已甚、太過也。
『廣韻』過事語辭。『史記・灌夫傳』已然諾。〔註〕索隱曰:謂已許諾、必使副其前言也。
『類篇』語已也。『增韻』語終辭。『前漢・梅福傳』亦無及已。
踰時曰已而。『史記・高帝紀』已而有娠。
通。『荀子・非相篇』人之所以爲人者、何已也。曰、以其有辨也。『前漢・張良傳』殷事以畢。
『廣韻』『集韻』𠀤羊吏切、音異。義同。
やむ。やめる。をはる。すでに。はなはだ。
解字(白川)
から分かれた字。
已はすき(耜)の形。耜、私はその本音(シ)に從ふ。また、俟の聲がある。
本義には耜を用ゐ、他の訓は全て假借。
解字(藤堂)
から分かれた字。已字のやめるの意は、(とまる)、俟(とまつて待つ)に當てた用法。
解字(漢字多功能字庫)
から分かれた字。後に已を借りて虛詞となし、終止、完了を表し、更には肯定、感歎などの意を表す。
人名用漢字