説文解字私註 臣部

臣 牽也。事君也。象屈服之形。凡臣之屬皆从臣。
乖也。从二臣相違。讀若誑。
善也。从臣戕聲。
𡒉 籒文。

臣部 舊版

説文解字
乖也。从二相違。讀若誑。
康煕字典
臣部六劃
『唐韻』居况切『集韻』古况切、𠀤音誑。『說文』乖也。从二臣相違。『集韻』背也。
『集韻』嫗往切、音枉。又求枉切、音俇。義𠀤同。
俱永切、音憬。人名。周有伯臦。通作囧。互見後臩字註。
解字(白川)
説文解字にそむくなりと訓し、キャウの聲で讀む。誑惑の意。

説文解字
善也。从聲。
𡒉 籒文。
康煕字典
臣部八劃
『唐韻』則郞切『集韻』『韻會』『正韻』兹卽切、𠀤音贓。『爾雅・釋詁』臧、善也。『易・師卦』初六、師出以律、否臧凶。『詩・衞風』不忮不求、何用不臧。《傳》臧、善也。
『廣韻』厚也。
『揚子・方言』荆淮海岱雜齊之閒罵奴曰臧、罵婢曰獲。
姓。『姓苑』出東筦魯孝公子臧僖伯之後。
通。吏受賕也。『前漢・尹賞傳』貪污坐臧。
『集韻』昨郞切。與同。『管子・侈靡篇』天子藏珠玉、諸侯藏金石。『前漢・食貨志』輕微易臧。
『韻會』『正韻』𠀤才浪切。與庫藏之藏同。『前漢・食貨志』出御府之臧以贍之。
同。『前漢・王吉傳』吸新吐故、以練五臧。又『藝文志』有客疾五臧狂顚病方。
臧善之臧、亦叶音臟。『詩・小雅』未見君子、憂心柄柄。旣見君子、庶幾有臧。怲音謗。
ザウ
よい
解字(白川)
形聲。聲符は戕。説文解字に善なりとあり、『詩・邶風・雄雉』に何用不臧(何をかざらん)のやうに用ゐる。字の原義は臧獲の臧。もと俘虜をいふ語であらう。は神の徒隸として仕へる臣僕。戕はその臣僕に聖器である戕を加へて祓ふ意で、すでに清められた後に神に捧げられる。故に臧善の義となつたのであらう。
卜文に、臣にを加へる形、また金文、古陶文に、戕と祝告の器であるを加へた形の字がある。
解字(藤堂)
(奴隸)と戕の會意、戕は亦た音符。戕はすらりと長い槍。臧は背の高い奴隸。また、すらりとしたの意から、裝(恰好が良い)の意にも用ゐ、よいの意となる。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文はに從ふ。臣は縱の目。戈で目を刺傷することを表す。古代、戰爭中に捕らへた俘虜は往々にして戈で刺して盲目とし、奴隸とした。古書は戰爭で捕らへた俘虜を臧獲と稱し、後には廣く奴僕を指し、僕人の賤稱となる。『方言』臧、奴婢賤稱也。荊、淮、海、岱、雜齊之間、罵奴曰臧。
一説に、戰に破れた者が捕らへられて奴隸となり、好き勝手しようとしない、故に轉じて善、好の義となる。段注に凡物善者必隱於内也。と註す。古くは臧をまた收藏を表すのに用ゐるが、美善の才德は必ず内に藏するものであるといふ。一説に戰爭で得られる財寶は必ず「善く隱す」ものであり、故に臧は藏の本字であるといふ。このことは、『管子』、『漢書』、『呂氏春秋』、近世出土した文獻(雲夢睡虎地秦簡や馬王堆帛書など)で出て來る臧字の用法もみな藏と解けることからも證が得られる。《睡虎地秦簡・日書甲種》簡72背臧(藏)於草中
のち、主に「藏匿」の意により展開した。もし艸を以て轉注すると收藏の藏(草の下に埋める)となり、もし貝を以て注すると賊贓の贓(匿藏される不法財貨)となり、もし藏に從ひ更に肉を增やすと臟腑の臟(體内に藏する)となるなど、次第に殖えて、彼方まで擴がつてゐる。
金文は臣に從ひ聲に改まり、戰國文字はあるいはこの形を承ける。
甲骨文では善、好を表す。《合集》3963其隹(唯)甲、余臧。は、ただ甲の日に我(商王)は好くなる、の意。
金文では成功を表すと疑はれる。小盂鼎卜、有臧は、占卜し、功のある結果を得る、の意。
戰國文字は戕聲とあるいはに從ふ字で臧を表す。《上博竹書三・周易》簡7初六、帀(師)出以聿(律)、不(否)[爿言](臧)、凶。「否」は困厄(困窮、困苦)を表し、臧は功の有ることを表す。全句で、初六爻は出師が嚴しく明らかな紀律を要すことを象り、もし紀律が不明であれば、たとへ出師が破れようとも功有らうとも、すべて凶である、の意。(補註: 『易・師』に初六、師出以律、否臧凶。とあり、その象傳に師出以律、失律凶也。とある。)