説文解字私註 癶部

癶部

説文解字
癶𣥠 足剌癶也。从𣥂。凡癶之屬皆从癶。讀若撥。
康煕字典
部首
『唐韻』『集韻』𠀤北末切、音鉢。『說文』足刺癶也。『六書本義』兩足張、有所撥除也。『元包經』𥃩北癶癶。傳曰、兩人相背也。《註》北、背也。『又』漸辵之癶。傳曰、足有所行也。《註》辵、足也。癶、行也。
『字彙』从二止相背。有分癶之象。別作撥蹳、非。
ハツ
そむく。ひらく。ゆく。
解字(白川)
止𣥂の會意。兩足の竝ぶ形。兩足を揃へて出發しようとする意、發進の意。
解字(藤堂)
兩足を左右に開いたさまを象る。發、撥の原字。

説文解字
上車也。从。象登車形。
𤼷𤼼𧰍 籒文登从𠬞。
康煕字典
癶部七劃
《古文》𤼪𤼷
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤都騰切、等平聲。『爾雅・釋詁』陞也。『玉篇』上也。進也。『易・明夷』初登于天。『書・堯典』疇咨若時登庸。『左傳・僖九年』王使宰孔賜齊侯胙、下拜登受。『禮・月令』農乃登麥。『周禮・秋官』司民、掌登萬民之數。『前漢・食貨志』進業曰登。《註》進上百工之業也。
『爾雅・釋詁』成也。『增韻』熟也。『書・泰誓』以登乃辟。『詩・大雅』誕先登于岸。『周禮・地官・小司徒』頒比法于六鄉之大夫、使各登其鄉之眾寡六畜車輦。《註》登、成也。成猶定也。『孟子』五穀不登。《註》登、成熟也。
尊之曰登。『禮・月令』登龜。《註》龜言登者、尊之也。
『博雅』登登、眾也。又築牆用力相應聲。『詩・大雅』築之登登。
登聞鼓院。『宋史・職官志』隷司諫正言、掌受文武官及士民章奏表疏。
榻登。『釋名』施于大牀之前、小榻之上、所以登牀也。『說文』作毾㲪。
星名。『晉書・天文志』歲星之精流、爲及登。
鳳皇朝鳴曰登晨。見『軒轅黃帝記』。
州名。古萊子國、隋牟州、唐改登州、取文登山而名。
姓。出南陽、蜀有關中流人、始平登定。
『集韻』丁鄧切、等去聲。履也。或作
『字彙補』東職切、等入聲。『公羊傳・隱五年』公曷爲遠而觀魚、登來之也。《註》登讀言得。齊人名求得爲得來。作登來者、其言大而急、由口授也。
叶都籠切、音東。『前漢・宣元敘傳』元之二王、孫後大宗。昭而不穆、大命更登。
叶都郎切、音當。『易林』南山高岡、回隤難登。道里遼遠、行者無糧。
『說文』上車也。从癶豆、象登車形。『集韻』或作。『字彙』登與豆豋之豋、从月从又者別。
のぼる。のぼせる。すすめる。みのる。
解字(白川)
癶と豆の會意。癶は足を揃へる形で、出發のときの姿勢。豆は豆形の器。登るときの臺とみて良く、登は登位、登高、登進の意。別に卜文に豆を捧げる形の字があり、これは登薦の意。その字形の上にまた癶を加へた形のものがあり、𢍪がその字であらう。
解字(藤堂)
會意。もと、癶(上にのぼる兩足)と豆(高坏)と持ち上げる兩手の形の會意。上にのぼる、上にあげるの意を含む。
解字(落合)
甲骨文に二系ある。一つは、癶を意符、豆を聲符とする形聲字。のぼるの意。もう一つは、を𠬞(兩手)で捧げる形で、のぼせるの意で、と釋することもある。楷書の登の字形は前者に據るが、後者の意も承ける。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文は二止(𣥠)と(𠬞)と豆に從ひ、豆は亦た聲符。兩手で食器を捧げ祭臺にのぼり祭品を進め獻ずる形を象り、進めるの義。この種の字形は多く人名に用ゐる。
甲骨文に、二止を省く形がある。この種の字形は本義に用ゐ、禾、米、黍など祭品を進め獻ずることを表す。この種の用法では、意符として米を加へる字形も用ゐられ、米を獻ずる形を象る。
この他、甲骨文に皀と廾に從ふ字があり、この字形は徴と讀めて、徴召を表す。皀につくり登として用ゐる例もある。
金文は𣥠と豆と廾に從ひ、あるいは𣥠に從はない。𣥠に從はず阜に從ふものもあり、上昇の意である。
金文は、上に登ることを表す。この種の用法の登はみな𣥠に從ふ形で寫す。また、昇進、就職を表す。また、國名に用ゐ、文獻では鄧につくる。登(鄧)といふ國は二つあり、一つは楚の近くにあり、曼姓。もう一つは陝西にあり、媿姓。また、祭名に用ゐ、文獻での烝に當たる。
當用漢字・常用漢字

説文解字
以足蹋夷艸。从从殳。『春秋傳』曰、癹夷蘊崇之。
康煕字典
癶部四劃
『唐韻』『集韻』𠀤普活切、音潑。『說文』以足蹋夷艸也。『左傳・隱六年』癹夷蘊崇之。今本作。『韻會』芟、亦作癹。『集韻』或作蹳撥。
『廣韻』『集韻』𠀤蒲撥切、音跋。除艸也。『史記・司馬相如・上林賦』崔錯癹骫。『師古註』崔錯、交雜也。癹骫、蟠戾也。『集韻』或作𦳠
𤼧 癶部四劃
『正字通』俗癹字。
𤼯 癶部七劃
『正字通』癹字之譌。
ハツ
くさかる。のぞく。
解字(白川)
會意。癶は兩足を開いて出發するときの姿勢。殳は芟の省文で、草刈り。癹は恐らく撥の初文。