説文解字私註 爨部

爨部

説文解字
齊謂之炊爨。𦥑象持甑、爲竈口、内火。凡爨之屬皆从爨。 段注は[𠀉冂丁彐]象持甑。冖爲竈口。𠬞推林內火。とする。
𤏷 籒文爨省。
康煕字典
火部二十五劃
《古文》𤑖
『廣韻』七亂切『集韻』『韻會』『正韻』取亂切、𠀤音𥨥。『說文』齊謂之炊爨。𦥑象持甑、冂爲竈口、廾推林內火。『玉篇』竈也。『詩・小雅』執爨踖踖。《傳》爨、饔爨、稟爨也。《疏》饔爨以煑肉、廩爨以炊米。『周禮・天官・亨人』職外內饔之爨亨煑。《註》爨、今之竈。主於其竈煑物。『儀禮・士昏禮』大羹湆在爨。《註》爨、火上。
姓。『華陽國志』昌寧大姓有爨習。『蜀志』建寧大姓。蜀錄有交州刺史爨深。
『集韻』或作。詳熶字註。
取絹切、音縓。炊也。
七丸切、音攛。義同。『周禮・夏官・挈壷氏』及冬、則以火爨鼎水、而沸之而沃之。《註》以火炊水。
○按周禮、詩傳、釋文、爨俱音七絃切、釋經傳爨字之義、大約動音爲平聲、靜音爲去聲。然左傳宣十五年傳、析骸以爨。註、爨、炊也。及孟子、以𨥏甑爨。似皆宜讀平聲。乃孟子無釋文。左傳、釋文、亦音七亂反。則平去又未嘗拘也。
サン
かしぐ。たく。かまど。
解字(白川)
會意。上部は炊爨に用ゐる器に兩手を掛ける形。冖は竈口。下部は木をくべ、前を開いて火を加へる形。
解字(藤堂)
[冂一コ](竈)と𦥑(兩手)と(兩手)とと火の會意。兩手で以て木を竈の下に入れて火を燃やすさまを示す。
解字(漢字多功能字庫)
字は多く簡帛に見える。竈を設けて食を煮るの意、後に食を煮る竈を指す。
甲骨文や金文に未だ見えず、秦漢の簡帛に多く見える。現在用ゐられることは稀だが、香港の粵方言になほ「開火爨」の語があり、竈を置いて食を煮ることを指す。
また古く星名に用ゐ、今の水星を指す。『廣雅・釋天』辰星謂之爨星。
また姓氏や地名に用ゐる。北京市の西郊に「爨底下村」がある。

𦦧

説文解字
所以枝鬲者。从省、鬲省。
康煕字典
臼部十二劃
『集韻』古勇切、音拱。所以技鬲者。一曰舂器。亦姓。
渠容切、音蛩。又苟許切、音舉。又方勇切、音覂。義𠀤同。

説文解字
血祭也。象祭竈也。从省、从酉。酉、所以祭也。从、分亦聲。
康煕字典
酉部十八劃
『唐韻』虛振切『集韻』許愼切『韻會』許刃切、𠀤興去聲。『說文』血祭也。象祭竈也。『廣韻』牲血塗器祭也。『禮・月令』孟冬之月、命大史釁龜筴。《疏》謂殺牲以血塗釁其龜及筴。又『雜記』成廟則釁之。《疏》謂宗廟初成、則殺牲取血以釁之、尊而神之也。『史記・高祖紀』祭蚩尤於沛庭而釁鼓。《註》釁、祭也。殺牲以血塗鼓曰釁。
罪也。『左傳・宣十二年』觀釁而動。《註》釁、罪也。
瑕也。『左傳・桓八年』讐有釁、不可失也。《註》釁、瑕隙也。『史記・李斯傳』成大功者、在因瑕釁而遂忍之。《註》索隱曰、言因諸侯有瑕釁、則忍心而剪除也。
兆也。『魯語』若鮑氏有釁、吾不圖矣。《註》釁、兆也。『陸機・答賈長淵詩』天厭霸德、黃祚告釁。
塗也。一曰熏也。『齊語』比至、三釁三浴之。《註》以香塗身曰釁。『周禮・春官・肆師』共其釁鬯。《註》以鬯塗尸、使之香美也。『周禮・春官』女巫掌歲時祓除釁浴。《註》釁浴、謂以香薰草藥沐浴。『前漢・賈誼傳』釁面吞炭。《註》漆面以易貌。一曰熏也、以毒熏入之。
動也。『左傳・襄二十六年』夫小人之性釁於勇。《註》釁、動也。
『爾雅・釋獸』獸曰釁。《疏》獸之自奮迅動作名釁。
姓。『正字通』周有釁夏。
『正字通』通作。『韓非子』旣蓄王資而承敵國之舋。『前漢・高帝紀』乗舋而運。
或作。『禮・樂記』車甲衅而藏之府庫。《註》衅、釁字也。包干戈以虎皮、明能以武服兵也。
或作。『禮・禮器』旣興器用幣。《註》興、當爲釁字之誤。
キン
ちまつり。ちぬる。ぬる。ふすべる。きず。すき。きざし。つみ。あやまち。うごく。
解字(白川)
の倒形と𦥑と酉と人の會意。上部は卣(秬鬯などを入れる酒器)を兩手で持ち、さかさにして注ぐ形。下部は人の上にその酒(酉)を灌ぐ形。即ち鬯酒を人に灌いで清め祓ふことで、釁禮をいふ。また釁沐、釁浴といふ。齊の管仲が虜囚を解かれるとき「三釁三沐」が行はれたのは、この禮である。また、禮器や兵器を制作したときに、牲血を以て釁塗する禮があり、同じく釁といふ。禮器を彝器といふのは、鷄血を以て釁塗の禮を行ふからで、彝は鷄を羽交ひ締めにして血を吐かせる形である。これは修祓のためのみならず、鑄きずを補ふ意味もあつたらしく、それで釁に「すき」「きず」「あやまち」の意があり、過釁、釁咎のやうに用ゐる。説文解字に血祭なりといふのは、この釁塗の禮。
解字(藤堂)
兩手で器を持つ姿と酉(酒壺)と(割れ目)の會意。銅器、酒器の割れ目を表す。