説文解字私註 哭部

哭 哀聲也。从吅、獄省聲。凡哭之屬皆从哭。
亾也。从哭从亾。會意。亾亦聲。

舊版

説文解字
喪𠸶𠷔也。从从亾。會意。亾亦聲。
康煕字典
口部九劃
《古文》𡂤𡴧𡂧𦦦𡚏
『廣韻』『正韻』蘇浪切『集韻』『韻會』四浪切、𠀤桑去聲。『玉篇』亡也。
『正韻』失位也。『論語』二三子何患於喪乎。《註》喪、失位也。『左傳・昭二十四年』昭公曰、喪人不佞。
『廣韻』息郞切『集韻』『韻會』『正韻』蘇郎切、𠀤音桑。『正韻』持服曰喪。『禮・檀弓』故孔氏之不喪出母、自子思始也。『又』子夏喪其子、而喪其明。『釋文』上喪字平聲、下喪字去聲。
『廣韻』喪、器也、今謂之柩。『禮・曲禮』送喪不踰境。
姓。『廣韻』楚大夫喪左。
『說文』本作𠸶。『廣韻』亦作𠷔。
サウ
も。うしなふ。ほろぼす。
解字(白川)
哭と亡の會意。亡聲ではない。哭は祝禱の器を竝べ、犬牲を加へ、哀哭する意。亡は死者。葬の意に用ゐることがあり、天災にも「奕喪」、「降喪」のやうにいふ。また喪失の意に用ゐる。亡命者を喪人といひ、すべて死喪の禮を以て遇した。
解字(藤堂)
哭と吅と亡の會意。死者を送つて口々に泣くことを示す。ばらばらに離散する意を含み、相と同系。疏はその語尾の縮まつた言葉。
解字(落合)
甲骨文はと數個の口に從ひ、初文は噩の形。口は祭器の形で、祭祀を表す意符。桑は聲符。
西周金文で意符の亡を加へる。〔補註〕康煕字典が古文に擧げる形が其れであらう。
篆文で噩の部分を簡略化して喪につくる。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文は、桑と數個の口に從ひ、桑は聲符。一説に口は桑を採る器で、この字が桑の本字。また一説に數ある口は喧嘩嗷嘈の意。或は、古代の喪器は桑の木で作られ、桑は喪事の象徴、多くの口を從へるのは衆の口の泣き叫ぶ形を象る、といふ。
金文は、桑と亡と數個の口に從ふ。桑が變形したので亡を加へて聲符とし、しかも亡もまた喪失、亡失の意を有するので、喪字の字義が彰かとなつた。或は走を意符に加へた。
金文は、喪失、滅亡を表し、また禍殃を表し、また人名に用ゐる。
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