説文解字私註 片部

片部

説文解字
判木也。从半木。凡片之屬皆从片。
康煕字典
部首
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤匹見切、偏去聲。『說文』判木也。从半木。『廣韻』析木也。『玉篇』半也、判也、開坼也。『論語』片言可以折獄者、其由也與。《註》孔曰:片、猶偏也。聽獄必須兩辭、以定是非。偏信一言以折獄者、惟子路可。『朱註』片言、半言也。
『增韻』瓣也。
茶亦以片計。『白居易詩』綠芽十片火前春。『蘇軾詩』建茶三十片。
『集韻』『類篇』𠀤普半切、音泮。『集韻』本作。『莊子・則陽篇』雌雄片合。詳牉字註。
きれ。かけ。ひら。かた。
解字(白川)
城壁などを築くときの、版築に用ゐる當て木の形を象る。片を兩邊に立て、中に土を盛り、これを搗き堅めて土壁とする。その方法を版築といふ。片の旁出するものは當て木として立てるためのもので、これを平面に置けば牀となる。
片方の意味よりして、ものの一偏をいひ、僅少、一部分の意となる。
解字(藤堂)
の逆の形ともいひ、木字を半分に切つたその右側の部分であるともいふ。いづれにせよ木の切れ端を描いたもの。薄く平らな切れ端のこと。
當用漢字・常用漢字

説文解字
判也。从聲。 段注は片也。とする。
康煕字典
片部四劃
『廣韻』布綰切『集韻』『韻會』『正韻』補綰切、𠀤音瓪。『說文』判也。从片反聲。
『詩・大雅』縮版以載。『爾雅・釋器』大版謂之業。《註》築牆版也。『管子・宙合篇』修業不息版。『史記・趙世家』城不浸者三版。《註》何休云、八尺曰版。
『周禮・天官・小宰』八成、三曰聽閭里以版圖。《註》版、戸籍也。布綰反。又『宮伯』掌王宮之士庶子凡在版者。《註》版、名籍也、以版爲之。今時鄕戸籍謂戸版。『管子・版法解』版法者、法天地之位。象四時之行、以治天下。
『周禮・秋官・職金』旅於上帝、則共其金版。饗諸侯亦如之。《註》鉼金謂之版。『韻會』通作
『史記・太史公自序』金匱玉版。
『爾雅・釋訓』版版、僻也。《疏》大雅、上帝版版。傳云、版版、反也。
蟲名。『爾雅・釋蟲』傅負版。《註》未詳。
『後漢・范滂傳』投版棄官而去。《註》版、笏也。
『廣韻』同
『集韻』蒲限切、音阪。籍也。『集韻』或作板。
音反。『左傳・僖三十年』朝濟而夕設版焉。《註》設版築以拒秦。『釋文』音反。
ふだ。いた。
解字(白川)
形聲。聲符はは版築のとき兩側に當てる牆板の形。
説文解字に字は見えず、版がその初文であるとみてよい。説文解字に版は判なりといふのは、兩牆に分かつ意であらう。
のち書版に用ゐ、また板刻に付することを版行、出版といふ。
解字(藤堂)
(木の切れ端)との會意、反は亦た音符。と殆ど同じ。
解字(漢字多功能字庫)
に從ひ聲。本義は建築に供しあるいはその他に使用する木の板。後ににつくる。
、即ち古代の書寫に用ゐる木簡を表す。『管子・宙合』に退身不舍端、修業不息版。とあり、尹知章の注に版、牘也。といふ。
版はまた名冊、戶籍を表す。『周禮・天官・宮伯』(上揭)參照。
版はまた圖籍を表す。『論語・鄉黨』に式負版者。とあり、何晏集解の引く孔安國曰く負版者、持邦國之圖籍者也。と。
版は笏を表す。『後漢書・黨錮傳・范滂』(上揭)參照。
版は書刊を印刷するに於いて圖書の底を指す。唐の馮宿の『禁版印時憲書奏』に準敕禁斷印厤日版。とある。
版はまた職を授けること、任命を指す。『資治通鑒・晉安帝隆安元年』に王恭之討王國寶也、版廞行吳國內史、使起兵於東方。とあり、胡三省が注して以白版授官、非朝命也。といふ。
版は量詞として用ゐ、古代の城墻を計量する度量單位を表す。『韓非子・外儲說左上』に築十版之牆、鑿八尺之牖。とあり、陳奇猷の(韓非子)集解に引く太田方(全斎)曰く十版、高二丈。と。
當用漢字・常用漢字

𤗚

説文解字
判也。从聲。
康煕字典
片部九劃
『廣韻』符逼切『集韻』弼力切、𠀤音愎。『說文』判也。从片畐聲。『集韻』坼也。
『廣韻』𤗚版。出通俗文。
『唐韻』芳逼切『集韻』拍逼切、𠀤音堛。義同。
『集韻』本作。或作

説文解字
書版也。从片聲。 段注は𧷗聲とする。
康煕字典
片部十五劃
『唐韻』『集韻』『韻會』徒谷切『正韻』杜谷切、𠀤音讀。『說文』書版也。『莊子・列禦寇』小夫之知、不離苞苴竿牘。『戰國策』取筆牘受之。《註》牘、書版也。『史記・倉公傳贊』緹縈通尺牘。『前漢・昌邑王傳』持牘趨謁。《註》師古曰、牘、木簡也。
樂器。『周禮・春官・笙師』舂牘應雅、以敎祴樂。《註》牘應雅敎其舂者、謂以築地。《疏》舂牘以竹、大五六寸、長七尺、短者一二尺、其端有兩孔、髤畫、以兩手築地。牘應雅敎其舂者、謂賔醉而出、奏祴夏。以此三器築地、謂之行節。『釋名』舂、撞也。牘、筑也。以舂築地爲節也。
『韻會』毛氏曰、說文从片賣聲。當作賣。从罒非。
簡体字
トク

木簡を言ひ、書冊、書簡のことも言ふ。また、樂器の名。竹で出來てをり、地面をついて音を鳴らす。

説文解字
札也。从枼聲。
康煕字典
片部
テフ
ふだ
解字(白川)
形聲。聲符は枼。枼に喋、蝶の聲がある。枼は木の葉。木の葉のやうにひらひらするものをいふ。説文解字に札なりとあり、竹簡、木簡の類をいふ。
『論衝・量知』に截竹為筒、破以為牒、加筆墨之跡、乃成文字(補註: 引用は中國哲學書電子化計劃から。白川の引用は初句の筒字を簡につくるが、第二句の文意は筒の方が通る。また白川は末句を乃爲文とするが、いづれも可。)とあり、紙が生産される以前は、概ねこの種のものであつた。
書狀、書類の意に用ゐて、牒狀、牒牘といふ。
解字(藤堂)
(薄い木ぎれ)と枼の會意、枼は亦た音符。枼は、薄い木の葉が枝先についたさまを描いた象形字。牒は薄い木の札のこと。
人名用漢字

竹簡、木簡の類、また文書をいふ。

説文解字
牀版也。从聲。讀若邊。
康煕字典
片部九劃
『唐韻』布田切『集韻』𤰞眠切、𠀤讀若邊。牀版也。『揚子・方言』牀上版。或曰牑。
『集韻』蒲眠切、音駢。義同。
『集韻』婢典切、音艑。牀簀。『說文』本從片、扁聲。
『集韻』䁕見切、音麫。本作。屋簀也。

説文解字
穿壁以木爲交窻也。从、戶、。譚長以爲、甫上日也、非戶也。牖、所以見日。 段注は从片。戶甫聲。とする。
康煕字典
片部十一劃
『唐韻』與久切『集韻』『韻會』以九切、𠀤音酉。『說文』穿壁以木爲交䆫也。从片戸甫。譚長以爲甫上日也。非戸也。牖所以見日。『廣韻』向也。『易・坎卦』納約自牖。『詩・召南』宗室牖下。
『詩・大雅』天之牖民。『傳』牖、道也。『疏』牖與誘通故以爲導也。
地名。『史記・陳平世家』陽武戸牖鄕人也。
通。『前漢・景十三王傳』文王拘于牖里。
イウ
まど。みちびく。
解字(白川)
形聲。字は恐らくもとに從ひ、庸聲。漢碑の『婁壽碑』に棬樞甕牗とあり、字を牗につくる。土壁の墉に木枠の窗を設けるもので、庸に從ふ字とすれば、その聲義を解することができる。
解字(藤堂)
(板)と戶との會意。板で小さい戸型の窗をつくり、開いて明かりを取ることを示す。壁を拔いてつくつた小さい明かり取りの窗のこと。

説文解字
築牆短版也。从俞聲。讀若俞。一曰若紐。
康煕字典
片部九劃
『廣韻』持遇切『集韻』厨遇切、𠀤音住。『說文』築牆短版也。『史記・萬石君傳』建爲郞中、令洗沐歸謁親入、子舍竊問侍者、取親中裙厠、牏身自浣滌。《註》徐廣曰、牏、築垣短版。音住、謂厠溷垣牆、隱於其側浣滌也。
『玉篇』之句切『集韻』朱戍切、𠀤音註。又『集韻』『類篇』𠀤俞戍切、音裕。義𠀤同。
『集韻』火透切、音豆。『史記・萬石君傳註』徐廣曰、一讀牏爲竇。竇音豆。言自洗蕩厠竇。厠竇、瀉除穢惡之穴也。呂靜曰、楲窬、褻器也。音威豆。
通作。亦見『史記・萬石君傳註』。
『唐韻』度侯切『集韻』『韻會』『正韻』徒侯切、𠀤音頭。『玉篇』築牆短版。
『集韻』亦與㢏通。『史記・萬石君傳註』蘇林曰、牏、亦作㢏。音投。賈逵解周官云、楲、虎子也。窬、行淸也。孟康曰、厠行淸、窬行中。受糞者也。東南人謂鑿木空中如曹、謂之㢏。又『史記註』晉灼曰、今世謂反閉小袖衫爲侯窬。厠此最厠近身之衣也。『漢書註』師古曰、厠牏者、近身之小衫。若今汗衫也。蘇音晉說是矣。
『廣韻』羊朱切。『集韻』『韻會』容朱切、𠀤讀若俞。『說文』从片、俞聲。『廣韻』亦築垣短版也。
『說文』一曰讀若紐。度候切、義同。
チュ。ユ。
解字(白川)
聲符は俞。俞にチウ、揄の聲があり、牏はその短音。
版築に用ゐる板の小さなもの。それで牆を作る。
解字(藤堂)
と俞(拔き取る)の會意、俞は亦た音符。土が固まると外枠の板を拔き取るので牏といふ。築地の塀を築く短い板のこと。

説文解字注增補

説文解字注
爲爿。讀若牆。 註に唐本有爿部。といふ。
康煕字典
部首
《古文》𤕪
『篇海』疾羊切。見龍龕。義闕。『說文』牀从木爿聲。《註》徐鍇曰、爿則牀之省。象人衺身有所倚著。至於牆𡉟戕狀之屬、𠀤當从牀省聲。李陽冰言木右爲片、左爲爿。『說文』無爿字、故知其妄。『鄭樵・六書略』爿、殳也。亦判木也。音牆。隷作爿。『周伯琦正譌』爿、疾羊切、判木也。从半木。左半爲爿、右半爲片。『正字通』唐本說文有爿部。張參五經文字亦有之。周鄭二家皆以李說爲然。與徐說相反。然鄭謂殳卽爿、誤也。判木之說近是。○按徐鍇素稱博洽。果唐本『說文』有爿部、鍇卽唐宋閒人、不應云無。且『玉篇』亦無爿部、『類篇』爿字偏旁歸幷片部、『篇海』止有牀部、亦俱無爿部。司馬光曰、傳寫之譌、片或作爿。此皆祖述『說文』。若據周鄭二家、而廢徐氏之說、亦未爲當、存以俟考。又『字彙』蒲閑切、音瓣。爿片未知所據、然爿片二字、今俗音有之。
シャウ
解字(白川)
の反文。版築のとき、左右に當てて中の土を衝き固める板。牆壁を築くとき、土を盛り固める當て木。
卜文に疾の字は多く爿に從ひ、牀几の形に用ゐる。
一形にしてその兩義を持つものであらう。
解字(藤堂)
長い板を敷いた寢臺を縱に描いた象形字。牀の原字。細長いことを表すために用ゐられる。
解字(落合)
脚の附いた臺の象形。甲骨文の要素としては、供物を載せる臺や寢臺の意で用ゐられる。原義の臺の意については、後代では意符として木を加へた牀で表されるやうになつた。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文は、寢起きするための牀の形を象り、縱にするのは、筆寫のための便法である。爿は牀の初文で、異體をまた床につくる。本義は牀。甲骨文に左右の區別なく、片につくることもある。後世、爿と片は區別される。爿は後には偏旁にばかり用ゐられるやうになり、木を意符に加へて牀字をつくり、本義に用ゐる。古代の牀は多く木製だつたためである。
甲骨文では牀と釋す。有力な證據として、甲骨文の疒字(疾の初文)がある。疒は、人が爿あるいは片の上に寢そべるさまを象り、病臥し牀にあることを表してゐる。
甲骨文では地名に用ゐる。《合集》36969才(在)爿
方言では多く量詞として田地、商店、工廠、旅舍などに用ゐる。『文明小史・第十回』一路言來語去、不知不覺、已到了昨日所住的那爿小客棧內。

補遺

説文解字
康煕字典
木部四劃
『唐韻』布綰切『集韻』『韻會』補綰切、𠀤同版。『說文』判也。又籍也。『莊子・徐無鬼篇』金板六弢。或作
『玉篇』片木也。『急就篇』木瓦也。『詩・秦風』在其板屋。『正義』西戎之俗、民以板爲屋。
詔板。『後漢・竇武傳』曹節召尚書官屬、使作詔板。
『松窗小牘』鐵券謂之金板。
板官、假板、官品之卑者。『隋書・官志』有板咨議叅軍、板長史等名。『宋書・百官志』除拜、則爲叅軍事。府板、則爲行叅軍。
手板、笏也。『文獻通考』晉宋以來、謂之手板。
『宋國史補』爲尹者、例置板記事。
『詩・小雅・鴻雁篇』毛傳、一丈爲板、五板爲堵。
箕屬也。『管子・弟子職』坐板排之、以葉適巳。
板板、反側也。『詩・大雅』上帝板板。
負板、悲哀貌。『儀禮・喪服・鄭註』孝子前有衰、後負板。《疏》謂負其悲哀於背也。
『集韻』蒲限切、音阪。籍也。
叶𤰞免切、音匾。『韓愈・祭張徹文』乃遷殿中、朱衣象板。惟義之趨、豈利之踐。《自註》踐、上聲讀。
ハン。バン。
解字(白川)
形聲。聲符は。薄く削ぎ取つた木片をいふ。
金文の圖象に、木に手斧の類を加へてゐる形があり、木を剝ぎ取る意を示す。それが板の初文であらうが、のち反聲の字となつたのであらう。
『詩・大雅・板』上帝板板、下民卒癉。とその疾威を形容し、また『詩・秦風・小戎』在其板屋、亂我心曲。と板の意に用ゐる。板屋はおそらく殯屋。死者の屍を置いて、その風化を待つ所である。『詩・小雅・鴻雁』百堵皆作。の毛傳に一丈を板と爲すとあり、版築に用ゐる木をいふ。古く用例の見える字であるが、説文解字に未收。説文解字は恐らくの一體と見てゐるのであらう。『玉篇』に片木なり。版に同じ。と見え、説文解字の舊本を受けるものと思はれる。
板板は『爾雅・釋訓』『廣雅・釋訓』に版版につくり、僻なり。反なり。のやうに乖反の意とする。
解字(藤堂)
木との會意、反は亦た音符。反は布を手で反り返らすこと。板は反り返つて張つた木の板。
解字(漢字多功能字庫)
木に從ひ聲。本義は木板。『墨子・備城門』樓出於堞四尺、廣三尺、廣四尺、板周三面。
また手板(補註: 笏)を表す。古代の官吏が參朝するときに持つ事を記す板。『後漢書・禮儀志中』正德曰、八能士各言事。八能士各書板言事。
また詔書を表す。『後漢書・楊賜傳』宜絕慢傲之戲、念官人之重、割用板之恩、慎魚貫之次。李賢注板、謂詔書也。
また下級官員を指す。『南齊書・豫章文獻王嶷傳』桂陽之役、太祖出頓新亭壘、板嶷為寧朔將軍、領兵衛從。
また廣く文書を指す。南朝梁・劉勰『文心雕龍・檄移』露板以宣眾、不可使義隱。
拍子を打つ樂器たる拍板をまた板と稱す。
また印刷する書畫の印板を表す。宋周煇『清波別志』卷下甫鋟木、亦以有不應言者、旋被旨毀板。
また量詞に用ゐ、書畫印冊などの計數の單位を表す。宋沈括『夢溪筆談・技藝』欲印則以一鐵範置鐵板上、乃密布字印、滿鐵範為一板。
またに同じ。
當用漢字・常用漢字

板板、あるいは版版とは、そむく意、また道を失ひてみだれる意。(KO字源に據る)

康煕字典
金部四劃
『集韻』『韻會』『正韻』𠀤補綰切、音版。鉼金曰鈑。『爾雅・釋器』鉼金謂之鈑。『釋文』鈑、音版。『周禮・秋官・職金』祭五帝供金鈑。『賀知章詩』鈑鏤銀盤薦蛤蜊。
『字彙補』與同。『莊子・徐無鬼』金鈑六弢。
簡体字
ハン
いたがね。ふだ。

康煕字典
片部五劃
『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤普半切、音泮。『玉篇』半也、分也。『楚辭・九章』背膺牉以交痛兮、心鬱結而紆軫。
『儀禮・喪服傳』夫婦牉合也。『集韻』牉合、合其半、以成夫婦也。
『廣韻』亦作。『集韻』或作
ハン
なかば。わかれる。わかつ。